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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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気分は殿様


無事兄弟喧嘩も収束して、仲良く手を繋いで裏路地から出ると、果物屋であった店主が、大根のような形をした赤い根野菜を片手にどうしたらよいかとオロオロしていた。

兄ちゃんと手を繋いでいるから連れ攫われる現場だと勘違いしているのだろう。

心配無用だと伝えようとアジュと繋いでいた手を放して、大きく左右に振って見せた。

すると、店主が血相を変えて大根もどきを握りなおして走ってきた。

おっと、どうやら勘違い継続中のようだ。

このままだと兄ちゃんに殴りかかりそうなので、大き目の声を張り上げることにした。


「おじさん!この人、俺の兄です!心配かけてごめんなさい!」

「なんだって!?」


店主は、ホッとしたのかその場に座り込んでしまった。

こんなに心配してくれる人がいるなんて、奴隷大国と聞いていたが、なかなか捨てたもんじゃない。

俺が今まで来た村とかだったら…特に初めの村だったら心配以前にシカトものだ。

座り込んでしまったオジサンを俺と兄ちゃんで支えるように立たせ、申し訳なさに二人で頭を下げた。


「心配してくれている家族がいるってのはいいことだ。こっちの子は弟かい?」

「はい。お恥ずかしい話なんですが、兄弟喧嘩をして俺が宿を飛び出しちゃったんです。」

「仲がいい兄弟ほど喧嘩をするものさ。子供の時に喧嘩をしていれば、大人になって大きな喧嘩をすることは少なくなるってもんよ。いやー、良かった良かった。」

「どうしてこんなに心配してくれたんですか?旅の子供なんて沢山いるでしょ?」

「数日前なんだがね…子供が大量に奴隷落ちさせられてな…惨いことだったよ。」

「公園のおばさんも言ってました。最近は物騒になったって。」

「俺も宿で聞いたよ。子供だけで行動しない方がいいって。」

「奴隷落ちしたのが、丁度君たち位の歳の子たちだったんだ。数日前は、子供だったが…大人の私達もいつ闇に落とされるかわからないから用心しているくらいだ。」


子供のばかりを狙っている悪質な誘拐だな。

恐らく、すぐに焼き印が押されていることだろう…数日前で子供たちを大量に連れているならそんなに離れてはいないはずだな。

考えをまとめて顔を上げると兄ちゃんとアジュ二人と目が合った。


「エル…気が急くのは分かるけど、今日は宿で体をしっかり休めてから行動に出よう。」

「俺とサフラン、奴隷たちで情報を集めるから対策を立てておいて。」

「……二人とも本当に俺の頭の中御見通しなんだね…」


兄弟でもこれだけ以心伝心するなんて凄すぎて次の言葉が出てこないよ。

俺達は、少し腰が抜け気味のオジサンを店に送って、周囲に気を配りながら宿へと戻った。

宿に戻ると、アジュはすぐに行動に移しだし、兄ちゃんは事の成り行きをその他のメンバーに話した。

俺は、考えをまとめるためにポールとペット達が、兄ちゃんの招集で居ない部屋で紅茶を飲んだ。

情報をまとめると、子供を大量に攫ったのが数日前。

理由としては、貴族や幹部の間で流行っている子供奴隷集め。

何故子供奴隷集めが流行っているのか。

一部の変態が集めているのならわかるが、今は幅広い層からの需要がある。

集められた子供たちはどうなってしまうのか…

俺は、疑問に思ったことを黒板のような板に、白く細長い木炭のようなもので書いていく。

紙は、高価で重要な書類や本に使われるので、一般的にメモ等はこうした黒板のような板に、白木で作った炭をペンにして書く。

この方が、何度も書いたり消したり楽だからだ。

消えて欲しくない物だけ紙に書くという文化。

この大陸では、それが一般的。

他の大陸でどうなのかは、俺はまだ知らない。

アジュに、このボードに纏めたことも聞いて回ってもらいたいけど…どうするかな。

そういえば、ストラトスが忍びみたいなスキルがかなり特化してるんだよな…昔の殿様みたいに呼べば来るかな?


「ストラトス…」

「はい、エルグラン様。」

「うあああああ!!本当に凄いな!!」

「え…これくらい当たり前ですが…」


驚きすぎて椅子から転げ落ち、心配そうに見てくるストラトスに、目を見開いて口をパクパク動かして間抜けな顔を見せてしまった。

心臓止まるかと思ったよ。

当たり前とか言いきっちゃって…俺、凄い奴隷を手に入れちゃったな!


「もしかして、さっき俺が出ていったのもついてきてた?」

「はい。エルグラン様をお守りする奴隷としては当然です。」

「なんていうか…感服するわ…」

「有り難き幸せ。」

「あ、この走り書きをアジュへ持っていってくれる?」

「かしこまりました。」


俺からボードを受け取ると一瞬ストラトスの姿が揺らいだと思ったらいなくなっていた。

おー、SHINOBI!

ストラトスと入れ違いのようにポールとペット達が戻ってきた。


「兄ちゃんから話を聞いてどう思った?」

「どうって…エルのことだから助けに行くんだろ?」

《本当だったらすぐにでもって思ってるところを兄弟に止められたってとこだろ。》

《える、すなおだから、わかるー。》


こいつら…俺ってそんなに分かりやすい!?

結構、複雑なこと考えてる気がすんだけどなー。


「あ、そうそう。サラにも何か役割をやってくれ。」

《女子部屋で一人しかいないの嫌だって半泣きだったぞ。》

《さら、よわいの。》

「じゃー、ポールとサラはギルドで話を聞いてきてくれ。」

「了解。」

《俺とブルーノは?》

「攫われたら困るから俺の側で昼寝してて。」

《ぶるーの、つよいからだいじょうぶ!》

「俺が攫われたら困るから。」

《えるー!おれ、かならずまもる!》

《オイラも!》


ポールが俺たちの様子をにこやかに見ているが、顔面に言葉が張り付いていた気がする。

”ベビーシッター乙”ってさ。


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