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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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発明はダッセルにおまかせ

荷解きをしてないので、すぐに出発の用意ができ、明日着るものを椅子へ置いて宿に備え付けられている寝巻に身を包んだ。

今夜は、仕事のないものには早く寝てもらおう。


「ブルーノ、アクア。部屋にいる人には寝るように言っておいて。それが終わったら俺のベッドで寝てて。」

《えるは?》

「俺は、まだ情報を集めたり、人の説得に向かっている仲間を待って結果を聞かないと。」

《大変だな…寝ると身長が伸びるって言うけど…》

「うるさい。仕方がないだろ?」


二匹の頭を撫でてやり、部屋のドアを開けると廊下にダッセルがウロウロしていた。

うん、デカいのにフード被ってて怪しい。

あいつ、よく悲鳴を上げられなかったな。


「ダッセル、何を落ち着きなくウロウロしてるんだ?」

「む!その声は…エル殿?」

「ああ、この姿で会うのは初めてだったな。いいか、会った時のは変装だ。この姿が俺の本当の姿。」

「随分、男の子のような…」

「男だからな?」

「そうだったんで!?拙者、分からずに申し訳ない!!」

「分からないように変装してんだから気にすんな。ところで何やってんだ?」


廊下で話すには目立つので、ブルーノとアクアにお使いを頼んで、ダッセルを部屋に招くことにした。

身体がデカい分、声も普通の人よりもでかいからな。


「で?理由を聞かせてもらおうか。」

「みんな、それぞれ体を動かして情報を仕入れているのに、拙者は部屋から一歩も出ていない…」

「サラと同じ理由だな…図体がデカい奴は、動いてないと死んじゃう病なのか?ったく…明日から行動を開始するんだから体力を温存しておけ。」

「温存ならずっとしていました…そうだ!何か作って欲しいものとかないでしょうか?」


そうか、ダッセルは作業も早いからちょっとしたものなら時間もかからずに作れるな。

にしても日も落ちてきたし…そうだ!


「材料はあるか?」

「ある程度ならあそこから持ってきましたぞ!」

「通信機…離れている相手と連絡が取れるようなアイテムってのどうかな?」

「それでしたら…魔道具になりますが、拙者の作った道具で御座いますぞ。しかし、一対一でしか話せませぬ。」

「一対一で十分じゃん!ちょ!天才なのか!?」

「ムホホ!照れてしまいます!ムホホホホ!」

「んで、どれくらい離れたら離せなくなるんだ?」

「測ったことはございませんが…おそらく山二つ分くらいでしょうか。」


山二つか…ダンジョンや城に潜入したときに話せればいいから役立つことは間違いないな。

電話的なものは無理だろう。この世界は、一つ一つの村や町がとてつもなく離れているし、電線も衛星もないからな…

ダッセルが、腰に下げている小袋からイヤリングを取り出した。

まさか…それか?


「ダッセル、それって…」

「はい、無限袋~!」

「…随分厳つい猫型ロボット…違う違う!イヤリングの方を聞こうかと思ったのに袋スゲーな!」

「え?そうだったんですか。袋も拙者が作ったんです!」


うっわー…単眼が期待に潤んでるよ…褒めて褒めての目だ!

ブルーノで良く知ってる目だ!


「すごいじゃないか!これなら荷物運ぶの楽だな!」

「そうなんです!拙者は、素材を持って移動しなくては落ち着かないんで…頑張って作りましたぞ!」


小袋片手に分厚い胸板をこれでもかと反らせてドヤ顔を晒している。

子供だ…夏休みの自由研究を母親に自慢する子供がいるぞ!

このままじゃ、小袋の話を延々聞かせられそうだから、とりあえず宙に浮いて角を避けながら頭を撫でてやった。


「いいこいいこ。袋の話は、長い道中聞かせてもらうとして、そのイヤリングのことを聞かせてくれないか?」

「はい!このイヤリングは、話したい相手に一つ。もう一つは自分の耳につけて使用する簡単なものでして…試してみますかな?」

「百聞は一見に如かず!やるやる!」


差し出されたイヤリングを耳につけ、もう一方はダッセルがつけ、実験だとはしゃいで部屋を出ていった。

アジュと初めて糸電話した時みたいなドキドキ感で、連絡が来るのを部屋をぐるぐる歩きながら待った。

暫くしてからイヤリングが不自然な震え方をしたので、抑えるために指で触れると魔力がイヤリングへと吸い込まれていく。


〈エル殿?聞こえますかな?〉

〈ああ、聞こえてる。かなりクリアに聞こえるんだな。〉

〈はい、少量の魔力で話せるんですが、初めの会話では、相手が話しかけられていることに気付いてイヤリングに魔力を流さないと通じないんです。〉

〈初めに言えよ!気が付かないところだっただろ!〉

〈一応改良して、震えるようにしたんですが…〉

〈改良して正解だ。震えたからわかった。〉


暫く会話をして、ダッセルが俺の部屋に戻ってきた。

どこにいたのかと聞くと、宿の受付近くまで移動していたそうだ。

それにしては雑音も入らなくて聞き取りやすい。

国の幹部が目を付けるだけあるな。

ダッセルは、満足げに片方のイヤリングを俺に渡して、上機嫌で部屋へと帰っていった。

このアイテムは、今後の行動に役に立つことだろう。

イヤリングを肩掛け鞄に入れて、帰ってきたペット二匹を迎え入れた。

眠りにつこうとしているペット達の邪魔にならないようにとランプの明かりを抑え、窓から見える夜空を眺めていた。

まずは、数日前に攫われた子供たちを解放。

それ以降は、奴隷商人やギルドの協力者の話を参考にしてしらみつぶしに貴族や幹部の元から子供たちを解放する。

解放だけではだめだな…ちゃんと保護者に引き渡さないと、また攫われたり傷つけられたら水の泡だ。

その為には、もっと協力者を集めなくてはならない。

それに、緑人族もだ。

カンバーの母親を助けなくては、カンバーも真に気が休まらないだろう。

目先のことだけではなく計画を立てて行動していかなくては…

はー…ストレスで身長伸びなくなりそう。

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