それはスランプなのかやる気が足りないのか
世には、人の枠にあらざるモノ達がいる。
人はソレを人外と呼ぶ。
あるいは神と、
あるいは妖と、
あるいは…仙と。
これは、ひとならざるもの達の徒然なる御話
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『あわいの町』とその町は呼ばれていた。
正式な町の名はあれど、その特性ゆえに呼び名があまたついたが為に最早古参のものたちすらその名で呼ばぬから質が悪いと言うものだ。
あわいの町の目抜通りの片隅にその店はひっそりとましましている。
店名は『鳳仙飾楼』
三界と言わず、六界の粋人なら一つは此の店の飾りを持っていると言う
隠れた名店。
……一つ欠陥を持つことを除くなら、であるが。
「――退屈だわぇ」
「じゃあ仕事してください」
「だが、断る!」
「そう言ってそろそろ五六年ばかりたってますよ、鵬鈴御前」
「んぉ?もうそんなになるかえ?そろそろ注文も溜まった頃か。じゃあ仕方ない、起きて仕事をしますかねぇ」
「約10年お待ちかねの御客様もいらっしゃいます、さっさとなさらないとそろそろしびれを切らして怒鳴り込みが来ますよ、天界名物の神罰雷とか、」
「よし今やろうすぐやろう3日で全部おわすから許して下さいごめんなさい!」
「″鳴る神 ″だけにね」
此の店の主、鵬鈴。
彼女はえらく腰の重たい人物であった。
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『あわいの町』『常世の妖町』『桃源郷街』……その他呼び名諸々。
ここはひとならざるもの達によるひとならざるもの達のための町。
神にあやかし、果ては仙やら神獣、人以外ならなんでもござれの人外の集う町にして時限と次元を越えて訪れる越境のモノ達が行き交い物品、人材(妖材?)の流れを司る物流の要。
その町にあっても、鳳仙飾楼の女店主鵬鈴は異質な者であった。
何せ何時から存在するのか誰も知らない、その美貌にその手から生まれる飾りが三界と言わず、六界を越えて音に聞こえた繊細かつ緻密な細工で有名な細工職なのだ。
わかっている事は彼女が芸事と職人の神であることと怠惰でやる気が足りない天才肌で注文を度々忘れ、依頼者が掛け取りに行かねば造ったことすら忘れているということくらいだ。
まぁ、それでも一度は己が装身具に鳳仙印の物を使いたがるくらいなのだから、腕だけは大変確かなのだろう。
今日も今日とて式神にケツを叩かれ、鵬鈴は仕事場に入った。
仕事机や棚には作りかけのものもころがっている。
――――――――『さて、仕事を始めようか。』
カツンカツン……シュッシュッシュッシュッ…コンコンコンコンコンー……
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