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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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魔性イケメンは油断ならない


朝日が眩しくて起きたら、目の前に全裸マッチョじゃなくて絶世の美青年です。

笑顔が朝日より眩しくて鼻血噴き出し放題カーニバル開催するかと思いました。

見慣れているはずの兄なのに、本当に美形は留まることを知らないようです。

ぽわっとした気持ちで兄ちゃんのエンジェルスマイルを独占していると、頭上から不愉快なまでにごっつい手が出てきましたよ。


「おい、起きたなら俺に何か言う事があるんじゃないか?」

「もう少し兄ちゃんとまったりしていたかったのに…無粋な奴だな。」

「どこのお偉いさんなんだ?仲間に面倒事片付けてもらって何がまったりだ。」


ごもっとも!流石にポールでもご立腹になりますか。ですよね!

兄ちゃんの腕の中から抜けでて、側にいつの間にか寄り添ってるブルーノの毛を挨拶代わりに一撫でする。

皆にお礼を言わないとな。あと、先に寝ちゃったことも謝らないと…ってかなんで寝ちゃったんだろ?


「あー、皆、先に寝ちゃってごめんね?……ってポールとストラトス以外起きてないじゃないか!」

「そうだ。みんな起きてるなんて言ってないぞ。昨日のピザってやつのおかげで、皆思う存分腹を満たして寝たから、俺とライルとストラトスしか起きていない!」

「バカなの!?俺を起こす必要ないじゃないか!」

「お前起きてんだからダラダラしてるな!俺が退屈だ!」

「理不尽!!」

「はいはい、二人とも賑やかだね。アジュとサフランは、さっきまで見張りで起きてたから寝かせてあげてね。」


兄ちゃんに言われて気が付きましたよ。

ここ外じゃん!外ってことは、交代で見張りしないとダメじゃん!


「ごめん…俺、今日の見張り長くするから。」

「いいんだよ。疲れてたから仕方ない。」

「兄ちゃん!!!」


うああああああ!!兄ちゃんマジ神!!大好き!!愛してる!!イケメン様!!

脳内兄ちゃん感謝祭を大々的に執り行っている隣で、冷めた視線を投げつけてくるモブ騎士。

お前は、もう少し俺を敬え!一応、お前のご主人様的なもんだろ!?

兄ちゃんに抱き着きながら歯ぎしりをしてポールを睨みつけた。


「言いたいことがあるならその喧しい口で言えばいいだろ。」

「おまえは、俺に対して思いやりがないぞ!」

「その言葉をそっくりお前たち兄弟にくれてやる!昨日、とんでもないモンスターがいることを俺にも言わないとかどういう事だ!」

「でも、問題なく勝てたじゃないか。」

「ライル…お前なぁ…」


兄ちゃんの言葉に、ポールは額を手で覆って溜息を吐いていた。

どうやら、兄ちゃんの読みが当たったようです。

ブルーノ一匹で無双できるかなって思ったけど、兄ちゃんが戦える奴は行かせた方がいいって言ってたから、何も考えずにそうしたけど結果大正解だったみたいだ。


「ところでとんでもないモンスターって?」

「ディモンス…魔族の落とし物だ。」

「それは…厄介な奴だったんだね。」


絵本でしか読んだことがないけど、要約すると魔素製造ペットだった気がする。

騎士コンビとブルーノで正解だったな。


「エルグラン様、おはようございます。こちらが、昨日奪還した書類です。」

「ああ、ストラトス。おはよう、先に寝ちゃってごめんよ。」

「いえ、奴隷に謝罪は無用です。それと、昨日いただいたピザ…あれはとても美味しかったです。」

「気に入って貰えてよかったよ。」


ストラトスにしては珍しく、柔らかな笑みを浮かべていた。

ピザをたくさん作ってよかったなー。

さて、受け取った書類でも見てみるか。


「なんだこれ…気持ち悪!!!!!!!」


書類には、俺の身長と外見、名前、好みそうな貴族の名前、値段が事細かに記載されていた。

唇の色や形、評価まで書いてある。

容姿のほとんどS評価だが、態度と話し方だけCが付いていた。

そして、入手難度はA。

従者、護衛、奴隷が多い為と追記してある。

値段は、この世界ではかなりの高額評価だった。俺の村を一年運営する費用位だな…人間一人にこれだけの金を出せる奴が12人もいるとか…この国は狂ってやがる。

震えながら書類をガン見していると、上から手が伸びてきて兄ちゃんに取られてしまった。


「今のエルの外見でこれくらいか…元の姿だったらもっと評価が上がりそうだね。」

「どれどれ…本当だな。元の姿だったら態度と話し方もSになるだろ…まぁ、よかったじゃないか。」

「何が良かったんだよ…ってか、女の子だからこの高い評価なんじゃないの?」

「この国じゃ、男も女も関係ない…それくらい歪んでるんだ。」


この姿のままで正解だな。

この国を知ってるポールが言うんだから間違いないだろ。

そういえば、この国を知ってる奴らが沢山いたな。今は、ストラトスしか起きてないから、ストラトスに聞いてみるか。


「ストラトス、ちょっと話を聞きたいんだけどいい?」

「もちろんです。何なりとお聞きください。」

「俺は、この国についてあまりよくわかってないし、右も左も分からないから度々話を聞いたり、相談することがあると思うんだけど…この場所から一番近い場所にある村ってどんなところかな?」

「この国は、アルズトと違って村制度はありません。なので、村と町、城下町があります。この近くですと国境の町です。商業が盛んで、大体の商業団体、農業団体は商売をしていきます。」

「奴隷は?」

「まだ国境近いので、裏ギルドでの販売になります。」

「城から離れているのに、もう裏ギルドがあるのか…」

「この国には、普通に裏ギルドがあります。情報はもちろん、人身売買、宝石、秘宝、禁忌魔道具なども取引されます。

先ほど、ライル様とポール様がお話ししていましたが、私もエルグラン様はこのままの方がよろしいかと思います。本来の姿を何度か拝見しましたが、髪の色も瞳も珍しく、その上美しい。

奴隷であるにも関わらず、私もエルグラン様の美しさに言葉を失ったほどです。」

「えっと…その…有難う…」

「私は、事実を申し上げているだけです。

デビルハーフの私の感性に響くのですから、魔族と通じている貴族に目を付けられて取引の道具にされてしまう場合があります。」


うひぃいいいい!ストラトスみたいな魔性の美形に言われると、恥ずかしくて穴を掘って埋まりたい衝動に駆られるんだけど!!

顔から煙が出そうだよ…こんな面と向かって美形に褒められるとか兄ちゃんとアジュ以外いないから慣れないよ!

俺が女の子だったら、今ので妊娠しちゃってたよ!!!魔性美形怖い!!

それと魔族を通じてる貴族がいるとか、ぽろっと穏やかじゃないこと漏らしたし!

テンションおかしなことになって情報整理ができないよ。


「エル、なんだか混乱してるね…俺以外にアレをやられると、ちょっと妬けるよ。」

「アイツは、俺と女子コンビ以外には始終あんな感じだけどな…いっつも赤面してあわあわしてるだろ。」

「本当に可愛いよね。妹だったらとっくに間違いが起こってると思うよ。」

「否定できない冗談を真顔で言うな。」


兄ちゃんサイドからも耳を疑うような言葉が聞こえてきたよ!

こりゃ、当分俺の中でのカーニバルが納まらない!!

美形イケメン祭り有難う!

贅沢を言えば、美女ハーレム祭りだったらもっと幸せだったよ!!

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