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サイハレ〜祭神高校、その歴史と現実〜  作者: 奈良ひさぎ
第6条:『サイハレ』は毎年八月中旬の祭神巡礼祭が無事に執り行われるよう、その補助を行う。ただし所属員が高校生であることを鑑み、その体力に合わせた補佐の仕方をとるものとする。

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第17話 部長会議

「往復で一週間、ですか……」


 私たちが途方に暮れていた点は、ほとんどそこだった。私や夏穂は高校入学を機にこの辺りの地域にやってきたので、そんなことは知る由もなかった。しかし草津さんや藤坂さんも驚いているのを見るに、地元出身でも一般の人はなかなか祭神さんのことを調べようとはしないのかもしれない。


「そうか、一週間もあるんだ……」


 藤坂さんが発した一言が、私の予想を正しいものだと裏付けていた。祭神さんはそれだけ地元の人にとって身近なもので、身近過ぎるあまり真剣に考える機会がない、ということなのだろう。


「交代しながらお神輿を運ぶとは言え、最初から最後まで一週間もかかるとなれば、かなりの大仕事になる。無事に祭神神社まで戻ってこられた後、盛大に宴会をやるのがならわしになってるんだ。しかも、その宴は夜通し続く」


 軽々とかっくん先輩はそのことを言ってのけた。夜通しとか徹夜とか、考えたこともない。気の遠くなるような話、と言っても過言ではなかった。

 しかしすぐに補足するようにして、ひろと先輩が追って口を開いた。


「ただ、『サイハレ』の面々がその宴会に参加する必要はない。そもそもお神輿を担いで巡った男たちをねぎらうための宴会だし、僕たち『サイハレ』の部員はあくまでお祭りを補佐するだけだから。一週間の間、ぴったりお神輿にくっついて回る必要もない。ただ、その宴会の最初に、『サイハレ』執行部の交代式が行われるんだ」

「執行部の交代式……ってことは、出なきゃダメですよね」

「そりゃそうだな。けどせいぜい一時間かそこらで終わる。お神輿のおっさんたちも早く酒を開けたいからな。それでも次の執行部を具体的に誰にするかは、交代式までに決めておかないといけない」


 僕もこの場で決めてくれたらすんなり報告できて、すぐ帰れるから助かる、とひろと先輩は付け加えた。


「結局早く帰りたいのかよ」

「当たり前だ。僕だって連日のテスト勉強で疲れてるし、頭を休ませたい」

「その割には一生懸命パソコンいじってるけどな」

「これは仕事なんだよ。パソコンが壊れたって、ユッキーが言うから」


 ほら、とひろと先輩はパソコンを直している様子を私たちにも見せた。私はパソコンを普通にしか触ったことがないので、ひろと先輩が何をしているのかは分からなかったが、裏返して中を見ていることくらいは理解した。


「あ、今やってくれてるんだ。祭神さんまでにやってくれるくらいでよかったのに」

「そんなに遅いんじゃまずいだろ。うちの部活の会計が一番活躍する時なのに、今すぐ動けなきゃ意味がない」


 ひろと先輩はそう言うと、再び学習机のようにして壁に沿うように置かれたテーブルの方に向き直った。ユッキー先輩もありがとう、と言って、再び部室内をあちこち動き始めた。どうやらテスト期間でしばらく使っていなかったからと、掃除をしているらしい。


「……そんで、部長は決められそう?」


 場の空気をまとめるようにして、かっくん先輩が話を戻した。私は少しその話を頭の中で巡らせた。草津さんと藤坂さんはあらかじめ話を聞いていたのが私だけと分かったのか、お互いの顔を見たり私の表情をうかがったりしていた。夏穂は相変わらず口をもぐもぐさせながら、かっくん先輩とマンガをチラチラ交互に見ていた。


「……それは、今決めなきゃダメですか」

「そう来たか。できれば早く決めてほしいんだけどな」

「それに関しては、僕も同意だ」


 ひろと先輩もこちらを向くことなく、そう答えた。だいたいそんな返事が返ってくることは、私も分かっていた。その上で、そう言ったのだ。


「祭神さんの日って、いつなんですか」

「今年は八月の十六日から、だったかな。けど、」

「けど?」


 少し考える様子を見せてから、かっくん先輩は言葉を続けた。


「今日を逃したら祭神さんの始まる日まで、もうこうやって集まる機会がないんだよな。んでもって新執行部のメンバーを報告してくれるひろとは下宿だから、祭神さんが始まるまでは関東の方にある実家に帰ってる。『サイハレ』の話はスマホでポチポチして連絡できるような話じゃないんだ。一応正式な話だからってことで、面と向かって生徒会の連中とかに言うことになってる。だからどれだけ遅くても、祭神さんの前日には言ってもらわなきゃならない」


 そこまでの猶予があるなら大丈夫。

 私はそう自信を持って、それからかっくん先輩の言葉に答えた。


「分かりました。ありがとうございます」


 その話をそれ以上しても無意味だと思ったのか、かっくん先輩はそれ以上部長決めの話題に触れることなく、その日の部活はだべったまま終わってしまった。

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