第二十話 報いを
今回はさらに長いです。
彼が無言で歩を進めていると、最初のT字路まで戻ってきた。
そのままT字路の左側へとまっすぐ歩いて行く。
右手には剣を持ったまま、奥へ奥へと進む。
台所のような場所が見えてきた。見張りの男がいる。
彼は少し屈みこむと、そのまま走り出した。
見張りの男が気づき、何か叫ぼうとしたが、その前に首を切り落とす。
中で料理をしていた女達がそれに気づき、腰を抜かす。
「さわがないで。ぼくはさんぞくじゃない。さんぞくをころしにきた。あとでたすけてあげるから、ここでじっとしていて」
彼の言葉を聞いた女四人はコクコクと頷いて壁際に移動していく。
それを確認し、彼は歩を進める。
そのまま奥へと歩くとざわざわとうるさくなってきた。
彼は自らの体から濃い闇を作り出し、通路を塞いだ。
誰一人逃さない為に。
そのまま広間に歩いて行く。
酒が入り、騒いでいる山賊達は彼にまだ気づいていない。
通路に近いところで騒いでいた3人の山賊の首を次々刎ね飛ばす。
少し離れたところで騒いでいた山賊の目の前に刎ねた首が落ちる。
それを見た山賊の一人が叫ぶ。
その声でざわついていた山賊達は声を潜めて、叫び声の方を見やった。
突然の静寂、その中で首を見て後ずさりながらひぃひぃと漏らす山賊の声だけが響いた。
そして、その近くで剣を持ち、佇む彼に山賊達が気づいた。
山賊の一人が叫ぶ。
「てめぇ!何もんだ!どうやってここへ入った!」
彼はその叫んだ山賊をチラリとみる。
「ふつうにはいってきたよ?おまえたちをころすために」
そして山賊達が一斉に剣を抜く。
酒でふらつきながらも彼を囲うように動いて行く。
彼はそんな山賊の動きは無視して、奥で未だ座り、こちらに目を向けている二人の男のうち、ガタイのいい男ではない、剣の記憶を盗んだ男の方をみてぽつりと呟いた。
「おまえか。ふくとうりょうは。おまえのちしきでおまえをころしてやろう」
彼のそんな呟きが聞こえたのか、聞こえなかったのか、目が合った副頭領と呼ばれる男はうっすらと笑みを浮かべた。
そして、頭領らしきガタイのいい男に何かを囁き、剣を握り立ち上がった。
「お前達じゃ、彼にはかなわないよ。私に任せておきなさい」
そう言ってゆっくりと歩いてくる。
彼はそんな男をじっと見つめていた。
「いい目だ。そういう目をしたやつをたくさん私は屈服させてきた。ああ、君もそうなるのだろう。たまらないね」
彼は黙っている。
男は恍惚とした表情で言葉を紡ぎ続ける。
「ところで君はなぜここへ?大切な家族でも殺されたからかね?そうだとしたら申し訳ないね。一緒に死なせてあげられなくて」
そして彼を囲う山賊達の輪の中に男が入ってきた。
「おりのなかにいたかのじょの、はをぬき、めをえぐったのはおまえだな」
「ああ!彼女か!よく躾けがされていただろう?最初は反抗的だったけど、目を抉ったらとても素直ないい子になったんだよ。彼女は君の恋人かなんかだったのかな?」
「おまえたちは、いかしてにがさない」
「ははは!おもしろい事を言うね!勝てるとでも?私は強いよ?」
男は目を細めて口角を吊り上げた。
「こんな……風にね!!」
そう言うや否や、男が剣を鞘から抜き放ちそのまま彼を切り裂いた。
彼の体は確かに剣で切り裂かれていた。
男がそれを見て、ニヤリと笑う、しかしその次には驚愕の表情になる。
「なっ……!なんだきさま!」
彼は確かに切られた。だけど彼は元々闇だ。
切られた部分は、すぐにくっついて元に戻った。
あえて男の剣を受けた彼は、お返しとばかりに、普通の速度で剣を一閃する。
もし彼が先程までの速度で剣をふるっていれば、男は防御すら間に合わなかっただろう。
男は慌てて、剣で防御しようとし、自分の左側に剣をたてた。
しかし、彼の剣はそんなものでは止まらなかった。
男の剣を切り裂き、そのまま男の首も切り裂く。
カラン、と剣の先が地面に落ちて音をたてる。
そして、それに続くように男の首がズルリと動き、地面に落ちていった。
その表情は恐怖と驚愕に彩られていた。
男が山賊に堕ちてから最初で最後の敗北であった。
それを見ていた周りの山賊が怯え、ざわつく。
それもそうだ、副頭領は自分達よりも強いのだ。
その副頭領がたった一閃で切られて殺されたのだ。
しかも相手は切っても死なないバケモノだ。
「ヒッ」
誰が最初か、声を出した途端、山賊どもは叫び声を上げ、通路へと、外への出口へと走り始めた。
彼はそれをつまらなさそうに見ていた。
どうせ逃げられはしないのだ。
破れかぶれで切りかかってくる山賊を薙ぎ払いながら、彼は逃げ惑い、出口へ殺到している山賊を背後から切り倒していった。
益々パニックを起こす山賊達、中には涙を流し、彼に許しを請う者もいた。
彼はそんな者も関係なく、すべて切り裂いていった。
数分だろうか、数十分だろうか、気づけば動く者はいなくなっていた。
彼が振り返ると、奥にまだ生きてる二人がいた。
そちらへと歩みを進める。
ガタイのいい男が叫んだ。
「待て!待ってくれ!!何が、何が望みだ!金か!女か!どっちも俺は用意してやれる!」
「どっちもいらない。ほしいのはおまえのいのちだ」
「くそっ!くそが!しねやああああ!」
ガタイのいい男が、幅広の剣を振り上げ、彼に切りかかった。
彼はその剣をスルリと避けると、すれ違いざまに相手を切りつけた。
「くそ……が…………」
男はその言葉を最後に倒れる。
そんな男には目もくれず、彼はもう一人に目を向けた。
ガタガタ震えていた女は彼に見られ短く悲鳴をあげた。
「ひっあっあたしは!こいつらに捕まっていたの!たす、助けにきてくれたんでしょ!?」
「おまえが、のぞんでここにいるのはわかってる」
「ちが・・ちがうの!そうするしかなかったの!助けて!」
「おまえが、かのじょをなぐっていたのもしってる。わらいながら、かのじょのかみのけをきっただろう?」
彼の言葉にしおらしい顔をしていた女が豹変する。
「くそが!あの女から聞いたのかよ!あーそうよ!あの女、髪の毛切られて涙浮かべていやがったわ!あまりにもおもしろいからゲラゲラ笑ってやったわよ!」
「だまれ、おまえたちはぜんいん、たましいすらもにがさない」
そしてヒュッと剣を振ると女の首は体から離れ、くるくると空中を舞って地面へと落ちていく。
薄めた闇に捕らえていた魂達に、またひとつ魂が加わった事を見ながら呟いた。
「かんたんに、らくになれるとおもうなよ。おまえたちはずっと、やみのかんごくにとじこめておく。かのじょにしたように。そして、えいえんにぼくのなかでさまよいくるしめ」
僅かに、捕まっている魂達が震えた気がしたが、彼はそれ以上魂を見る事もなく、捕らえられている女達を助けるために動き始めた。
戦闘の描写って苦手です。
お読み頂きありがとうございます。
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