第23話 終幕宣言
春。
桜は咲き乱れ、舞い散る桜の花びらが、この時期気分を新たにする者を迎える季節。
今年は春の嵐、というやつは来なかったので、四月半ばのこの時期でも桜がまだきれいだった。しかしそれ以外があの時と同じ状況なのは、変わらなかった。どっちかというとそっちの方が変わってほしかった。
「お、いるじゃんあじさい。元気してた?」
「何回遅刻すれば気が済むんだよあんたは」
「いやあ、ちょっと宿題忘れてたのを忘れてて。さすがに居残りになっちまいました」
「それ大丈夫なの?」
二年生になって、私は夏穂と違うクラスになった。どうやら夏穂のクラスの担任は宿題を出す出さないということに特に厳しいらしく、ついつい寝落ちしてしまってたびたび宿題をやり忘れる夏穂は見事に目をつけられていた。
「大丈夫じゃないね。よかったね、私がフリーで」
「それはホントに」
私の司長就任後最初の仕事は、副司長と会計の任命だった。副司長は草津さんにやってもらっている。私がどうしても手が離せない用事がある時などに草津さんに任せているのだが、実は私よりうまくやってくれたりして、やっぱり草津さんを部長にした方がよかったんじゃないか、と私は何度か思った。
会計は昔のよしみということで、夏穂に任せた。祭神さん関係の費用の計上は新しい会計の仕事らしく、ユッキー先輩に教えてもらいながらやっていた……のだが。
「ダメだわこれ。私には向いてない」
わずか二ヶ月ほどでリタイアしてしまった。よく考えれば夏穂は昔からお金にルーズだった。ついつい買わなくてもいいものを買ってしまうというのもそうだが、お金の計算がとにかく遅いのだ。そういえば計算は人並みにできるのだが、単位に円がついた途端てんでできなくなるというのを思い出した。会計は司長ほど厳正に決めなければならないものではないらしく、藤坂さんに交代となった。
「今日は夏穂にも手伝ってもらわないと。何せ校舎中の掲示板にこれ、張ってもらうんだし」
私が夏穂に渡したのは自前の広告だった。もちろん新入部員勧誘のためである。私より早くにホームルームが終わって放課後になっていた草津さんと藤坂さんにはすでに渡して、貼って回ってもらうように伝えていた。
「お、今年は活動内容を表に出してくんだ」
「そうそう」
この広告を作る時に、改めて過去のものを並べて比べてみた。すると昔こそ『サイハレ』がどんなところか軽く触れていたが、ある年から全く触れなくなっていた。事情を知っている私たちからすれば活動内容を言わないで何を宣伝するんだと言いたくなるのだが、よくやったものだ。
ちなみに触れなくなったのはちょうど草津さんのお兄さんの代からだった。草津さんに聞いてみると、どうやら当時何度か部員ゼロという年が出ていたらしく、新しい試みとしてどんな活動をしているのか一切言わない、とした結果らしい。
「でもやっぱり、祭神さんに関わる部活だ、ってことを伝えるのは大事だと思うから。祭神さんを知ってる生徒の方が多いっていうし」
「まあ、それは一理ある。もし失敗したら、来年からはやめとけ、って言えばいい話だし」
今日はしんどいし、早く終わらそ、と夏穂が言って、さっさと近くの掲示板を陣取ってしまった。私も慌てて次に近い掲示板を探して、広告を何枚か画鋲で留め始めた。
「あ、あの」
ちょうど硬い板に無理やり画鋲を押し込んで、やっと一枚張り終えたところだった。聞き慣れない、私を呼ぶ声がした。
「はい?」
「それ、……『サイハレ』の広告、ですよね?」
「そう、だけど」
「あの、私。祭神さんを見る側じゃなくて、やる側になれる部活があるって聞いて、ここに入ったんです。それって、『サイハレ』ですよね」
なんだ、知ってる子か。
私は少し嬉しくなると同時に、少しがっかりもした。実は詳しく聞かれた時にちゃんと説明できるよう、こっそり練習していたのだ。どうやら今回その努力は報われなさそうだった。
「うん。そうだね」
「あの! 部活見学って……できますか?」
私は少し嬉しくなって、それが思わず顔に出てしまった。十分すぎるくらいその間が続いて、私はそれからその子に言葉を返した。
「ええ、もちろん!」
長編四作目の今作も、何とか完結を迎えました。
連載開始から二年。およそ一年の更新停止期間を経て、本当に「何とか」……って感じでした。勢いで連載するもんじゃないね、ホントに。
一度はやっておきたかった、「学校の変な部活」がテーマの作品を書くことができました。結局普遍的に見て変だったかどうかは読まれた方の感じ方次第……ということになるでしょうが、とりあえず自分としてはどこか変わってる感じを描けたかなあ、と思っています。
また、いろんな作品を書いていきたいと思っています。また別の作品でお会いできることを願って。
それでは!




