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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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英雄は話だけ


もの言いたげな目で見ていることに気付いたポールは、流石というかなんというか、俺のことが兄ちゃんレベルで分かっているのだろう。

口を開こうとしたら両耳を抑えて視線を反らした。

子供か!

その様子を見ていた豆腐メンタルは、右に倣う感じでポールの真似をした。

行動の早いことで。


ダメっこな英雄達に少々憐れみを覚えていると、町が見えてきた。

子供たちは、嬉しさから皆、檻に両手で掴んで鉄の柵に顔を押し付けていた。

俺は、この状況にすっかり慣れていたので忘れていたのだ。

空飛ぶ檻なんてものは、この世界に存在しないことを。

兵士や町の大人たちが右往左往しているので、不思議に思っていたらポールに肩を叩かれた。


「なんだよ。」

「このまま町に登場なんてお前も思い切ったな。」

「……ん?……あーすっかり忘れてた…」

「もう逃げられる状況じゃないぞ。」

「…ですよね。」


本当だったら町が見えた時点で空から降りて、檻から子供達を降ろして、徒歩で遠足から帰ってきたかのような平和的イメージで凱旋しようと思ったのに…これじゃ、魔族襲来と思われても仕方がない。

そりゃ、皆逃げまどうわな。

取り敢えず町の中心で開けている場所へと馬車を降ろし、檻の柵を開けて子供たちを降ろしていく。

まず親元に返してから…ツァルが来なかった場合、最悪俺が解放の術で解放して、サフランに傷を治してもらう感じだな。

副作用で動けなくなるかもしれないけど、そこは気合と根性と情熱で何とかカバー!

ダメだったら皆様よろしくお願いしますって感じだな!

まぁ、これだけ目立つ行動してるんだから嫌でも気が付いて来るだろ!


子供たちを連れて檻の前に並ばせてみたが、誰一人歩み寄ってこない。

いや、並べば顔も分かりやすいかなって思ったんだけど、あんまり効果なかったか?

もしかして、ストラトスが全員連れて他の場所に移動してるとか?


〈ストラトス!〉

〈………はい…エル様、物凄い登場の仕方で私は感動して…涙で前が見えません。〉

〈呆れてるなら呆れてるって言え!うっかりだったんだよ!〉

〈呆れるだなんてとんでもない!私は、エル様に仕えることが出来て幸せです。〉

〈えっと…そうか…〉


恥ずかしくて全身熱くなってきて変な汗かいてきた!

あ、こんなバカな話してる場合じゃなかった!

って、ストラトス見えてるってことだよな?


〈今、どこにいるんだ?〉

〈いつも通り、お側にいますよ?〉


はい!?

怖い!!何!?

心臓が嫌な音を立てているんですけど!

辺りを見回してもソレらしい姿は見られない。

首を傾げていると目の前が、歪んで見えたと思ったらストラトスとリブラが現れた。


「ぬあああああああ!!怖いわ!!!!」

「申し訳ありません。暗躍スキルを極めてしまったようで…」

「何それ!!詳しくあとで聞くわ!ってか、親たちはどうした?」

「あの人だかりの殆どが関係者ですよ。」

「えー…じゃあ、なんで来ないの?」


親が近付いてこれないなら子供たちを行かせるか。

こんなとこで時間取ってらんないからね。


「ストラトス、ツァルは?」

「それが…本日、姿を見ていないんですが、書置きは一応ありまして…」


ストラトスが渡してきた紙に目を通すと驚きの内容が書いてあった。


“ 親愛なる英雄 エルグランへ


城下町の方で不穏な事件が多発しているという確かな情報が手に入った。

さらに、立て続けに入ってきた情報で残念な知らせも入ってきた。

オマエの両親が捉えられているという話だ。

これは、確かな情報ではない。

オマエには、恩がある故、今は手一杯のオマエ達に代わって確かめに行ってやる。

無事、今の件を片付けたら早急に城下町へ来られたし。


超優しく色男なトロルド ツァルより ”


この状況で分かっていることは…

この件を早急に片づけなくてはならない。

解放術は、俺が受け持たなくてはならない。

動けない間の対策を捻り出さなくてはならない。

両親の安否は気になるが、確定ではないので置いておく。

今日は、宿に泊まる。

以上。


「はー…ツァルの奴…奴隷はどうしてんだ?」

「ツァルの弟子数人が、それぞれ世話をしているようです。何でも、このようにすぐ何処かへ行ってしまうのだとか…」

「慣れっこかよ!」

「エル、子供たちが親の元へ行きたがっているから…解放術お願いしますわ。」

「はいよー…」


一人一人とか余計魔力掛かりそうだから一気に済ます!!!

並んでいる子供たちへ、両手を差し出して魔力を込める。

そのまま、自分の中にあるスイッチ的なものをイメージで押すと藍色の光が一気に白く光り出す。

苦しくて息ができないし、指先から爪を剝がされてるんじゃないかって位手が痛い。

倒れそうになった体を一歩踏み込んで耐え、奥歯を噛みしめながら祈るような気持ちで子供たちへと放った。

白い光の塊は、子供たちの前で花火の様に弾けると、雪のような粒子が焼き印へと吸い込まれていく。

すると、焼き印がみるみる消えていき、おまけの様に子供たちの傷も再生して綺麗になっていった。


「はぁ…はぁ…こりゃ…ヤバい…魔力じゃなくて…体が……」

「エル!」


目の前がだんだん暗くなって行く中、ポールの太い腕に抱かれているという事だけわかると意識が切れた。


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