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【青年】

昼間から町を歩くのは何年ぶりだろうか。

ホームレス生活時は当たり前だったのだ。 明るく笑う子供達を見て、腹正しくなる頃もあったが、情けない。


明るく笑いかけてくれる人間に悪い気はしなかった。

そんなことを思いながら、賑やかな町を歩くエマ。


思い出を辿ると、子供達から遊ぼうとの声。

すれ違う人との会話。

日々経験しない出来事続けで、愛おしくも思う。


あっという間に時間が過ぎ、疲れ切ったエマは町の中心の噴水広場で足を止めた。


「...ふぅ。 疲れたな」

自ずと楽しい時間が思い返される。

常に鳴く鳥にさえも苛立ったが、今は苛立ちなど感じなかった。


フフッと微笑む。

目線を変えればこんなに変わるだなんて。

今日は 詰まった時間。

オルバの感謝を改めて知り

人々と優雅な時を過ごして

鳥にさえも喜びを感じた。


疲れがある程度とれたエマ。

まだまだここには、私の知らない世界が広がっている。 好奇心に溢れ、腰を上げた。


...と同時に。

「いっっっ⁉」


ガリっと嫌な音をたて、何かが起こった。

気付けばエマは噴水のある地面に叩きつけられていたのだ。

経験のない痛さに目が歪む。

一緒に倒れていた人間が一人。どうやら勢いよくぶつかったのだ。


そこで鳴る噴水広場の鐘。 倒れた人は目を瞑っていた。


「っ‼ この人...」

エマは倒れた人間を揺する。

同時に「大丈夫ですか?」と声を掛けたが目を覚まさなかった。


羽織っていた薄汚いローブを外す。

するとローブとは裏腹に 綺麗な橙色の少し長い髪。 瞑った目には 長い睫毛。 ローブの下の服はまたまた高価そうな服装だった。

20前半の青年だ。


このままここにいると、周りから視線を浴びる。又 変な誤解すらうんでしまう。


そう判断したエマは青年を立たせて、さっさと人気のない裏通りへ身を隠した。



運良く配置されていた長椅子に青年を横たわらせ、向かいの壁に寄りかかった。


「...これはこれで 目を覚ましたらどう言えば...」


今思えば 噴水の水を青年にかければ目を覚ましたかもしれない。 試しもしないでこんな場所に引きずり込むなんて...とても気が引ける。


ローブを脱がせ 掛布団替わりにする

長年住んでいるエマだが、このような青年は見たことがなかった。


なんせかなりの容姿の持ち主だ。 少しは騒ぎになってもおかしくはない。

服からして 貴族の人間なのだろうか?


そんなことを考えていたエマも、だんだんと疲労が蘇ってきてしまっていた。

暁には青年が横になっている長椅子に、少しだけ間をあけ、座り込んでしまった。


かなり長身だった青年には収まらず 座り込んだエマの膝に頭を乗せる体制になっていた。


そんなことり気にする間もなくエマはぐっすり、寝てしまっていた。



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