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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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扉は浪漫


人が二人通れる程度の階段で睨み合う形になっていたところへ、一番背後にいたストラトスが壁を歩いてこちらに来た。

暗躍スキルを鍛えるとジャパニーズSHINOBIになれるんですね。ってか忍者でもできない芸当だと思うけども!

かなり緊迫した空気だと思うけど、相手もストラトスも殺気を放っていない。

えー…これって脅かしておいて、実は味方でしたパターンですか!?

だとしたら悪い冗談が過ぎるから絶対に仲良くなんてなれないよ!

殺そうかとも考えちゃってたんだからね!


「ご主人様、この界隈だと有名な奴隷商人ですので、ご勘弁を。この者は、裏に通じているので私たちのこともすべて筒抜けだと思われます。」

「どうにも悪い冗談が過ぎる。」

「ごもっともでございます。しかし、この者はトロルド族でございます故、こういった事も彼らの中では当たり前の駆け引きなのでございます。」

「お前さんは、あのオカマ将軍の奴隷にしては過ぎた奴隷だったな。金払い良くて奴隷好きだったからいい商売相手だったが…使い方が悪い。」

「オカマに、こいつらを売ったのはアンタか?」

「いいや、違う。俺たちは、精霊に近い種族だ。魔族関係に手を出すほど恐れ知らずじゃない。」

「俺には、試すようなこと言ってきたけどな。」

「それはそうだろ…噂だとアンタは、国を軽く潰せるほどの力を持っていると言われているお尋ね者。方や後から聞いた話じゃ、村を救った英雄だ。それも二つも村を救っている。どちらが本当なのか確かめねばならん。」

「どっちも本当だ。だが、国一つ潰したら俺は確実に死ぬと思うけどな。」


商人は、醜い顔を更に醜く皺くちゃにして高笑いをしながら、俺たちに背を向けて階段を降り始めた。

後ろから続く仲間たちは警戒しながらも階段を下りて付いていく。

降りていくにしたがって段々薄明りが見えてきた。

階段を下りきると目の前にはレンガ造りの壁があって行き止まりだった。


「さて、本題を話そう。

ワシは、その奴隷が話したようにトロルド族だ。そのワシが奴隷商人をしているのにはわけがある。

一つは、依頼主が探しているものが奴隷に落ちている場合、酷い目にあわされる前に救済する為。

もう一つは、世界の情報を知る為。奴隷落ちしている奴の殆どは訳アリだからな。

情報は、時として武器や金よりも強い。」

「確かにそうだな。俺達も武器より情報集めの方を重要視してる。」

「追われているお前たちなら情報の重要性が身に染みているだろう。

それと、奴隷商人をしている訳は…自ら奴隷落ちした者たちをお前たちのようなものに渡すためだ。」

「自ら奴隷落ち?」

「奴隷制度では、悪いところばかりが先行してしまいがちだが、そこの半魔族の様に保護を受けるために奴隷になっている者もいる。」

「そこまで分かっているのか…」

「当たり前だ。何十年奴隷商人をやっていると思う。奴隷たちの目が濁っておらず、しっかりした足取りと身なりでオマエに付いて行っている。それに、半魔族の兄妹というだけでも珍しいのに、あのオカマ将軍に破格の値段で落札された有名奴隷を連れているじゃないか。」

「オカマ主で有名になったわけじゃないんだな…」

「エルグラン様…私と妹は落札した元値を取り戻すために、それだけ沢山働かされましたし、酷い仕打ちも受けてきたんですよ。」

「くははっ!悪かったよ。ストラトスでも拗ねるんだな。」


無表情に近い表情のストラトスが、あからさまに拗ねるなんて何だかギャップがあってついつい笑ってしまった。

そっぽを向いてしまったストラトスを宥めようと背中を数回擦ってから話の先を促す様に、奴隷商人へと視線を向けた。

すると奴隷商人が驚いたような表情でこちらを凝視していた。


「どうかしたか?」

「やっぱり、後からついた噂の方が真実なようだな…安心した。」


何やら勝手に納得して一つ頷いてから俺たちに背を向けて、壁をランダムに撫で始めた。

この壁自体が仕掛け扉か…超ファンタジー!

きっと左右にボコボコ動いて開くんだろうなー。それとも横にずれるのかな?

何だかワクワクする!


「エル?目がすっごくキラキラしてるけどどうしたの?」

「兄ちゃん!仕掛け扉だよ!ワクワクする!」


どうやら兄ちゃんは、ファンタジー世界の純粋な住民なので、俺のこの興奮が伝わらないようだ…残念!

アジュとカンバーの方を見ても案の定兄ちゃんと同じ反応だった。

共感できる人募集中です。

奴隷商人の手が止まると、商人は俺たちの方を見た。

なんだろ?まさか、隠し扉の開け方忘れちゃったのか?

不思議に思って首を傾け、扉が開くのを待つが何も起きない。

石が擦れる音もしない。


「エルグラン、オマエはいつまでこっちを見ている。入口は後ろだ。」

「は?後ろは階段しかないだろ。」


もー、何言ってんだよって勢いで後ろを振り返ると、階段が坂道の様に斜め平らになり、音もなく上へと持ち上がっていく。

持ち上がり切って天井と一体化すると、緑がかった光が照らす廊下が現れたのだ。

くっそ!!壁は、タッチパネルかよ!!!!

裏切られた感満載で肩をがっくり落としていると、イヴェコがいい笑顔でサムズアップしてきた。

ナイスリアクションと言いたげだな、おい!



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