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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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ピザは幸せ味


リスト奪還組と魔物対処組を見送り、人数が減ったおかげか穏やかな時間が流れ出した。

残っているのは、俺と兄ちゃんとアジュとサフラン。

町散策以来の少人数行動です。

リスト奪還組がどれだけ時間かかるかわからないので、一応日持ちする料理でも作ろうかと思っています。

魔物対処組は、サラの力で早く解決できそうだから作っておいても問題ないでしょう!


「サフラン、皆が帰って来るまでにご飯を用意しておこうか。」

「私も丁度そう思ってましたの!」

「それじゃぁ、商人たちもいることだし、買い出しは俺とアジュで行ってくるよ。」

「俺、久し振りにアレ食べたいなー。」

「アレかー…それじゃぁ、材料分かってると思うから買ってきてくれる?」


アレというのは、ピザです!

実は、シルバから貰った魔道具を前の村にいるときに少し試してみたら、素敵なものがあったんですよ!

俺よりも火の魔法が使えるアジュの方が上手く使えるから、この道具を使うときはいっつもアジュに任せるんだけど…窯なんです!魔力を流すと小さなレンガの塊のようなものが、風船のように大きくなっていき、あっという間に窯になるんです!

魔力が相当ないと使えない代物なんですがね。うちの弟は、火に関しての魔力が高いので使えたんです!

持つべきものは弟です!変態だけどね。

更に、サフランへ指示をして作っておいたトマトソース的なものを瓶詰して鞄に入れてます。

本当ならチーズが欲しいけど、とろける素敵チーズは高価なので手に入りません。

でも、チーズ的なものがないと、ちょっとピザ感でないよね?

作りましたよ!ミルクとベルベリで!

凄いでしょー。村に居たらなんでも自分で試さないと手に入らないんだよ。


「エル、アレとはなんですか?アジュが、時々食べ物を食べながらアレ食べたいってよく言ってるんですけど。」

「ああ、アレって言うのは村で良く作っていた食べ物で、ピザって言うんだけど…アジュは小さいころに名前が言えなかったからアレって言うようになったんだよ。」

「窯の魔道具を見る度に、そわそわしていたのは言い出せなかったんですね。」

「ピザを食べてるアジュを見たら、可愛くて惚れちゃうかもよ?ふふふ…」

「ああ、それはないですわ。」

「きっぱり言い切るね。」

「ええ。アジュとはずっと友達ですもの。お互い結婚式には余興をやり合いましょうって話してますから。」


まさかのズッ友宣言!?

ってか異性扱いされてない!?

これは計算外だ…俺の計画がブチ壊れじゃないか!

ショックでクラクラしていると兄ちゃんとアジュが帰ってきた。

俺の様子を見たアジュが、何故かニヤニヤしている。


「どうしたの?サフランに何か言われた?」

「い…いや?」

「アジュ、一つ貸しですわ。」

「はいはい。」


いやぁあああああああ!!この二人手を組んでいるのか!?俺の脳内見られてるのか!?

この隠密二人怖い!

頭を抱えている俺に、兄ちゃんが優しく頭を撫でてきた。


「エル、ここ数日見てたけど俺でも分かるくらい脳内ダダ漏れだよ?」

「に…兄ちゃん?」

「お兄ちゃんに相談してたら変わったかもしれないね?これからは何でも俺に言わなきゃだめだよ?」


くっ!素敵ヴォイスで追加攻撃ですか。何度もそのセリフをリフレインしそうなくらい兄ちゃんがかっこよくて辛いです。有難うございます。

兄ちゃんの肩越しに、何故か勝ち誇ったようにドヤ顔のアジュがムカつきます。

この悶々とした気持ちをピザ生地作りに当てたいと思います。


「アジュ…窯の用意お願い…」

「エル、自分が変な計画立ててたくせに、そんな顔しないの!機嫌治さないと唇奪うよ?」

「アジュ、窯の用意してくれるとすっごく嬉しいな!」

「「チッ!」」


難しい弟です。機嫌を治せって言うから治したら舌打ちですか。アジュだけじゃなくてサフランにまで舌打ちされるとか泣きますよ?

ため息をつきながら魔道具をアジュに渡して、ピザ作りに励みました。

皆の為に大量のピザを作っては、アジュに渡して焼き、数枚は焼かずに俺の魔法で冷凍保存です。

やっと冷凍食品を作れるようになったんだよ!道は険しかった…

加減が難しいんだよ。あんまり凍らせると解凍してもグッチャグチャで食べられないし。

冷凍保存したピザを一つの袋にまとめて鞄へこっそりとしまう。

どうやら、袋単位だと鞄の容量が稼げるようです。


「これが、アジュがよく言っていたものですか…」

「あー…これこれ!いい匂い!」

「懐かしい感じがするね。エルのピザはどれくらい振りだったかな?母さんとアジュの好物だから、村にいた時に沢山食べたのを思い出すよ。」

「俺もピザって言ったらアジュって感じだな。」


湯気の上がるピザを目の前に、4人ともにやけながら見物し、サフランに頼んで作ったピザカッターで切り分けるとアジュが、珍しく我先にと手を伸ばして齧り付いた。

俺達も我慢できないといった感じで次々に齧り付いていった。


「ふふ…幸せ…」


いつもそうだけど、ピザを食べている時は、年相応の笑顔になる弟に幸せな気持ちとくすぐったいような笑いが込み上げてくるのだった。

弟も世界で一番可愛いと思う兄バカの俺でした。


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