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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第1章 総ての始まり
35/82

兄ちゃんはスパダリ

ジャンの父親が気を利かせてくれたのか、朝にしては豪勢な食事をとり、部屋を後にするとロビーでそわそわと落ち着きがないジャンとイアンが待っていた。


「ジャン、イアン待たせてしまったかしら?」

「いや!大丈夫だから!」

「エミル、さっきは有難う!」


バカだなぁ、おじさんが真相を言わないで誤魔化されてくれたのに、従業員の誰かに聞かれたら俺が助けたのまる分かりになっちまう。

二人に向かって内緒にするよう、唇に人差し指を当てて苦笑した。


「有難うじゃない。そういうのは黙って受け止めておくもの。」

「ジャン、イアン。本日はお嬢様の我が儘に付き合ってくださるという事で感謝します。」

「「いえ!そんな!」」


兄ちゃんの執事感が結構定着したんじゃないかな?

ってか、眼鏡の効果半端ないな。

美形眼鏡って知的な感じを醸し出すし、びしっとした感じだ。

兄ちゃんに声を掛けられて、二人とも萎縮しちゃってるよ。


「今日は、ランと黒。ライとアンジュと白が行動を共にしてくれ…るかしら?」


やばいやばい。うっかり自が出るところだった。


「お嬢様、流石に護衛を付けないで行動されますと危険です。それに、すぐに無茶をされますからお目付け役として黒か私を付けた方がよろしいかと思います。」

「俺もライの意見に賛成だ。」

「いや、ジャンとイアンというこの村を知り尽くしている案内人がいるんだから大丈夫。安心してほしい。ほら、ブルーノもいるし。」

「「笑顔が嘘くさいので却下。」」

「ぐっ!」


くっそー!村にいた頃みたいに遊び倒せると思ったのに!

ブルーノだったら俺の行動許していろいろして文句もでない予定だったのになー…


「それじゃ、白さんに護衛して貰おうよ。」

「それもそうね。一応護衛だもの。」

「ダメです。白に、お嬢様の行動を止めることなど出来ません。」


ジャンが、名案だとばかりに発言するも兄ちゃんに即効却下されて凹んでいた。

サラは、鎧をガッチャガッチャ煩い位にならして頷いている。

つっかえないな!

奥歯を噛みしめながら鋭い視線をサラに向けると、怯えてポールの後ろへ隠れた。

豆腐メンタルだからか逃げだけは早いな。


「それじゃ、ランと黒。アンジュと白で行動して頂戴。ライは私と一緒に来てもらいます。」

「はい、お嬢様。」


俺の側に眩しい笑顔でやってくる兄ちゃんに眩暈を覚えた。

文句なしにかっこいいです。

サラが、無言で興奮してるのが伝わってきます。

動きがおかしいから!挙動不審みたいに縦横無尽に揺れてるから!

それを見ていたサフランが何故か凶悪な顔で舌打ちしたよ!

この二人、無言なのに何でここまで騒がしいんだ!


「では、各自行動して。それと昨日のようなことがないようにお願いね。」


今日は、兄ちゃんを俺が守る!

村で過ごした以来だな…女豹共から兄ちゃんを守るの。



宿から出て、とりあえず他愛のない話しながら昨日通った広場へと向かった。


「この村でここが名物ってところあるかしら?」

「そうだな…」

「ジャン、最近できたあのお菓子屋はどうだ?」

「ああ!あそこならお菓子も美味しいし、エミルの好きなミルクティーも出るよ。」

「お菓子屋でミルクティーも出るのね。都みたいだわ。」


あ、都でそんなとこ入ってる暇なかったから入ったことないけど。

サラに話聞いといてよかった。

都でも菓子屋でお茶を嗜むのは最近の流行らしいからな。

優雅です事。この村も都もさ。


「ここは、外でもお茶が飲めるのね。素敵だわ。」


赤レンガ造りでオープンカフェとかまたまたハイセンスだね。

中に入ると店内も茶色とピンクで可愛く飾られている。

これ、女じゃないと入れない感じじゃないか?

ジャンが、店員と知り合いのようでオープンカフェスペースへと案内してくれた。

広場にある噴水が一望できるので素敵です。

当たり前のように、兄ちゃんが椅子を引いてくれたので、気取って微笑みを浮かべながら腰を下ろした。


「ライ、有難う。」

「お礼は不要ですよ?」


兄ちゃんンンンンン!!!!!かっこいいいいいいいいいいい!!!

素敵な笑顔と素敵ヴォイスにノックアウトされそうだった。危険です。

店内や周りを見ると鼻血を垂らしていたり、テーブルをバンバン叩いて悶えているお嬢さんたちがいっぱいです。

鼻血とか涎とか涙とかお嬢さんたち、早く拭いて!

俺の女性像がますます崩れていくから!!!


「どうしました?」

「ライさん…ちょっとそのキラキラを抑えようか…」

「村の女たちがおかしくなってるから…」

「そうですか?私の周りではこれが当たり前なので分からなかったです。」


ンンンンンンンン!!イケメン様ぁぁああああああ!!

俺まで両手で顔を覆って悶えちゃったじゃないか!!

俺も成長したら兄ちゃんみたいになれるだろうか!否!無理!

こんなスパダリなれねーよ!


「エミル?大丈夫?まさか、エミルまでライさんにやられてないよね?」

「ライさん相手だったら勝ち目ないな。」

「やられていますけど、やられてはいませんわ!」

「「どっち!?」」

「とにかく、お菓子を食べてお茶を頂いたら出ましょう!」


軽い咳払いをしてメニューへ目を向けて誤魔化す。

早くこの場を去らねば!

兄ちゃんが大変なことになってしまう。

それに、執事ポジだから立ちっぱなしだし。


〈エル、ゆっくり楽しんで大丈夫だからね。〉


兄ちゃんンン!!俺、抱かれてもいいって思っちゃうよ!!!気遣いマジ半端ない!

俺の膝にナプキンを掛けると同時に、周りに気付かれない様小声で囁いてきた。

感激に涙ぐみそう!この人、俺の自慢の兄ちゃんなんですって叫びそう!

一人で脳内悶絶フェスティバルを開催している間に、兄ちゃん達が注文していた。

ちゃんと俺の食べたかったケーキをチョイスしてくれるんだから素晴らしいです。


「お嬢様、何やら考え込んでいらしたのでこちらで決めてしまいましたが、他のものも食べてみますか?」

「大丈夫。そんなに食べられないし、ライの選んだものはちゃんと私好みのものだから。」

「本当に婚約者が黒でよかったな。」

「ああ。本当にそう思うよ。」


俺は兄ちゃんにすればよかったって過去に戻れるなら俺自身に言いたいけどな。

ポールだったら片っ端から頼んで好きなの食えで終了しそうだ。

それで、食いきれなかった分を後からポールが食うってパターンだな。

森を歩いていた時もそうだし。


ポールのことを考え出したら良くない答えにたどり着きそうだったので、考えるのをやめ、次はどこに行くかとか、隣の村の話とかジャンとイアンと相談した。

あれこれ話している間にお菓子と飲み物が運ばれてきた。

俺は、兄ちゃんチョイスのクリームと果物たっぷりケーキを目の前にして生唾を飲み込んだ。

こんな夢のようなケーキ見たことない!

ってかケーキをこの世界で見たことがない!

きっとフワフワスポンジで甘々クリームなんだろうなー。


「いっただっきまーす!あむぅっ!」


大き目に切ったケーキを口いっぱいに放り込んで咀嚼した。

うん!ぱっさぱさ!!!

クリームは甘いけど、しつこい甘さ。

歯が溶けそうなくらい甘い!スポンジもクリームも甘いから果物がものすごく酸っぱく感じる。


「お嬢様、いかがいたしました?」

「ふにゅぅううう…」


口の中が甘さのテロにあって上手くしゃべれませんよ!

兄ちゃんに訴えかけるように見上げるも、口元を抑えながら顔を背けて肩を震わせています。

笑ってるのか!?俺が甘味で悶え苦しみそうなのを堪えているのを笑ってるのか!?

目の前の二人も同じようにして俺を見ません!

酷い!さては、くっそ甘いのを知っていたな!嵌められた…なんてことだ!

ホトホト涙を零しながら口の周りについているクリームをナプキンでふき取り、水を一気飲みした。


「ライもジャンもイアンも酷い…笑うなんて…」

「「「違う!違う!」」」


くっ!認めることすらしないとは…いつかリベンジしてやる!

スパダリ=スーパーダーリンです。

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