真夜中に
最近夫は私より少し早く寝室に入る。疲れているのもあるが、よほど面白いテレビ番組でもない限り布団に寝っ転がってスマホでネットサーフィン(最近この言葉も聞かないね)したり、動画を見たりしながらウトウトするのが気持ちいいらしい。私は自分の書いた過去作の直しをしたり、今後ネタに使えそうなことをパソコンにメモ書きしたりしている。
でも、やっぱり布団の中にいるから、夫のほうが寝付くのは早い。夫のいびきが聞こえるころに、私は起こさないように気を付けながら、そうっと寝室に入っていく。それでも悲しいかな、夫婦共に年を取るとトイレが近いものだから、大抵そのタイミングが夫のトイレタイムとなってしまう。音をたてないようにしているつもりでも、気配で目が覚めるのだろう。
「ごめん。起こした?」
「いや、トイレ」
そんな会話もよくあることだ。いつものように夫がトイレに行く音を聞きながら布団にもぐって目を閉じる。水の音を聞いて、ああ、もうすぐ戻るな。なんて考えていたら。
ズシリ。夫の気配と共に体が重くなる。夫の体が自分の上に乗ったのが分かった。
おい、こら! いくらいい年こいたおっさんとおばちゃんでも、この話は「十八禁」に指定されてないぞとお怒りの方。ご心配なく。夫からはその手の動きもなければ、睦言もない。そもそも私の目前にあるのは夫の顔ではなく、後頭部だ。夫は私を敷布団のように下に敷いて、仰向けになったのだ。
何事だと思っていると、夫はむっくりと起き上り、甲高い声を出して言った。
「ゆーたい、りだつ~ぅ」
『ざ・○っち』の古いネタかい! こんな真夜中、トイレの帰りに!
まさしく、寝ても覚めても人を笑わせることに全神経を使っている夫。おかげで爆笑させられ、私の目がさえてしまったのは言うまでもない。
妄想妻にして阿保夫あり。安眠妨害だが、ネタには困らない大変便利な夫なんです。