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村長さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第1章 総ての始まり
1/82

はじまりの朝

更に改稿しました。


 視界なのか何なのか分からないが、白い景色が広がっていて、体の感覚も何もない。

 上下左右の間隔もなく、只々白い景色。

 どれくらいこの景色を眺めていたか分からないが、飽きるという感覚もない。

 すると、男性にしては少し高めの声が聞こえてきた。

 聞こえたという表現があっているかもわからないが…




 — 君は、次に生きるならどんな風に生きたい?


 《そうだな…安定した楽な職について…のんびり笑って過ごしたい》


 — 具体的には?


 《男で…顔も背格好も並で…家柄も並よりチョイいいくらい…責任のない次男くらいかな》


 — それじゃ、つまらなくない?せめて生きてきた世界とは違う世界にしようか?


 《世界が変わっても普通が1番いい。波瀾万丈な人生は懲りごりだ》


 — ふむ…資料を見るに、君の人生は、波瀾万丈だったね。なら、知識と器用に色々と熟していたスキルは、そのまま受け継いでみたらどうかな?

 異世界っていう新しい環境でも生きていきやすくなるんじゃないかな? 


 《んじゃ、それでお願いします。次こそは、目立たず普通に幸せになりたいな…》


 — ん~…検索してみたら小さな村の村長の次男坊があるけど…これで良さそうだね!!


 ―カチリー


 — それでは…新しい生を楽しんで…

 うああっ!ごっめ~ん!!押そうと思ってたリストの隣のボタン押しちゃったみたい!

 …ってまぁ、いいか!男は、少しくらいトラブルがあっても気にしないよね……あ、次男は次男だから!


 《おい!何言ってんだよ!!トラブルってなんだよ!今のリアクション的に少しの範疇越えてただろ!なに次男だけ抜粋しましたってなってんだよ!他が重要なんだろうが!コラ!なにフェードアウトしてんだよ!おぃぃぃいいいいいいいい!!》




 ~~~~~~~~~~~~~~~~


 「がぁぁぁぁっ!!」

 

 野獣の様な大声を張り上げて、ベッドから跳ね起きると額や背中に汗が滲んでいた。

 また、あの悪夢に近い夢。いや、悪夢だな。

 俺は、あの曖昧なよく分からない空間でのやり取りの後、小さな村の村長の次男坊として生を受けた。

 俺の要望は、平凡。なのに、実際は村でも評判の美少年…

 兄も弟も美形。まず大元の両親が美形だからね!!

 美形というだけで人生、平々凡々とはいかないことをおそらく前世で経験しているのだろう…

 前世の記憶は無いが、知識がある。知識が俺にそう伝えてる気がする。


 「エル?凄い声がしたけど、大丈夫かい?」


 兄のライルが、心配そうに眉を下げ、何の飾り気もないドアから顔を覗かせている。

 優しい自慢の兄で、3歳違い。

 現在この世界でいう成人したばかりのピチピチの15歳。

 酒も飲めるし、結婚もできる…で・す・が!

 まぁ、うちの兄ちゃんはどちらも未経験です。俺はそう信じている。

 だって、この村の女は肉食系だからね!正直引く!!酒飲んで酔っ払って隙なんて見せたら、ケツの毛まで剥かれるに違いない。


 「エル?エルグラン?」

 「あ、兄さん…心配かけてごめん。ちょっと嫌な夢を見たものだから…」


 金髪イケメンのサファイアの様な瞳が、俺の顔を映しているのに気がつき、慌てて取り繕った。

 絵本や夢物語に出てきそうな王子様な兄ちゃんを心配させる悪い弟の俺は、苦笑を浮かべながら安心させようと兄ちゃんの手を取って部屋を後にした。

 仲がよすぎるって?当たり前だろ!!王子様キャラと兄弟だぞ!仲違いすることなんてしたら罰が当たる!あ、でも兄弟喧嘩は普通にするか。


 「ライル兄さん、エル君、おはよう!!今日は、なにして遊ぶ?」


 兄ちゃんと仲良くリビングに入ると弟のアジュールが、朝日に照らされた朝露のようにキラキラした笑顔を巻き散らかしながら、落ち着きなく駆け寄ってきた。

 毎朝毎朝同じことの繰り返しである。


 「毎朝言っているが、兄さんは父さんの手伝い。俺は、冒険者ギルドへ手伝いに行かなければならない。アジュだって勉強があるじゃないか。」

 「イヤだ!!毎日勉強ばっかり!僕は、三男なんだから好きなことしたって問題ないでしょ!」


 バカだなぁ。三男だから勉強して将来選択できる職種幅を広げるんじゃないか…などと考えていると背後からドサッと何かが床に落ちる音が聞こえた。


 「なんてことなの…アジュちゃんが…反抗期…」


 感情豊かでオーバーリアクションな母が、廊下で泣き崩れている。

 うん、これ毎朝だからね!さすがに兄ちゃんは、爽やかな笑顔で席に着き、用意されたいたモーニングを楽しんでいる。

 兄ちゃんは要領がいいな。

 俺もそろそろ付き合わないでスマートにテーブルに着きたいんだけど…

 困った顔で兄へ視線を向けると口パクで指示された。


 〈付き合ってあげて〉


 いやぁぁあああ!めんどくさい!!毎朝毎朝めんどくさい!!しかし、終わらせる為には俺が動かなくてはならない!

 …って、父さんがいるじゃないか!


 「母さん、父さんに慰めてもらいなよ。」

 「は?ママは、エル君のそばにいるのよ?パパは、書斎よ?」


 おい!さっきまでコーヒー飲んでた父親がイリュージョンしてるぞ!居ましたよね!?俺と兄ちゃんがリビングに入って来た時には居たよね!?なに、一目散に逃げてんだよ!!

 肩を落としながらチラッと弟を見ると大きな目を宝石の様にキラキラさせて期待して見返してくる。

 母へ視線を向けると弟と同じ目と表情で待っている。本当にこの2人はソックリだな。

 観念して溜め息を吐き、母を片手に抱き、自分もといそいそとそばに寄ってきた弟の小さい肩を抱き寄せる。


 「アジュール、お前は頭のいい子なんだから母さんを困らせちゃダメだよ。母さんもアジュールの母さんなんだからしっかりしなくちゃね。二人共寂しい思いをさせてごめんね。今日も1日頑張って家を守ってください。」

 「「はい!エル君大好き!!」」


 昼間、父さんも兄さんも俺も居ないから、寂しさのあまりこの茶番劇を2人は共謀して、飽きもせずに毎朝仕掛けてくる。

 普通の家庭からどんどんかけ離れてる気がするなぁ。旅の一座のようだ。



 朝の恒例行事と毎日お決まりメニューの朝食を済ませると、使い慣れた肩掛け鞄に必要最低限の物を詰めて冒険者ギルドへと向かった。

 澄んだ空気と眩しい朝日。土を均しただけの道。色々な素材で作られた建物。見慣れたはずなのに、どこか慣れなくて胸が毎朝高鳴る。

 朝の村の景色は大好きだ。

 小さな村だから住人が少なくて知った人しかいない道を挨拶しながら歩き、目的地である冒険者ギルドへ到着した。


 俺の将来の夢は、無難に冒険者ギルドの職員。

 この世界では、比較的収入も安定している。

 家を継ぐ予定のない次男坊の俺にはうってつけの職業と言える。

 将来のため、父に口利きをしてもらって冒険者ギルドのお手伝いをさせて貰いながら、業務内容等を勉強させてもらっている。

 冒険者になるには、11歳以上。職員になるには、ランクがCランク以上15歳以上が必須条件なので、12歳の俺は冒険者になることができるのだが…ほら、母さんも弟もあんな甘えん坊だし、兄ちゃん心配症だから反対されちゃってね…父さんから妥協案としてお手伝いが許されたんです。


 反対されたからって夢を諦めるわけにもいかない。

 15歳になったら冒険者になることを考えてんだよね。俺が、15になったら弟のアジュは、13歳だから少しは落ち着くだろうし、兄ちゃんも18歳だから立派な次期村長になっているはず!

 そうなれば、仕事に就いていない次男坊ってのは、格好がつかないから多少危険がある冒険者職でも許してくれると思うんだよね。 


 それに、前世と違う世界に来たんだから世界中の色んなものを見て回りたい。

 でも、ずっと冒険者として回り続けるのは、体力的にも精神的にも無理があるだろうから、人生設計的にこの村の冒険者ギルド職員に納まるのがベストなんだよね。

 家族と離れたままで生活するってのも俺は望まない。

 俺は、家族が大好きなんです。



読んで頂きありがとうございました。感謝しかないです。

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