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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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三度目の空間にて


俺は悩んでいた。

今現在の肉体の状態を聞いて、こいつらの力で戻ったとしても何も成し遂げることは出来ない。

それどころか、人のお荷物状態になってしまうだろう。

両手の神経は死んでいて、リハビリをしても回復する見込みはなく、仮に高い技術の回復術で体を治しても一度劣化した体はすぐにガタが来てしまうそうだ。

ブルーノとストラトスは、俺の仮死状態の体を抱いたまま魔国へ向かっているのだという。

魔国では、死んでさえいなければ、優秀な術師によって回復させられるらしいが、それも回復術と大して変わらないそうだ。

魔国だから、下手をすると他の魂が割り込んで体に入り込んでしまう可能性もある。

本来だったら死んでいる体なのだが、体内に残った魔力が巡回し続けているので何とか持っているのだという。

魔国での蘇生はリスクが高い。

こいつらの話でいったら、俺は体を手放すしかないようだ。

手放す場合は、こいつらの力で魔力の巡回を止めて体を灰へと変換するという。

俺の体は、どの部分も濃い闇の魔力が宿っているから残しておくと後々面倒なんだとさ。


では、その後どうするか。

案としては、

1、魔国の魔人へ転生。チートがつけやすいからおススメ。但し、見た目と種族についてはお任せなので指定不可。成長が早いから数か月で行動可能。人国への行動の際に、妨害や制限有。

2、人間に再び転生。行動するのに時間がかかるが、それくらいの期間だったらこいつらは頑張って持ちこたえられる。見た目、環境指定可能。チートに限りがある。

3、精霊へ転生。仲間達との接触が全く持って出来ないが、即行動に出れてチート付け放題。行動に制限なし。

4、人間以外の亜人に転生。寿命も長くなるし、体も頑丈。但し、行動に制限有。種族指定可能だが、見た目指定不可。種族により付けられるチートに制限がある。

5、転生をやめてここでまったり行く末を見守る。


まず、5番はないな!これで5番選んだら試合終了だろ!そうでなくても現在強制終了してんのに!

つか、俺が5番選んだらこいつらマジどうやってこの問題解決するんだよ。怖くて聞けねーよ!

次に、精霊はないな。仲間に会えないとかなんかヤダ。会えても相手が俺を認識できないとか切なくて涙出る。



〈考えてるところすいません。現在、貴方の体について危機が迫っているので、肉体を廃棄したいんですけど…〉


ゴミ処理みたいに言うね…恐らく、ブルーノとストラトスに危険が迫っているんだろう。

アイツらを危険な目に合わせるくらいなら廃棄した方がマシだ。


《頼む。ブルーノとストラトスは大丈夫なのか?》

〈貴方の体から放出されている魔力に魔族が気が付いて騒ぎになりそうです。〉

《もう、魔国に着いたのか!?》

〈はい。ブルーノ君が頑張って走り続けたので…世界は貴方が消えて2か月経ってます。〉

《そんなに経ったのか…体を灰にしてくれ。》

〈つらい決断をこんな形で迫ってすいません。〉


俺は、真っ白い空間をフワフワしてるだけでこんなに時間が経っているとは思わなかった。

管理をしているこいつらは、忙しさ+俺に気を使ってあまり話しかけてこなかったから、ますます時間の感覚が分からなくなっていた。

意識にビリッと何かが走った次の瞬間、喪失感が生まれた。

俺の体が世界から無くなった。

なんて呆気ないんだろう。

結局、俺は大人になれずに人生を終えたのだ。


俺が消えて2か月。

家族と仲間がどうなったのか知りたい。

それによって身の振り方を考えなくてはならないからだ。


《すいません、教えて欲しいことがあるんです…》


部下の人が、言い辛そうに時折言葉を詰まらせながら話してくれた。

兄ちゃんとアジュは、俺が消えたことで仲間になった龍と一緒に各地を探し回っている。

ポールとサラとサフランは、子供たちを無事に解放して、兄ちゃん達とは別ルートで探し回っているそうだ。

アクアは、指輪の頃から俺と繋がっていたのでピンと来たのだという。

すぐに、ブルーノを探しに身を隠しながら単独で旅をしている。

カンバーは、俺のことを気にしながらも体が不自由になって狩りが出来なくなった母親を支え、他の緑人族と共に過ごしている。

リブラ、フィアットは、二人で冒険者ギルドに登録して冒険者を始めたそうだ。そこで情報を集めていくつもりだそうだ。

イヴェコとダッセルは、奴隷商人の元で奴隷契約をしてイヴェコが、ダッセルのご主人様になった。

二人は、俺が戻ってきて不自由しないように、クラウン商団へ加入させてもらって金を稼ぎ出している。

ブルーノとストラトスは…灰が飛び去った後に残った俺のブレスレットを握り締めて打ちひしがれている。


兄ちゃんとアジュは、頭では俺がこの世にいないかもしれないと分かっているんだそうだ。

町の崩れた地下道の側で、大量の血の跡と肩掛けバック、血がこびり付いた白いビリビリのマントが落ちていたこと。一緒に行動していた奴隷たちとブルーノが全く姿を現さなくなったことでポール達も悟っていた。けれど、諦めきれないのだという。

そうそう、ツァルが言っていた俺の両親は、結局、城に掴まってはおらず、東の大陸にいるそうだ。

なんでそこにいるかは調べていないとのこと。


《あの、忙しいところ悪いんですけど、俺が死んだことを兄ちゃん達に教えてあげてください。いつまでも俺を探すなんて辛すぎる。》

〈分かりました…私が有休を取っていってきましょう。あの上司だと逃亡しそうですから。〉

《するね!確実に!》

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