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サイハレ〜祭神高校、その歴史と現実〜  作者: 奈良ひさぎ
第6条:『サイハレ』は毎年八月中旬の祭神巡礼祭が無事に執り行われるよう、その補助を行う。ただし所属員が高校生であることを鑑み、その体力に合わせた補佐の仕方をとるものとする。

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第19話 寝坊部員

 祭神さん初日の、早朝。


「いやー、さすがにこんなに朝早く来たのは初めてかもね」

「確かに」


 私たちはかっくん先輩の事前の指示通り、祭神高校に集まっていた。早朝といっても学校に来るには早いくらいのもので、始発よりは全然遅い。そして私たちと言っているが、余裕の寝坊を決めた夏穂と、肝心のかっくん先輩がいなかった。代わりにひろと先輩が場の指揮をとろうとしていた。


「一回集まってくれ」


 私と草津さんがひろと先輩の方に行くと、別の道からひょこっとユッキー先輩が出てきた。


「どう?」

「ダメだ。箕島さんが来てない。あとは、掛だ」

「えーっ」

「まあ、最悪途中で合流するのでも構わないけども」


 かっくん先輩もたびたび寝坊してしまう癖があるとは聞いていたのだが、まさか当日に本当にやらかすとは。ちなみに夏穂はだいたい予想通りだったのでノーコメント。


「箕島さんは電車の問題もある。この時間だと電車の接続が悪くて、天照で待ちぼうけを食らうこともよくあるらしい」

「逆にかっくんはダメなのね」

「あいつはただの寝坊だ。どう考えても、あいつのミスだ」


 ひろと先輩はそう言い切った。


「どうするの?」

「まあ、先に行っておくのでもいいか。集まってもらったのは、神輿の出発式に出て見送ってほしいってだけだったから。部長がいなくても副部長の僕がいるなら……いや、問題あるな」


 ちょうどそのタイミングでメッセージが届いたらしく、ひろと先輩がスマホをいじり始めた。


「当たりだ。今起きて家を飛び出したところらしい。今から二時間くらいは見込んだ方がいいか」

「……そう言えばかっくん先輩って、どこに住んでるんですか?」

「言ってなかったか。あいつは稗瀬橋の二つ手前から来てる。父川線とは接続自体は悪くないし、電車の本数が特別少ないというわけではないと思うんだが」


 ひろと先輩は父川駅の時刻表らしい紙を見ながらそう言った。稗瀬橋の二つ前と言っても、相当な距離がある。七絵や奈津菜が父川線方面に住んでいるのは知っているのだが、具体的にどんなところなのか知っているわけではない。どれくらいの距離があるのか、という話も当然知らない。


「とりあえず僕らまで遅れるわけにはいかないから、祭神神社に先に行っておこう。箕島さんにも一応、祭神神社に直接来るように伝えてくれ」

「……えっと、たぶんもっと遅くなる気がします。もしかしたらお神輿の出発式が終わっても、まだ来ないかも」

「それは困るな……もしもまだ起きてないなら、すぐに起きて家を出るように伝えてくれ」

「分かりました」


 私はすぐさま夏穂に電話をかけた。どうやらさすがに起きて、ちょうど電車に乗って最寄りの駅を出たところらしかったので、そのことをひろと先輩に伝えてから私たちは神社に向かった。



* * *



 神社に着くと、すでに多くの人が集まっていた。私の勝手なイメージとしては初詣の時といい勝負なんじゃないかというところで、お神輿を囲んでわいわいと騒がしくしている人もいた。

 お神輿の出発式自体は、そこまで特別なものではなかった。お神輿を実際に担ぐ男性たちがこれからの大仕事に向けて気合を入れているということもあるのか、宮司さんや祭神さんの実行委員会の人の話もありきたりなものを少し、という程度だった。私たちは人ごみの中にまぎれて、朝礼台のような場所の方をぼうっと見つめていた。


「では最後に祭神高校『サイハレ』の司長を務めておられます、竜ヶ崎掛さん……に代わりまして、副司長の鯛目陽斗さんに、神輿出発のあいさつを」


 なんか校長先生の話、ってやつとタイプが似ているな、と思いつつ適当に聞き流していた私だが、その声でふと我に返った。私は隣にいたユッキー先輩に尋ねた。


「あれ? あのあいさつは別にかっくん先輩がやらなくてもいいんですか?」

「ダメだよ。さすがにあれは司長……部長がやらないといけない、みたいな暗黙のルールがあるらしいんだけど、今日ばっかりは間に合いそうにないから、仕方なくだって」

「そうなんですね」

「ただ意外と、ひろとの方がああいうの得意だったりするの」

「なんで副部長におさまってるんですか」


 人前で話すのが得意なら、部長になった方がいいんじゃないのか。私はそう思ったが、その考えがどうやら必ずしも正しくないらしいということを、すぐに知ることになった。


「ひろとはね、生徒会が嫌だったの」

「生徒会、ですか?」

「そう。『サイハレ』は昔から祭神さんでも大切な役割を果たしていただけに、部活になってからも権力が大きいの。その昔部活の一つになる時に、交換条件として司長が生徒会の副会長を兼任する……ってことになったんだって」

「……え?」


 今、恐ろしいことを聞いた気がする。


 私がそう思うのをよそに、ひろと先輩はあいさつを終えて、野太い雄叫びとともにお神輿が神社を出ていこうとしていた。

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