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サイハレ〜祭神高校、その歴史と現実〜  作者: 奈良ひさぎ
第5条:『サイハレ』の長となる者の呼称は宮司補佐官長、略称を司長とする。ただし現在は祭神高校の一部活という位置づけのため、便宜上『部長』と呼称することは許可される。

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第14話 宮司補佐

「『祭』神さんという『ハレ』の日を、無事に、盛大に行うために存在する。それが、『サイハレ』だ」



 私はほんの少しだけ、自分の心の中ですっ、と腑に落ちるのを感じた。確かにそう言われれば、少しだけ納得はいく。部室の雰囲気とは、相当かけ離れているようにも感じるが。


「ついでに言うともともと、『サイハレ』って部活じゃなかったんだよ」


 再びユッキー先輩が付け加えた。部活じゃなかったら、何なのか。


「昔はこう、なんだっけひろと。お祭りやります委員会みたいな」

「実行委員会のことか? 妙なところが分からないんだな」


 実行委員会? と私が聞き返すと、ひろと先輩は軽くうなずいてから言葉を続けた。


「『サイハレ』の前身は、祭神神社の宮司を巫女さんたちとともに補佐する組織だった。この地域に根付いた祭神さんというイベントに深く関わることから、戦後GHQによって解散させられたんだが、ほどなくしてこの『サイハレ』として、事実上復活した」

「巫女さんは女の子しかなれないから、男の子も宮司さんを補佐できるように、って生まれた組織なんだよね。もともと学生が中心の組織だったから、学校の部活の一つ、っていう扱いにしても、特にいざこざは起きなかったとか」


 ユッキー先輩がひろと先輩の言葉を補いつつ、部室の奥の方にあった引き出しから、何やら古びたノートを取り出して、私に見せた。


「これは?」

「代々、『サイハレ』に所属した人たちの名前が記録されてるの。私たちの代が引退する時に、私たちの名前も刻まれることになってる。もちろんその一年後には、しょうかちゃんたちの名前も」


 一ページずつめくってみると、年度ごとに引退した部員の名前が一人一人記されていた。しかし役職を一緒に書いているということは分かったが、『部長』『副部長』の文字は一切なかった。それを見つけたのとほとんど同じタイミングで、ひろと先輩が補足してくれた。


「『サイハレ』は祭神高校の一部活という扱いになった今でも、宮司の補佐を行う役割は変わらない。だから部長に相当する役職の正式名称も、『宮司補佐官長』のままだ。『司長』というのは、その略称になる。ただ、面倒だから部長って呼び方をしても、別に問題はない」

「へえ……」


 話を聞くたび、想像もつかないようなスケールの話をされているように私は感じた。結局『サイハレ』が特別な部活らしい、ということは分かったが、それ以上のことは正直、あまりピンときていなかった。


「心配しなくても大丈夫。『サイハレ』に所属することが、昔ほど重たい意味を持たなくなってるのも、また事実なんだって」

「そうなんですか?」


 ユッキー先輩が先ほどの古びたノートを片付けてから、私の隣に座ってそう言った。


「そうそう。昔はそれこそこの地域に住む人、老若男女問わず関わってくるお祭りを成功させるためにあった組織だったから、責任も重めだった。けど、今は形式上って言っても部活になっちゃったから、文化祭実行委員会とほとんど変わらないくらいになったんだって。ね、ひろと?」

「ああ。まあ、だいたいそんなものだと思えばいい」


 一通りパソコンをいじる用事が終わったのか、ひろと先輩もデスクを離れて、私のちょうど向かいのソファに座った。かっくん先輩もそれまでずっと黙ってひろと先輩とユッキー先輩の話をうなずきながら聞いていたが、ひろと先輩を見てその隣に腰かけた。


「そこで、だ。今は俺が部長、ひろとが副部長、ユッキーが会計になってるんだけど、当然お盆の時期にある祭神さんが終わると、代替わりをしないといけない。だから今の時期から、部長が誰になるかだけでも話し合いを始めてほしいんだ」

「逆に部長さえ決まれば、あとはすんなり決まったもんね」

「確か、そうだった。ユッキーが会計やるって言って、そのままひろとが副部長、することになったんだよな」


 何となく副部長と会計の決まる順番が逆のような気もするが、私は特に何も言わないでおいた。おそらく私たちの学年も、『サイハレ』部員は私と夏穂、草津さんの三人になるだろうから、全員何らかの役職をやらなければいけない、ということになる。

 私は誰が部長に一番適しているのかということ、それ以前に二人にこの話をいつしようかということを、その日から考えていた。

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