第百九話 使用人達
翌朝、エルに娘達を任せ、アソートと二人で購入した家を見に行く事にした。
ついでにメイドを二名と、執事を一名作るためもある。
購入した家は元々貴族が住んでいた家だが、没落して手放した家だそうだ。
縁起が良くないとかで買い手がつかず、少なくとも30年は放置されていたらしく、補修などしなくていいならと安く買えたのである。
実質土地代と言えなくもない。
もしこの屋敷がまだ新しければ金貨数百枚はくだらないだろうが、さすがに30年も手入れひとつなく放置されていたの家の傷みも激しく、庭は荒れ放題で安かったのだ。
安くと言っても金貨で80枚なので普通は高いと言えるだろうが。
とはいえ、ハンターランクがB以上で、稼いでいるハンターであれば頑張れば買えなくもない、というくらいだ。
ただし屋敷自体は普通なら建て替えかもしくは高額の修繕費用が必要だろう。
たどり着いた屋敷は石の壁に囲まれた屋敷だった。
蔦がはびこり、門扉は蝶番が壊れ傾いているがそこそこ立派な門をくぐるとそれなりに広い庭があった。
手入れをされていないのでかかなり草や蔦が生えており鬱蒼としている。
庭園のようだが、子供達と暮らすならば一部は菜園にしてもいいだろう。
庭の藪を切り払ってようやく屋敷に着いた。
かなり傷んではいるし、外壁が崩れている部分もあるが、土台や柱などの作りはかなりしっかりしているようで、補修をすれば問題なく使えそうだ。
屋敷の扉をこじ開け、中へ入ると大量の埃が舞い上がった。
これはさすがに参ったなと思い、中へ入り屋敷の扉を閉めるとサイリールが闇を屋敷内すべてに充満するほどに広めた。
「じゃあ、闇で埃や汚れを取り除いて、内側や、外から見えない部分の補修もすませてしまうよ」
「うん、分かった。こういう時、闇は便利だよねぇ」
「はは。確かにね」
数分もすると屋敷は見違えるように綺麗になっていた。
手間のかかるガラス窓や屋根に開いた穴などは直してしまったが、外の人目につく部分、例えば門扉などはメイドや執事に任せてしまえばいいだろう。
そうして屋敷内が綺麗になったのでまずはメイドと執事を作る事にした。
相談した結果、メイド二人の見た目は中年にし、執事は初老にする事にした。
しかし、予想以上に屋敷が広いのでもう一人庭の面倒を見れる庭師のような男性も作る事になった。
言葉遣いは使い分けられるように全員に設定する予定だ。
さすがに常にエルのように敬語であると子供達も疲れるだろう。
サイリール以外の家族に対しては軽い感じにする予定だ。
その言葉遣いに関しては教会の孤児院のシスターを真似る感じになる。
サイリールは一応この館の主人となるのでそこは使い分けというやつである。
まぁ、いずれ自分達で言葉遣いも変えていくだろう。
まずは執事を作る事にした。
基本的にこの執事に全てを任せる予定だ。
記憶から執事の情報やまた戦闘もこなせるように仕上げていく。
この街に来るまで、そして来てからもそれなりの人から戦闘の情報や、それ以外の情報もこっそり貰っているのだ。
とはいえ、もっといい戦闘情報があれば追々追加する予定ではある。
そして、執事だけでなく全員にではあるが、あらゆる情報を入れ、臨機応変になんでも出来るようにするつもりだ。
大工仕事でも、庭師でも、料理でも、あらゆる事が全員出来るのだ。
いつ手に入れたのか、暗殺系の情報もあるので屋敷の警護では使えそうなのでそれも入れる。
そうして最初に作られたのが、執事である初老の男性で、60代くらいだろうか。
髪は見事な白髪である。正確には白に近い銀であるが。
この世界では少し珍しい程度の髪色になる。
顔には皺が刻まれているが、理知的な緑色の瞳をしておりかけている黒縁の細い眼鏡がとてもよく似合っている。
身長はサイリールよりは高くなく、170くらいだろうか。
年の割には背筋はピシっとしており、執事服がぴったりだ。
年と言っても実質生まれたのは今なので見た目だけであるが。
「君の名前はセドリック。この屋敷と、他の使用人の管理一切を任せる」
セドリックは、サイリールの言葉に優雅に礼をして了承した。
「委細承知致しました、旦那様」
そうして次にメイドの製作を始めた。
年齢は40代半ば程。少しふくよかな女性と、スラリとした女性。
ふくよかな女性は薄い茶色の垂れ目でふわっとした優しい感じで、淡い栗色の髪をしており、身長は150くらい。
スラリとした女性は茶色で切れ長な目をしており、クールな感じだ。
髪の毛は濃い茶色で身長は少し高く165くらいである。
ふくよかな女性はそのまま、優しそうな母をイメージして作っている。
スラリとした女性はどちらかというと教師をイメージしている。
もちろん知識や性格を植えつける際にはそのイメージに沿って作り上げている。
ただエルと同じで基本的にはベースなのでいずれ彼女達も自分を作り上げるだろう。
ふくよかな女性にハンナ、スラリとした女性にモリーと名づけた。
どちらもそれぞれの挨拶を返してくれた。
「よろしくお願いしますね、旦那様、お坊ちゃま」
ハンナが柔らかく微笑みながら挨拶をする。
「宜しくお願い致します、旦那様、お坊ちゃま」
モリーが薄っすらと口の端を持ち上げる程度の笑みで挨拶をした。
お坊ちゃまと呼ばれたアソートはむずがゆがってさっそく二人にアソートと呼んでくれと懇願していた。
そんな様子をクスリと笑いながら見ていたサイリールは次に庭師となる男性を作る事にした。
庭師と言っても別に執事も出来るのだが、基本は庭の手入れをメインとしてもらう予定だ。
もちろん普段庭にいるようにする為もある。
警備も兼ねているのだ。
作られた男性は身長はサイリールと同じくらいだろうか、180程で、髪の毛は黒いが、光りにすかすと少し赤っぽくも見える。
目の色は濃い茶色で黒くも見える。
年齢は30代半ばという所だろうか。
セドリックとは違いガッシリした体格で筋肉質だ。
とはいえ、見た目の問題だけでどちらもさして能力は変わらない。
ただ、セドリックの方が俊敏ではあるだろうし、彼の方がパワー自体はあるだろう。
彼の名前はフェローとなった。
メインは庭師だが、必要であれば執事も出来る。
だが基本は庭師として警備も兼ねてもらう。
またメイド達が買い物に行く際の護衛や、子供達に危険が及んだ時の戦闘もメインで兼ねてもらう。
「了解致しました、旦那様」
筋肉質で硬そうなのに柔らかい綺麗な礼をしてフェローは了承を伝えた。
基本的に全員が戦闘も出来るのだが、見た目の問題もあるのだ。
メイドである彼女達が大立ち回りをするとやはり目立ってしまう。
また、今回は全員が闇の使い魔を作れるようにしている。
さすがに小鳥は真っ黒だと目立つので色をつけれるように知識も植えてある。
屋敷の警護に小さな虫の使い魔をばらまいたり、子供たちが遊びに出た場合には小鳥などで様子をチェックするなども出来るのだ。
そうして執事達を作り終えたサイリール達は屋敷内に必要な家具などを使用人らに聞きつつ設置する為に移動を開始した。
フェローはさっそくとばかりにサイリールに作ってもらった庭仕事の道具を担いで庭へと向かっていった。
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