2度目の空間
今回は、やっとコメディータッチになりました。言葉のやり取りが主で短めです。更に改稿済。
悪夢再びな空間に来たのだとすぐに分かった。
真っ白以外何もないし、五感がすべてない感じ。
《ね…またココに来る気はしてたよ!》
― いや、来るの早くない?
《いや、アンタのせいだろ!地味に生きる設定の奴が派手に生きる人生とか結果分かるだろ!?》
― やっぱりダメかぁ〜。チート付けたかったんだけどねー…ほら、急だったじゃん?
《アンタの手違いでな!》
― これでも…あ、何にもない空間で見えてないから伝わらないかもだけど反省してんだよ?だから滑り込みで、魔力超絶アップ付けたんだー
《付けたんだじゃないよ!足りなかったからこうなってんだろ!》
― 失礼な!ちゃんと付けてあげたのに鍛えてなかったじゃん!
《鍛えるわけないだろうがっ!!なんの危険もない村に居たんだぞ!!つか、あのスタンピードなんなわけ?》
― ああ、アレ?アレは偶然が重なりすぎちゃっただけだよ。なんていうか、勇者とか魔王になるんだったらデビューに相応しいイベントだよね。
《アホか!!勇者未満の奴は、全員即死の鬼イベントじゃねーか!クソゲーかっ!!》
― ねぇー、TUEEEEチートじゃないと無理だわな。自分もビックリ。君、よくアレをギリギリだけど乗り越えたよね。
《おかげで死んだけどな…12年しか生きられないとか俺カワイソすぎ》
― は?死んでないよ?
《は?何言ってんの?死んだからここにいるんだろ?》
― いや、仮死状態だからここにいるんだよん。
《「だよん」言うな。イラッとする。》
― んもう、ワガママ短気さんだなぁ。
《それにしてもなんで仮死状態なんだ?倒れた後になんかあったのか?》
― 一緒に戦ってた騎士が、自分の御守りにしてた龍の秘薬を使ったんだよ。生き返る事が出来たら、しっかりお礼を言わないとダメだよ?
― 本当だったら秘薬は、もう少し後で騎士自身が使うことになる予定だったんだから。
《おい、ちょっと待ってくれ!!この先、アイツはまだピンチになることがあるのか!?つか、龍の秘薬って何なんだよ?》
― ここは、選別された魂がくるところなのです。
― 前世でいいことしたご褒美として、次の生が選べる場所。
― 君もそのご褒美を貰える1人。
― 本来なら君の今の生を辿る者は、TUEEEEチート勇者。
― または、TUEEEEチート魔王。
― 騎士は、仲間にもなり、敵にも成り得る。
― どちらにしても今回のスタンピードは、運命の序章に過ぎない。
― ちなみに騎士の運命は、スタンピードを止めた後に他の……
― ああ、生き返る可能性があるんだから言ったらダメか。
《おぃぃいいい!なんかRPGのOPの出だしみたいに神々しく語り出してるが、ちょっと待てい!!色々ツッコミたいんだがっ!》
― え?なになに?
《なになにじゃねーよ!急に軽いんだよ!!
あのさ、勇者とか魔王とか完全にオマエの手違いじゃねーか!話的にも普通の生活とか完全に無理だろうがっ!責任者呼べ!!更に、ポールの運命も変わっちまってんじゃねーか!!龍の秘薬がなんだか知らないけど、使わせたの俺のせいみたいに言ってるけど、オマエのうっかりが始まりだからな!》
― あー…やっぱりそうなっちゃいます?
《なるに決まってんだろ!!》
― えっと、ほら……責任者不在なんでぇ~…
《なに、三流企業の営業みたいな居留守使ってんだよ。誤魔化されないからな。オマエ以外の声が聞こえないんだから責任者オマエだろ》
― 分かってるならいじめないでください。イジメ良くない!
《……まぁ、なんだかんだ言っても悪い環境じゃなかったから、あんま強く言ってもな。家族最高に良かったし、村も悪くなかった。》
― あ、その家族なら大変なことになってるよ。
《何サラッと重大発言してんだよ…スタンピード収まってないのか!?》
― いや、収まったけど……家族は、君のことを愛し過ぎたみたいだね。このままだと世の中を憎みすぎて兄弟どちらか魔に落ちちゃうよ?
《兄ちゃんだ……なんか魔王にクラスチェンジしてもおかしくなさそうだし…アジュは想像つかないけどなぁ》
― いや、お兄さんよりも弟くんの方が、君に関して愛情深くて闇も深いよ?無事に生き返ったら、お尻気をつけないと近い将来排泄以外の機能を…
《いやいや、そっから先は言わないでくれ!!泣くぞ!!》
― OK、ベイベー!掘られるとは言わないでおこう。
《言ってるじゃないか!!マジでお尻様死守するわ!!》
― ハハハ!!まぁ、おフザケはこの辺にして……
― 君は生き返りたい?生き返ったら普通の生活なんてできないよ?運悪かったら兄弟が魔に落ちた後かもしれないし。
― このまま死を選ぶなら、今度こそ願い通りの生を歩めるところに転生させ直す。
《はっ!!そんなの決まってんだろ。美少年の途中退場なんてかっこ悪いことできるかよ!!》
― さすがだね。君ならそういうと思ったよ。今からだとそんなにTUEEEEチートとか付けてあげられないんだけど、いくつか付けてあげられそうなモノはつけてあげるよ。
但し、ちゃんと鍛えないと発現しなかったり、強くならなかったりするから、色々試したり修行するようにね。
《あっ!忘れる所だった!!龍の秘薬!!あれ、ポールに返したいんだ!!無いと困るんだろ!?どうしたらいい?》
― あれかぁ……騎士に聞くのが一番早いよ。あ、そうそう!君は何色が好き?
《いきなりなんだよ…そうだな…青系かなぁ?なんか意味あるのか?》
― フフフ…サービスだよ…………
エコーの利いたフェードアウトは、仕様なのだろうか。
この訳の分からない奴のサービスって使えなさそうな感じが半端ないんだよなぁ。
段々息苦しくなっていく中、二度目という余裕だろうか…どうでもいいことを考えていた。
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「------っっ!!!!」
叫び声をあげたハズなのに声が出なくて空気が抜ける音だけが響いた。
俺の村では決して見ることのない立派な高い天井が薄暗い中でも見えた。
瞼がいつも以上に重く、半分しか開かない。
周りを見回したいが全身が鉛のように重く、麻痺しているかのように力が入らない。
生き返ったのか?
でも、周りに人のいる気配がない。
ちょっとちょっと…仮死状態の美少年を放置とかってどういうことだよ。
ってか体濡れてるんですけど…寒いんですけど!!
なんでずぶ濡れなんだよ!
罰ゲームかなんかなのか?
更に言わせてもらうと表現を躊躇うくらい口の中が不味い。
いくら待っても人が来る気配がなく、声を出そうにも仮死状態が長かったらしく出ない。
てっきり、生き返った時には兄ちゃんとかアジュや父さんと母さんが側にいるかと思っていたのに…なんならポールでもいいや…
誰もいないで放置&びしょ濡れ…
一瞬、霊安室なんじゃないかと思い、背筋をゾクリと震わせて周りに何か怪しいものがないかゆっくりした動きで見回した。
やっぱり誰もいないし、何もない。
生き返ったばかりの最初の作業は、孤独に打ちひしがれて鼻水をすすり、体に布が張り付いて何とも気持ちが悪いので、体を動かすリハビリを細々と始めることだった。
読んで頂きありがとうございました。ブックマークしてくださっている方、して下さる方ありがとうございます。やる気が湧きます。