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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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旅はまだまだ続く


アルズトと違ってそんなに急ぐようなことはしなくていいので、皆が自然に起き出すのを待って軽めの朝食を取り、身の回りをまとめて国境の町へと歩き出した。

ストラトスに話を聞いたら、この国は結構上り下りが激しかったり、変わったところに町や村を作っているのでフットワーク良く動くのであれば馬車じゃなくて、この国特有の物を買った方がいいと言われた。

特有の物は、数種類ある。

まず、次の町でも手に入るのが、ドワーフ族やオーク族、オーガ族の奴隷を買って自分たちを背負わせて移動。

動物に乗るのは抵抗ないけど、人型のものに背負われるのは何とも居心地が悪そうだ。

次に、魔道具を用いた移動球体。これは、魔道具で特殊な球体を作って、柔らかいうちに荷物を中へと入れて浮遊させ、それを引っ張って移動する。

テーマパークによくあるヘリウム入りの風船の強化版みたいな感じだろうか。

荷物を取り出すときは、硬くなった球体を壊して取り出すので効率が悪い。

魔道具だから当然、原動力となる魔石が必要になるし、ちょっと荷物出しただけで、また起動させて荷物を収納ってめんどくさい。

あとは、もう少し城へと近いところで購入できるペガサスやグリフォン等の空が飛べる飼いならされた魔獣。

その他にもいろいろ教えてもらったが、どれもいまいちピンとこなかった。

シルバ達と移動したときの快適感が忘れられないのかもしれない。

それに一番近い案としては、移動用魔獣を買うことかもしれないけど…まだ、この怪しげな国に入ったばっかりだから不安がいっぱいだな。

まぁ、国境の町に行ってその場所の雰囲気を見て色々判断するとするか。


「街道を通って旅ができるって最高だな。」

「確かに…今までこそこそしながら道を歩いたり、獣道をひたすら突き進んだりしてたもんね。」


この旅もなんだかんだで結構経つ気がする。

隣に並んで歩いてるアジュなんて身長が少し伸びた気がするくらいだ。


「そんなにじっと見られると照れるんだけど…エル、どうかした?」

「ん?アジュの身長が伸びた気がするんだけど…」

「あ、気が付いた?ここの所体が軋むんだよー。」


え?成長期には、まだまだ早い気がするよ!まだ、小さいアジュでいて欲しい!

顔面蒼白になってきた俺にアジュが苦笑して肩を叩いてきた。


「そんな顔しなくても大丈夫だよ。俺が、エルの身長を抜くのは時間の問題だから。」

「………っ!!!」


泣いてなんかないんだからな!これは心の汗だ!!


「アジュ、エルをイジメるんじゃない。アジュが身長伸びるってことは、エルだって伸びるってことだよ?」

「兄ちゃん!!!」


イケメン兄ちゃん万歳!ナイス、フォロー!!

思わず片足上げて抱き着いちゃったよ。


「……エルは、村を出てから伸びてないじゃないか。」

「ぐっ!!」


アジュの鋭い指摘に、兄ちゃん息ができないよ!息の仕方を忘れてしまったよ!


「そんな酷いこと言うアジュには…ピザ作ってあげないんだから!!!」

「エル、ごめんなさい!許してよー!!」


兄ちゃんに抱きついたままの俺にアジュが抱き着いて三つ巴状態です。

こうなると足が進みません。

呆れたポールが俺を摘み上げて、肩に担ぎましたよ。


「ポール…俺は荷物では…」

「歩かないで騒いでる奴は、荷物扱いする。」

「その判断は、今回正しい。エルは、すぐ誰かとふざけると足を止めるから全然先に進まない。」


どうやら珍しくカンバーはご立腹のようです。

そりゃそうだよね。早くお母さんを助けたいもんね。

ポールに担がれたまま、カンバーを見つめて頭を下げた。


「ごめん。以後気を付けます。」

「分かってくれたならいいよ。僕もきつく言ってごめんね?」


やれやれと息を吐いて俺をカンバーの隣に降ろすと、ポールは固定ポジションである先頭へと歩いていった。

カンバーは、笑顔で俺に手を伸ばしてきた。


「仲直りに手をつないでいこうよ。」

「ああ。」


カンバーの細いけどしっかりしている手を握って、恥ずかしさに照れ笑いを浮かべて足を進めた。

カンバーは事ある毎に、俺と手を繋ぎたがる。

まるでちょっと前のアジュみたいで、なんだか微笑ましいな。


「思わぬ伏兵ですわね…」

「カンバーたんは、我々の愛すべきボクッコでしたのに…」


コソコソ真後ろで下らない話をしているへっぽこ豆腐チームに、天誅と言わんばかりにチョップをお見舞いした。

隙あらば変な話ばっかりして、俺はお前らの将来が心配でたまらないよ!

最近じゃ、リブラやフィアットにまで話し出してるんだから油断ならん!


「エルの前では、恋愛話で来ませんわね。」

「本当です!それに、まだライルさんとのイチャイチャご褒美をもらってません!」


無言で二人へと視線を向け、スッとチョップの構えをすると、そそくさ後方へと下がっていった。

恋愛話と腐った話は別ものじゃないのか!?

ってか、今しがた十分兄ちゃんとイチャイチャしてたっての!あれじゃ足りないわけ!?怖いわ!


「エルグラン様、あと一日ほどで国境の町へ着きます。日も丁度傾きだしてきたので、野営できそうな場所がありましたらそちらで休んだ方がよろしいかと。」

「有難う、ストラトス。なんだか執事みたいだなー。優秀優秀!」

「こちらこそ有難うございます。私が役に立てることでしたら何でもやろうと思っている所存です。」

「わ…私も…兄様みたいに…役に立ちたいって…思ってます。」

「リブラ、無理しないでいいから。リブラもストラトスもいずれ解放するんだから、そんなに気負わなくていいよ。」

「「……」」


二人とも黙り込んじゃったよ。嬉しくないのかな?

でも、今すぐ解放したら、その方が危険だしな。

うーんっと唸っているとカンバーが、徐に手を引いて優しく話しかけてきた。


「エル、勘違いしてるかもしれないから言うけど、二人とも解放よりも恩返し的に役に立ちたいって言ってるんじゃないかな?」

「なるほど。」

「僕もそう思ってるから。母さんが助かったら、母さんの許可を貰って一緒に旅を続けたい。」

「え…それは…んー…その時になってから考えよう!」


折角親子が巡り合えた場面で、いきなり引きはがすようなことしたくないしな。

カンバーは、複雑そうに苦笑しているが、分かってほしいものだ。


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