カンバーは立派
とてもじゃないが、廃墟と化した集落で過ごす気にはなれず、疲れた体に鞭を打ちながら歩くことにした。
当然、火葬した亡骸を地面に埋める手伝いもしたよ。
子供一人がやるには重労働すぎるからね。
主にポールにやってもらったが、とても手馴れていた。
サラの話だと、戦場で勝った場合は死んだ兵士を丁重に弔うのだそうだ。
ポールが手馴れているのは、それだけの修羅場をくぐってきた証拠だという。
ああ、モブでも騎士だったんですね。すんごい忘れがちだけど。
歩いているうちに日が傾きだし、丁度開けた場所で一晩明かすことにした。
ほら、今日も交代で休むかと思うじゃない?
緑人族って凄いね!あっという間に植物から棘が生えて、俺たちを守るように囲ったのだ。
「便利だな。」
「これくらい、アタシ達には朝飯前よ。」
この緑人族の子供の名は、カンバー。エルフと緑人のハーフだから肌の色が中途半端なのだという。
緑人狩りに遭わなかったのは、危険を察知した母親が、カンバーを無理やりでっかい建造物の隙間に押し込んで隠した。
その隙間を塞ぐために岩を置いたが、変に嵌って出るのに時間がかかったそうだ。
母親についてはわかったが、父親はどうしたのかと思って聞いてみた。
父親であるエルフは、一つの土地に腰を据えることのない種族で、緑人族の村にも一年ほどしか居なかったが、その間にちゃっかり緑人族であるカンバーの母に手を出したのだ。
今回の緑人族狩りでは、カンバーの母親も当然捕まった。
カンバーは、仲間を救ってほしいが、やっぱり母親を一番に助けてほしいと懇願してきた。
助けるのは当然だが、一応母親の容姿が分かった方がいいと思い、特徴を聞いて俺は自分の想像力の限界を知ることになった。
身長が2mくらいの大柄で真緑の肌。髪は短くてモヒカン。後ろ髪だけが長くて細い三つ編みをしている。
それと、肩から胸にかけて親である証のタトゥーがあるそうだ。
腕っぷしも強くて、大きな野獣も素手で一撃なんだとか。
何度想像しても怪物しか出てこないんだが…人の親を悪くいう趣味はないので口を閉じて頷くだけだった。
この世界には沢山の種族がいるから、美的感覚とかも様々だけど…カンバーの父ちゃんスゲーな。
カンバーに色々話を聞きながら、鞄から食料を出して皆で手早く食事を済ませた。
食事は、乾燥させた獣の肉と俺特性の乾パン。
余力があるときは、その場で狩りをして食事を作るが、色々ありすぎて疲れたりすると大概この食事になる。
疲労困憊してるのに食事も質素だとテンションが下がる一方だ。
《える、おれ、おいしいのとってこようか?》
「なんだ、この犬は話せる犬なのか…変わってる奴には変わってるペットが寄ってくるんだな。」
「俺が変わってる奴ならお前もだ。
ブルーノ、お前も疲れてるだろうから無理しないでいいよ。こっちにおいで。」
ブルーノが、くぅっと可愛く鼻を鳴らしながら俺にすり寄ってきた。
いつも寝るときはブルーノが側にいないと落ち着かないんだよな…よくできたいい子ちゃんです!
さて、皆思い思い寝る体制に入ってるから、俺も目を閉じながら明日のことでも考えるかな。
ブルーノとカンバーの話だと順調にいけば、明日は国境近くの村に着けるそうだ。
そうなるとまた変装しなくてはならない。
今回は、目立つメンバーが増えたから考えないと…やっぱワンピースを着せてみるか。
俺は…どうするかな…マントの巻き方を変えて頭巾でもするとしよう。
うん…何とかなりそう…おやすみなさい。
おはようございます。朝日がクソ眩しいです。
おかしいですね。俺とブルーノの視界には綺麗な緑が下に広がり、周りは青白い空。
なんだろうなー…木の上に寝たつもりはなかったんだが。
おかげで虫に喰われなかったけどさ!重力魔法なかったら降りられないよ!
「エル―!なんでそんなとこにいるんだー!?バカなのか―?寝相悪すぎるだろ!」
「バカはお前だ!!寝相悪い範疇越えてるだろうが!ってかここにいる理由を俺が聞きたいわい!!」
「エル―!!森がお前を守ったって言ってる!」
俺は何から守られたんだよ…寝てる間にそんな危機が迫ってたか?
意味が分からず首を傾げているとブルーノが頬を舐めてきた。
《える、このもりにも、すかれてる》
「俺は大自然と添い遂げる気はないぞ!…うわっ!!!!」
一本の大きい木だと思っていたが、いきなり木が裂けるように二本に分かれていき、強制的に地上へと降ろされた。
木を見ると少し枝や葉が萎れている。
おいおい、俺と添い遂げたかったのか!?大自然、別の意味で怖い!!
「森が悲しんでる…エル、何言ったんだよ。」
「大自然を振ってやったんだよ。」
「森と恋愛とかエルは規模が違うな。結婚してやれよ。」
「ポール、お前がしろよ。」
「エル、森から〈ポールは御免なさい〉って言ってる。」
『ぶっ!あはははははははは!!』
「お前、モテないなー!!」
「お前は人以外からもモテるなー」
「はいはい、二人ともやめて支度するよ。」
兄ちゃん、俺たちを止めておきながら笑いが漏れてますよ。
確かにポールがフラれるとか面白すぎる。
当のポールは、眉間に皺が寄ったまま険しい顔で支度をし始めた。
「カンバー、村に向かう前にこれを着てくれ。それと、手と足に包帯を巻いてくれ。」
「このヒラヒラの布切れ一枚だけか?アタシ、着たことないんだけど。」
「サフラン、手伝ってやってくれ。」
「了解しましたわ!ばっちり可愛く仕上げますよ!」
サフラン…侍女の仕事が楽しくて仕方がないって旅路で言ってたけど、本当に板についてきたな。
俺もマントを端々縫って簡易的なフードマントに改造した。
スキルって凄いね!あっという間だよ!
「きゃぁあああああ!!」
「なんだ?なんだ?」
「エル!この子のおまたに…私たちにはないものが!!エルのと一緒のが!」
「その表現やめろ!!」
赤面しながら人の股間を思い出すんじゃない!ってか、俺のときはそんな反応しなかっただろうが!!
騒ぐサフランを押しのけて、キョトンッとしているカンバーを見た。
うん!ノーパンだね!俺よりも小さいのに、俺よりも立派なもんがブラブラしてるね!
「お前、女じゃなかったのか!?」
「へ?何言ってんだよ…女とか男とかよくわかんないこと言うな。」
「緑人族は、男女の区別があまりつかないのか?」
「男とか女とかない。アタシたちは、皆子供を産めるし、子供を作れる。」
「両性かよ!!!スゲーな!……お前の母親…想像が間違いでなかったことをホッとすると共に、お前の父親の感性に感服する。」
「カンバー…そんな凶悪なもんぶら下げてんだから、一人称アタシは変じゃない?」
荷物から下着を取り出して、くるくる回しながらアジュが割って入ってきた。
やっぱそうだよな。カンバーの股間のものは、”カンバーちゃん”じゃなくて”カンバーさん”だよな。
「そうなのか?ママが、アタシって言うようにしろって言うから…それじゃぁ、僕?」
「「それがいいです!!」」
女性陣は今日も元気なようです。
鼻息が荒く、獰猛な獣のようですよ、お嬢さんたち。
アジュが、汚いものを見るような眼で二人を見て、無言でカンバーに下着を渡した。
「早く履いてワンピース着なよ。じゃないとこの変態女共に喰われちゃうよ?」
「そんなことしません!」
「そうですよ!カンバーは、大事に大事に接します!」
言ってることと表情があってない。
埒が明かない状態で居たら兄ちゃんがとっととカンバーの支度を整えた。
さて、カンバーはどう変身するかな…




