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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第2章 奴隷大国ホフタ
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入国は慎重に


村から出て数日すると国境が見えてきた。

国境の巨大な砦までは村から一本道で続き、周りの目を避けて獣道へってのは出来なかった。

岩山を登っていくのもそうだけど、あの村での出来事で一躍時の人となってしまったのである。

歩いている間、商業団体に商品を売りつけられそうになったり、息子と結婚してくれなどと見合い話まで押し付けられたりもした。

ただ、情報もがっちり入ってきて、別段無駄ではなかった。

ホフタは、金払いがいいってものそうだけど、役人が欲しいと思ったものは何が何でも手に入れる風習があるそうだ。

奴隷制度が盛んなのもそのせいだと言っていた。

だから、目立つ行動や恰好をする者はおらず、フードを目深く被って商売だけをしてとっとと国を抜けるのだという。

俺達は、行動も見てくれも目立つからフードをみんな被った方がいいと押し付けられた。

確かに…目立たないのはポール位なものだろう。

こんな時、モブは非常に羨ましい。


「ポールは、フード要らないんじゃないか?」

「裸まで見てくる奴がいるから全身隠しておかないと俺もまずいんだ。」

「国境を越える前に、お前とは一度勝負をしないとならないみたいだな。」

「はいはい、すぐに絡まないの。」


兄ちゃんがいつもの流れで仲裁してくると、リブラが俺の袖を気が付くか気が付かないか微妙な加減で引っ張ってきた。

奴隷チームは、俺をなんて呼んだらいいか未だにわからないらしく、用があると袖を遠慮しながら引っ張ってくる。


「どうかしたのか?リブラが俺を呼ぶなんて珍しいな。」

「…あの…ポールさまと…えっと…ご主人様?は…仲が悪い?」

「ああ、俺とポールはいっつもこんな感じだ。それこそあった時からこんな感じだな。」

「そうだな。偉そうで生意気で小さくて美形を鼻にかけてて…」

「上等だ。偉そうで脳みそ筋肉で出来てるモブにそう思われていたとはな…」

「はいはい。二人は、とっても仲がいいから、こうやって暇があるとふざけるんだよ。」

「リブラ、サフラン様から聞いたのだが、エルグラン様はポール様と恋仲らしい。だから心配する必要はない。」


おいいいいいいい!!ストラトス!お前何言っちゃってんの!?

リブラも赤面しないでくれる!?

サフランめ!!!あのへっぽこ巫女!!!

俺とポール、兄ちゃんまで後方を歩くサフランへと視線を向けるが、ヤバい空気を察知するのが早く、さっとサラの後ろへと隠れた。

すると、サラは自分が睨まれてるのかと勘違いして半泣きでオロオロし始めた。

豆腐メンタル!お前じゃない!!


「サフラン!!サラの後ろに隠れてないで出て来い!そして俺もところへすぐに来い!!飛んで来い!」

「はいいいいい!!怒らないでください!!!!!」


一人で来るのが怖いらしく、嫌がるサラを全力で引っ張って近づいてきた。

それを見ていたアジュも何事かと近づいてくる。


「サフラン…今度は何やらかしたの?」

「こいつ、俺とポールが恋仲だとかストラトスに教え込んでやがった!」

「いいえ、違いますよ!ワンピース着てるときは、恋仲って設定ですって話をしたんですよー!!」

「そういう事だったんですね。ストラトス、本当の恋仲は、エルとライルさんですからね。」

「違うよ!俺とエルだよ!」

「なになに?」


カンバーまで寄ってきちゃってなんだか本当に人数が多いとカオスだな…6人でもカオスだったのに…

カンバーが来るとカンバーが面倒みているビーストコンビも来るし、ブルーノも当然来る。

一つの塊になって歩き辛いのなんの。

隣国入ったら馬車買おうかな…


「はいはい、皆もうすぐ国境越えますから証書出して大人しくしてね。」

『はーい。』


兄ちゃんが、引率の先生みたいです。

こんなイケメンが先生だったら学校がとんでもない乙女ゲーム状態になりますね。分かります。

攻略対象は、兄ちゃんでしょ、甘えた年下男子でアジュでしょ、乙女系男子でカンバーでしょ、体育教師でイヴェコでしょ、腹黒クール系生徒会長でストラトスかな!

ポール?アイツはモブ!


下らないことを考えている間にも列は進んで、証書に通行許可の印が押された。

証書があるだけで結構簡単に入国できるもんなんだなぁーなんて吞気なことを考えていたら、ポールが近づいてきて耳打ちをしてきた。


〈エル、さっきの印を押してもらうときに、兵士がお前の顔を見て何かを書いていた。俺や他の奴の時は書かれていなかった。何か目を付けられた可能性があるから気を付けろ。〉

「分かった。」


言葉短くやり取りをして、アジュとサフランの居る所へと笑顔で歩み寄り、無邪気を装って二人に抱き着いた。


「あー、疲れちゃったなー!」

「国境越えて疲れが出ちゃった?」

「あらあら、仕方ありませんね。」

〈二人とも、そのまま聞いて。国境で兵士が書き込んでいる物の正体を掴んでくれ。俺のことが書かれた。〉

「どなたか貸し馬車をやっているところがないか聞いてまいりますわ。」

「俺も行こうかな。エルは、皆といてね。」

「わかったー。」


隠密コンビにお願いしておけば安心だな。

何かを察知したのか、ブルーノが不自然なくらい俺の周りをうろうろし始めた。

何かあったのかな?

俺は、屈んでブルーノの頭を抱きしめた。


「ブルーノも疲れちゃったかな?」

《える…このさきにまものがいる…とってもたくさん…みんなにおしえて》

「少し休憩しようか!」


国境を越えて魔物ってどういうことだよ!警備手薄にもほどがあるだろ!

俺の一声でみんなが道の端へと寄って、芝生の上に腰を下ろしていった。

奴隷チームは、状況がよくわかっていないのでオロオロしながらも4人固まって座った。

国境を越えたばかりで休憩している俺たちを見て、勘のいい商人たちは自分たちもと芝生で休憩を始めた。

恐らく俺たちの噂を聞いていた商人たちだろう。

一人の中年男性が神妙な顔をして近寄ってきた。


「私は、国境越えの村であなた達の活躍を見ていた商業団体の一つなのですが、お疲れならば何か提供いたしましょうか?」

「そうだな…情報と時間を貰いたい。」

「情報とは…先ほどお連れの方が聞きにいらしたことですか?」

「ああ。」

「それでしたら…あまりいい話ではありません。お連れの方と話をして今後をお決めになった方がよろしいですよ。」

「なるほど。」

「それで、時間とは?」

「この先に魔物の群れがいるようだ。俺たちが対処するので少々ここで休んでいて欲しい。対処が終わったら空に合図を打ち上げる。」

「分かりました。私はクラウン商団、オウと申します。何かありましたら中規模ではありますが、お役に立てるかと思います。重ね重ねの恩、返すことが出来ず心苦しく思っています故。」

「わかった。俺の名前は、エルグランだ。何かあったらよろしく頼む。」


商団に恩を売ることができたのは、かなりデカい収穫だな。

商団や農団は国を跨いで活躍しているから、情報も品物もいいものが入る。

さて、隠密コンビが戻ってきたら歩きながら相談して、魔物の群れをちょいと捻りますか!



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