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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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覚悟はできた


空飛ぶ絨毯と空飛ぶ護送馬車の並走という、青い空には似つかわしくない光景をかれこれ1時間くらい見ている。

初めは、森の木が高かったので高度を上げていたが、襤褸切れを着せられている子供たちには寒いようで、俺達に対する恐怖で震えてるのか、寒さで震えてるのかわからないようなひっちゃかめっちゃかな状況になったので、問題を一つ一つ解決すると共に、子供たちの身元と情報を得ようと時間をかけて低い位置で飛びながら聴取しつつ移動している。

聴取は、人の良さそうに見えるサフランにお願いしようと思っていたが、数人の子供たちが暴れて戦っている仲間たちを見て怯えていたので、俺が聞くこととなった。

まぁ、あれだけ返り血浴びて戦ってたんだからね…俺でも引くよ。


「んで、皆は国境の町に戻れば親がいるんだな?」

「…私たち帰って大丈夫?」

「どういうことだ?」

「…私たちを奴隷にした人たちが、パパとママは私たちのことがいらないから売ったんだって…」

「それはない。今もみんな心配しているし、お前たちに酷いことをした奴らに対して怒っている。だから安心して戻るといい。今は仮契約状態だが、町に帰ったら契約も解除できるし、このおねーさんが皆の焼き印を綺麗に消してくれるから。」


サフランを引き寄せて檻にいる子供たちに顔を見せると、サフランが機転を利かせて優しく微笑むが、子供たちは真っ青な顔で檻の端へと固まった。

それを見たサフランは、無言で背を向けてしくしく泣きだした。

うん、なかなか子供たちにはトラウマになってるようだ。

何か解決出来たら…あっ!


「おい、そんなに怖がらなくても平気だぞ!俺達は、お前たちとお前たちの親に酷いことをした奴らをやっつけに来た正義の味方だ!

この二人の騎士は、隣の国で最も強い騎士の称号を持つ龍騎士で、この皆に怖がられて泣いてるのが、隣の国で巫女をやっていたおねーさんだ!

それとこの一つ目のおっさんは…何でも作れる凄い巨人で、熊のおじさんと猫のおねーちゃんは、お前たちの気持ちがよくわかる優しい二人で、このワンちゃんは、皆とお話しできる頭のいい特別な犬なんだよー。それに何といっても、この龍!実は、一つ目のおっさんが作った、話せて魔法が使える愉快なぬいぐるみなんだぞ!」

《ぶるーのだよ!みんな、おれたちがやっつけたから、こわくないよー。》

《オイラは、アクア!ほらほら、そんな顔してたらママとパパに心配かけちまうぞ!》


ブルーノとアクアが、俺の言葉に理解を示してフォローに回った。

檻のドアを魔法で開けてやると、二匹が飛び移って子供たちに擦り寄っていき、怯えていた子供たちに笑顔が戻っていった。

重い空気が徐々に軽くなってくるころには、絨毯をしまって檻の中にみんなでギュウギュウに入り、暖を取りながらまったり。


「エルさん、この子ください。」

「アクアとブルーノがいないと、俺が旅を続けられなくなっちゃうからごめんな。皆も見ただろ?仲間が一人でもかけたら、君達みたいに掴まっている子達を助け出せないんだ。」

「エルさん達は、この国の困ってる人を助けるのが仕事?」

「正義の味方だからね。だから、君たちを親の元へ傷一つなく返す。」

《える、このこ、はなしあるって》


ブルーノが、いつまでも自分にしがみついて離れない子供を引きずるように俺の側へ連れてきた。

その子供は、顔自体は平凡だが、瞳が左右違う色をしている珍しい人間だった。


「どうした?」

「私…本当は、こっちの組じゃなかったの…でも、おねーちゃんが…私の代わりにもう一つの組に…」

「もう一つの組…」


恐らく、ストラトスが言っていた生贄の方の組だろう。

少女の話を纏めると、自分は片方の目に魔力が多く宿っているので、違う組に入れられていたが、こっちの組にいた姉が、妹の方の組は生贄として捧げられると商人が言っているのを聞いて、檻から何とか抜け出して入れ替わったのだという。

生贄組を乗せた馬車は、人数が少ないので普通の馬車二台で移動し、自分たちとは違う道を走っていったとのこと。

方向を聞くと、キナ臭い領主が納める土地へ向かっているようだ。

街道続きの場所ではなく、途中で山道になる少し険しい道で馬車一台通るのがやっとの場所も数か所あると聞いた。

それなら、そんなにサクサク進んで行ったりできないだろう。

子供たちを直接国境の町に届けて、半魔族兄妹をピックアップして隣町に向かい、兄ちゃん達を回収して向かっても良さそうだな。

そうなると明日になる。

俺は、時間短縮ができるように、耳に着いたイヤリングに触れて魔力を流す。


〈………ッ……はい…〉

〈ストラトスか?〉

〈はい。どうかなさいましたか?〉

〈子供たちを保護したんだが、数人別口で運ばれていることが確定した。子供たちを町へ連れて行くから親を集めておいてくれ。〉

〈了解いたしました。お待ちいたしております。お気をつけて。〉


通信を切ると俺の隣にいた男の子が目を輝かせて身を乗り出してきた。


「すごい!空飛ぶ乗り物に、話せるイヤリング!」

「これは、あの巨人が作ったんだよ。」

「オッサン凄い!!」


男の子達がダッセルに鈴なりになっていく。

しがみつかれているダッセルは、子供が好きなようでとても嬉しそうに笑いながら子供をあやしていた。

男の子は、ダッセルとアクアとイヴェコ。

女の子は、ブルーノとフィアットとサフランにすっかり懐いていた。

龍騎士二人はというと、ポールは子供の扱いが下手くそですぐに飽きられ、サラは男の子に「ゴッツイ」と言い放たれて檻の隅でいじけている。

龍騎士って…一応英雄じゃないの?



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