リナリア1
何事もなく過ぎていく日常、妖、霊、精霊が否定されたこの世界に神様が作った最後の楽園
[幻想の森 リナリア] 最後の幻想や空想が存在している世界
しかし、リナリアに起き始めた異変は最後の楽園の歯車を狂わせていく
1人の少女を中心に、仲間達は幻想をかけた選択と運命の物語に巻き込まれていく
「初めまして、秋山美空さん」
もしも、人見知りの人に対して面識のない人が話しかけたら...
それも影の中から急に現れて話しかけられたらどうなると思うだろうか
それは決してどちらも悪くなかった、話しかけた側からすれば挨拶をしに来ただけ、
話しかけられた側は驚いて逃げただけ、それだけの事がまさかそのすぐ後にそこで
殺し合いに近い勢いの口喧嘩が起こる原因になるとは普通思わないだろう。
美空と呼ばれた少女は極度の人見知りでほとんど話すことがないから、15歳になるのに
マトモに話せる人はほとんどおらず、唯一の友達と呼べるのは近くにすんでいるさとり妖怪の
音無さとり[おとなし さとり]だけだ。
この出来事の不運だったところは、偶然にもさとりが家に遊びに来ていたことだろう
美空の家は神社で美空は巫女だが、この神社に人が来ることはあまりないし、
参拝客は、人見知りの美空よりもさとりの方が会った事がある人の方が多いだろう
家の中に美空が駆け込むと、そこには縁側でお茶を飲んでいるさとりがいた、
さとりは駆け込んできた美空のほうを見て問いかける
「大丈夫?また誰かに話しかけられたの?」
美空の心の中を読んでいないのに何が起きたのかが分かるのはそれが初めてでは無いからだ
しかしいつもと違うのはここからだ、さとりは美空の心の中を読むと急に立ち上がり走り出した
さとりが向かったのは美空が誰かに話しかけられた場所、そして、まだそこにいる女性に怒鳴り付ける
「御影、今まで何をしていたの!それに、あの子に話しかけたらああなるって分かってたでしょう!」
美空がその場所に戻って来たとき、そこには殺さんばかりの勢いで怒鳴り付けるさとりと、
嘘くさい笑顔で嫌味を言い返す御影と呼ばれていた女性がいた
今にも喧嘩を始めそうな2人を見て、美空はさとりの服の袖を掴み首を横にふる
さとりは美空の心の中を読み取るとため息をつき、
「喧嘩は良くない、か...まあ会って早々に喧嘩をするのは確かに良くないわね。」
さとりが肩の力を抜くのを見ると御影も肩の力を抜き、さとりに話しかける
「久しぶりね、さとり。ちょっと頼み事があって来たのよ、もちろん戦う気は無いわ。」
先ほどまでの重い空気が変わり、さとりは御影の心を読み始める
数分経った頃だろうか、さとりは心を読み始めてから今まで反応は無かったが急に口を開けて
確かめるように御影に対して質問をする
「御影、あなたは一体何者なの?あなたの心の中はいつ見ても何もない...それに私に何をさせたいの?
あなたの心の中を読み取れないのは前に会った時から、私の能力はあなたに通じない事は知ってるでしょ」
この会話を聞いていて、美空は何がなんなのかほとんどわかっていなかった
さとりの能力は、勘で僅かな情報から大量の知識を理解することができる
「第六感を理解することができる」能力と、
さとり妖怪特有の、相手の思考を読み取る事ができる「相手を理解する事ができる」能力
美空自身は、さとりの「相手を理解する事ができる」能力のお陰で仲良くなる事が出来たし、
今までさとりが美空自身の心の中を読み取れない事はなかった
そのさとりが、初めて会ってからずっとお世話になってきた能力が効かないと言っているのだ
元々、誰とも話さないせいで美空は何処か浮世離れしていたので常識があまり通じなかったし、
今の会話の本質を理解出来るほど頭の回転が速いわけでもないから、美空が理解できないのは
どちらかと言うとそこまで問題は無かったが、今の会話を要約すると
御影はさとりにも理解する事ができない存在と言うことになる
御影は何者なのだろうか?美空の頭の中はそれを理解しようと考えるが、全く何も分からない
モヤモヤした気持ちを抱えながら、美空は2人の話を聞くことしか出来なかった
さとりは内心で頭を抱えたい気持ちになっていた、「御影の心の中を読み取る事は出来なかった。」
確かにさとりが言ったその言葉に嘘はない、しかし、さとりは御影の心の中を読み取ろうとした時に
もう1つの「第六感を理解する事ができる」能力で、御影の存在に対しての1つの答えを出していた
自分の能力である、「相手を理解する事ができる」能力は有機物、無機物を問わず心の中を読み取れる
その能力が効かないなら、相手は恐らく何者でもないとさとりの第六感は告げていた
その答えが合っているのかはまだ分からない、しかし、さとりは何事もない様に御影と話を続ける
それはさとりが御影の事を、能力を使わずに理解しようとしているからだとは、
まださとり自身は気づいていない、今この郷は暦で言う10月上旬、この郷に幻想の花が咲くのは
もう少しあとの事、リナリアの花が咲くときにこの郷がどうなっているのかは分からない
この郷の幻想をかけた異変が始まるまでのカウントダウンはもうすでに始まっているのだから
この小説を読んでいただいて誠にありがとうございます
初めての投稿作品ですが、少しでも良いものに出来たらと思っています
一話自体は短めですが、それなりのペースで更新していこうと思うので
どうかよろしくお願いします