表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第1章 総ての始まり
10/82

復活は孤独?

改稿済みです。

見回すと涙が出てきた。


マジで誰も居ないし、ここどこだよ。


一人でリハビリとか…お年寄りにだってリハビリ施設でお仲間とともになかよく頑張るんだよ?


濡れてまとわりついていた布を捲る為に、上体を起こして布へ視線を何気なくうつした。


これって…ポールのマントじゃないか…

血塗れ土まみれだったから、濡れてグッチャぐちゃになって汚れが溶けだし、着ていた服にもシミが付いてなんだか汚らしい。

洗濯するとかなかったのか?

新しいもんに変えるとかさぁ…俺ってあんまり好かれてない?


まるで神殿のように何もなく、神を象ったのであろうか。壁際に彫刻が整列しているただただ広い空間。

声を出したら響きそうだが、残念な事に発声できない。

呼ぶことが出来たら着替えが欲しいなぁ…この際、毛布でもいい。

素肌に毛布…背徳の香りがするな。


この場所がどんなところかわからないので、ポールのマントを置いていくのも心苦しいから持っていくことにした。

水分吸いまくってるしデカいから重いけど、状況わからないのに魔法は使えない。


ボロ布って感じだから少し引き摺っても問題ないよな!


布のせいもあるだろうが、足の裏にトリモチが付いてるかのように足が思うように進まない。

仮死状態だったからなのか、まだ魔力が回復してないのか疑問が浮かぶ。

霞みがちだった視界が回復してくると、広間の終わりを告げるかのごとく構えているアーチ状の出入口を見つけた。


村じゃないことは確かだな。

うちの村にこんなデカい建造物ないからね!田舎だからね!

それにしても人に合わないなぁー。

喉も乾いたし、なんかないかな?


ね。


探さなくても魔法で出せるじゃないか!!

周りを見ても人がいないし、移動しないでここで飲めば見つからなくて済む!!

水魔法なら言葉のなくても問題なしなはず。


手の平に魔力を集中させて水を出した。

美味しい冷たい水を手の平にいっぱい出したつもりだった。


手がバッチイ上に、ちょびっとしか水を出せなかった。

つまり、手のひらにドロ水少々。

使えないにも程があるだろ!!

いくら喉が乾いててもこれは無理だ。

田舎の綺麗な水で育った美少年が、泥水啜るとか試練の枠超えてるだろ。


諦めて汚いマントを引き摺りながら、人と水を探しに歩き出した。

布の擦れる音と歩く度にヒタヒタと鳴る足音だけを聞いていると、無心になる事は出来ず、頭の中で今の状況に至った可能性を考えてしまう。


考えれば考えるほど切ないな。

俺、結構頑張ったんだけど…

普通は、ハッピー的な賑やかで人に囲まれた中で蘇生しない?

ナニコレ。


長く広めの廊下を歩き続けると水の音が聞こえてきた。

音に誘われるように進むと、壁に備え付けられていた龍の像の口から水が滴り落ち、花を象った白磁器へと溜まっていた。


龍は、あの一件で嫌いだけど水は有り難く頂戴します!!


誰も居ないのをいい事に、磁器に溜まった綺麗であろう水で手を洗い、口から細く落ちていく水を手で受けて乾いた喉を潤した。


「はー…生き返る…」


普通の水をだと思うが、今迄で飲んだ水の中でも一番美味しかった。

声が出せない原因っぽかった、喉に張り付いていたようなモノも水を飲んだら嘘のように無くなった。


「あーあーあー、まーまーまー。

いやー、すっかり元の美声に戻ったなー。」


したこと無かった発声練習の真似事をしながら、笑顔で見え出した光へと歩き出した。



-ムイニュ~ー


何ということでしょう!

美少年にあるまじきアクシデント!!

なんなんだよ、これは!


俺の行く手を阻むように見えない何かが廊下を塞いでいた。

見えなかったんだよ。

見えなかったら先に進むだろ?

違和感は若干あったけど、はじめはクモの巣が引っ掛かっているのかと思って気にしなかったが、進めば進むほど顔が歪んでいく。

そうです!前の世界でいうところの大きなラップ!

台所や食卓で大活躍するものが、何という事でしょう!

この世界では、悪戯なのか廊下を塞いでいます。

世界が違えば用途も違う!


美少年が芸人のような顔に…


「むおおお!!」


ラップ擬きで口を塞がれているのでくぐもった声を上げて、屈辱的な悪戯に耐えきれず、思いっきり破るようにマントを振り回した。

するとラップ擬きが弾けるように破れたではないか。

つまらないことするやつがいたもんだ。

この建物の所有者に文句を言わねば気が済まないと憤りながら、差し込む光の道を抜けた。



生き返ってから驚きと戸惑いでいっぱいです。


建物の出入り口付近で人の話し声がするので立ち止まって、顔だけ出してみた。

離れた場所に3m近くありそうな騎士、ミルクティーブラウンのロングヘア―の女性が俺に背を向ける形で立っていた。

二人の合間を覗くと、人相が変わるほど目の下に隈を作ってる迫力ある魔王顔の兄ちゃんと同じように目の下に隈を作っているがモブ顔なのであまり迫力のないポールが立っていた。


「そこをどけ!弟に会うのに何故邪魔をする!」

「会わせることはできません!何度も申し上げているではないですか!」

「ポール、貴様が居ながら何故連れてきた…同じ龍騎士として情けない。これ以上我々の顔に泥を塗るな。」


聞こえてきた会話で俺の前にいるのは女性二人だとわかった。

あんなデカい女性って見たことないな。

何やら出て行ってはよくない雰囲気だったので、こそこそ柱に隠れて様子を伺うことにした。

いや、二人には会いたいんだけど、空気ってあるじゃん?

空気の読める男なんです。


「貴方の弟様は、原因不明の氷魔法にかかっています。

火魔法でも私の聖魔法でも解けない氷なんて初めてです。

それに、あんな小さな体で報告にあった魔法を使うというのが本当であれば恐ろしいことです!

氷が解けて蘇生したとしても人格がどうなっているかわかりません…諦めてください!」

「諦めろだと?…よくもそんなことが言えたものだな!巫女であるのに、民にいうセリフか!!」

「やめないか!巫女様は国を第一に考えている!これ以上愚弄するのであれば…」


氷…そうか、それが解けたからビッチャビチャだったんだな。

つか、覚えてる限りで考えてもあんな魔法を俺みたいな子供が使ったなんて十分チートかもなぁ…

のんびり聞いていたが、女騎士が剣に手をかけたので流石に焦って駆けだした。


「ちょっと!ちょっと!おあああああああああ!!!」


うん。かっこよく決めたかったんだ…

しかし、ポールのモブ的呪いなのか律儀に持っていた、デカい上に湿ってるマントが足に思いっきり絡みついて、勢いに任せてゴロゴロと女騎士へと転がりぶつかった。

それだけでも最悪だったのに、女性を人生はじめて地面に押し倒してしまった。


「あ!すいません!事故なんです!喧嘩になっちゃいそうだなって、止めたかっただけなんです!お怪我はないですか?」


龍の柄がついている鎧に覆われた体から飛び退き、動揺のあまり赤面しながら、あわあわとみっともなく言い訳をし、起こすために女騎士の大きな手を取ったが反応がない。

周りを見渡してもみんな反応がない。

やだ!なにこれ!スベッた感半端ないじゃないか!

全部ポールのせいだ!


「おい!モブ騎士!何とかしろよ!つか、お前のくそデカいマントを持ってきてやった結果これだぞ!」


噛みつくように捲し立てるが、当の本人は無表情のまま涙を大量に流していた。


「何泣いてんだよ…無動作で泣くとか怖いから!」

「エル!!!!」


突然、風が吹いたかと思ったら、懐かしい香りと感触に包まれて息をのんだ。

頬にぽたぽたと温かい滴が落ちてくる。

先ほどまで恐ろしい顔をしていた兄ちゃんが、俺を抱きしめて震えて泣いていた。

天使のような兄ちゃんを魔王モードにさせるなんて悪い弟だね…俺は。

海よりも深く反省して、背中に手をまわして抱きしめ返した。


「兄ちゃん…ごめんね?」

「………許さないよ」


地を這うような魔王ボイスが耳元で囁かれた。

生き返ったのに早速死亡フラグですか?


「アジュールもご立腹だから覚悟した方がいいよ…」


うひゃ!

お尻の死亡フラグだったんですか!?

無意識に片手を自分の尻にあてて生唾を飲み込んだ。

読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ