第百二話 提案、そしてイーナの内へ
「だからね、サイリール。ひとつ、提案があるんだ」
そう言うとアソートは提案の内容を話し始めた。
まず旅の途中だから一緒には暮らせない、しかし今のままの家であの子達を暮らさせるのは問題である。
だから、まずは家を購入する。
子供達と暮らす為の家なのでそこそこ広くないとダメだろう。
また、制限なく子供を迎える事はないが、いつそういった子供と出会い迎えるかはわからない。
だから、ぴったりの数で暮らせる家ではなく多少の余裕を持った家にしようという事。
さらに、これはサイリールの力が必要になるが、自分達が旅を続けている間、子供達の面倒を見れるメイドと、護衛となる男性を作ってはどうかという話しだった。
雇ってもいいのだが、それだと不安が残る。
どうせ大きな家に住めばどうしても人手は必要になるし、エルのような存在は必要になるであろうという事で、サイリールもそれについては確かに、と思ったので承諾した。
そして肝心の闇の住人である事についてはセイ以外にはしばらく秘密にするという事。
子供というのは時にぽろっと話してしまう事もあるのだ。
いらぬ問題になるよりは黙っている方がいいだろう。
いずれ、あの子達が心身ともに大人になった時に、年をとらない事をきっと不思議がる、その時打ち明けようという話しになった。
また森の家についてはアソートが面白い発見をしたのでその方法を採用する事になった。
家についてはよさそうなのを明日調べに行く事にしたが、それはエルとアソートがするので、サイリールはファニー達とスキンシップをするようにとビシっとアソートに指をさされて言われた。
苦笑しつつもその命令には素直に従う事にした。
そうしてアソートとの会話を終え、意識を元に戻した。
セイはだいぶ落ち着いてきたようで嗚咽は収まってきていた。
しばらくして完全に落ち着いたセイは頬を赤くして恥ずかしげにしていた。
「ご、ごめんにーちゃん……さっきのは、その……わすれてくれ……」
クスリと笑いながらサイリールは返事をした。
「うん、セイが泣いた事は忘れるよ」
「そっそれをいわないでくれよ……おれすげぇはずかしい」
「ははは。でもセイ。君の言葉は忘れないよ」
「えっ……」
「でもまずはイーナだ。イーナを助けないとね」
サイリールに忘れないと言われ動揺していたが、セイは気持ちを切り替えた。
「うん……!おれはイーナをたすけるんだ。だいじなかぞくだから!」
セイの言葉にふわりと微笑む。
「うん、それじゃあセイ――」
そうしてサイリールの言うままにセイはベッドに寄りかかり、イーナの手を握って、静かに目を瞑った。
セイが目を瞑ったのを確認して、サイリールはセイの背後に座りセイの肩に軽く手を置いた。
そうして、セイの頭部へと闇を伸ばし、セイの額からイーナへと繋げる。
「セイ、そのまま、イーナの事だけ考えて」
「うん……」
セイはイーナを助けたいと強く強く思いながらも段々と意識が薄れるのを感じた。
遠くからサイリールの声が聞こえる気がする……。
「……ィ……イ……セイ、大丈夫かい」
その声にセイはハッとした。
真っ暗な中キョロキョロとするとサイリールの姿が目に入った。
「あ。にーちゃん」
少しほっとした。
改めて周りを見たセイは地面も空も真っ暗な事に少し不安を覚える。
説明を聞いてはいたが、地面が見えないというのは不安定で不安になるものであった。
「にーちゃん、ここが……?」
「そう、イーナの心の中。イーナはもう少し奥にいるんだ」
その言葉にセイはゴクリと喉をならす。
「イーナに会ったらまずは普通に会話をして欲しい。そしてさりげなく彼女に触れて。僕はセイと常に繋がってるから、セイがイーナに触れられれば、そのままイーナの封印してる記憶を僕が引き離すから」
「うん……、わかった。がんばってみる……イーナ……」
そうしてイーナのいるであろう場所へ二人は進んで行った。
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