【恥】
あれから3日後。
珍しくオルバが遅く起床していた。
11時45分だった。
流し台にも皿はなかった。 周りを見ても綺麗に片付いていたのだ。 違和感を感じたエマはオルバのもとへいった。
「爺さん? 店やらないの?」
起床時にきたため、寝癖がたつ。 かしかしと髮をかくと
「...あぁ。 今日はやらねぇよ?」
あの仕事熱心なオルバからの言葉なのだろうか。 驚いたエマは走りより
「まさかっ...店を辞めるんじゃ...」
困る。
居候させてもらえなくなるじゃないか。
内心 店の心配より寝床のことばかり考えていたエマ。 だが どっちにしろ困る出来事だ。
オルバはきょとん とした表情で座っていた。
あとから がっはっは と笑いはじめた。
ビクっと肩が上がったエマを見ていった。
「言ってなかったか? 客が増えたんだ。 だから店をデカくしようかなって改装するんだよ」
「かっ...改装...?」
「そ。 だからすまんが今日だけ他で寝てくれ。 ここは使えんからな」
終わった。
一番恐れてたのに 運が悪いな。
気分が上がらず、人気のない裏道に身を潜めていた。
今日は何を食べよう?
どこで寝よう?
自分でも分かっていた性格。
私は嫌な奴だって、性格悪すぎって 知ってるよ。
自分のことしか考えてないもんね。
よく思えば こんな人間何故オルバは助けてくれたのだろうか。
情け...なのか。
それは当時の考えだ
情けなんかじゃない。同情でもない。
一人寂しい人間に小さなチャンスをくれたのだ。 あんな嫌な子供の言葉を受け入れ、チャンスをくれたのだ。
だからオルバは過保護爺さんなどと 呼ばれるのだ。
オルバは私を変えてくれた唯一の人だ。
「...素直になりなさいよ、私...」
こんな自分が恥ずかしい
成人にもなって子供みたいな口は通用しない
一日くらいなんだ。
今まで10年以上世話をしてくれたオルバに迷惑はかけたくない。
早く思えばよかったな。
明日...ありがとうって言おう。
言って 大人になろう。