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サイハレ〜祭神高校、その歴史と現実〜  作者: 奈良ひさぎ
第6条:『サイハレ』は毎年八月中旬の祭神巡礼祭が無事に執り行われるよう、その補助を行う。ただし所属員が高校生であることを鑑み、その体力に合わせた補佐の仕方をとるものとする。

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第21話 部活勧誘

「……ほら、私まだ日本に来てそんなに時間が経ってなくて。お父さんが国連職員のドイツ人だから、ずっと外国にいたけど、お母さんは日本人だから日本語はできたの。けれど、日本に来てみたら周りに誰も自分みたいな人がいなくて、しかも男の人ばかりで。高校に入りたての頃も、ずっとひとりぼっちだったの」


 ユッキー先輩の今の振る舞いからは、想像もできなかった。そりゃ帰国子女が日本に来てすぐに馴染んだという話はあまり聞かない気がするけど、それでもなんとかうまくやったものとばかり思っていた。


「ゴールデンウィークが明ける頃には、向こうの友達ともまだ連絡を取ってたし、高校も三年間だけだから、一人でも大丈夫かな、なんて思ってた。でもそんな時に、ひろとが誘ってくれたの」

「え。かっくん先輩じゃないんですか」


 入学の時からずっと一人でいる女の子を誘うなんてことができるのはかっくん先輩の方だ、とばかり私は思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。それどころか、もっと意外なことをユッキー先輩は言った。


「そういうのはひろとの方が得意だよ。みんなの前で演説してみせるとか、部活勧誘をしてみるとか。中学の頃は実際部長をやって、結構な部員を確保できた、とか言ってたし。その話を聞いてたから、私も部長を決める時にひろとがいいんじゃないか、って言ったんだけどね」

「断ったんですね」

「断ったっていうか……実は直前までもめてたんだよね」

「そうなんですか?」


 ひろと先輩からそんな話を聞いたことはなかった。私たちがなかなか部長を決められずにいるのを見て、自分たちと同じだ、と思っていたのだろうか。


「たぶんあのままひろとが何も言わなかったら、ひろとが部長になってたと思う。でも直前になってやっぱ嫌だって言い出して、そしたらかっくんもそんなめんどくさい仕事誰がやるかよ、って言って。いっとき口も利かなくなったこともあって」

「そこまで……」

「結局生徒会の副会長の仕事はこっそりひろとも手伝う、って条件で、かっくんの方が部長になったんだけどね。なんであんなに直前になって嫌って言ったんだろ、ひろと」


「確かに僕の方が部員勧誘が得意な自信はあるし、ユッキーを誘うと面白いことが起きそうだと思ったのも僕だ。けれど、そうやって勧誘した部員と親しく話せるようになるかといえば、また別の話だ。つまり僕は肝心なところで人見知りというわけだ」


 自分のことを話していると気づいたのか、少し離れたところで休憩していたひろと先輩がこちらに来た。


「対して掛はどうだ、あいつは見ず知らずの奴とも数年来の友達のように話してみせるし、とにかく気さくな奴なんだ。何でもすぐにめんどくさがるところが欠点だが。それでも僕は、掛の方が司長に向いていると思った」


 ユッキーを誘ったのは僕だけど、結局最初に仲良くなったのは掛の方だろ、とひろと先輩は付け加えた。ユッキー先輩はうんうん、とうなずいていた。


「まあ僕も、もっと掛を説得できるような言葉が言えればよかったんだけども。結局この一年、あいつが司長をやってくれたおかげで何だかんだうまくいった」

「そうだね。まだもうちょっと、仕事は続くけどね」


「うらー、休憩終わりだー、やるぞー」


 一番やる気のなさそうな声で、かっくん先輩が私たちを促しに来た。ユッキー先輩が満面の笑みで、ひろと先輩も何だかちょっとだけ笑いながら、はーい、と返事をしてかっくん先輩の方へ行った。私たちも、その後をついていった。



 お昼から集合しては交通整理の手伝いや観光客の案内などをする仕事が続いた。お神輿を担ぐ人が交代しながら、着実に目的地の光神宮まで運ばれていく。そこの大きな鳥居を慣れたようにくぐり抜けていくのを見送って、私たちの仕事は終わった。

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