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気づけばベッドの上で寝ていた。
家のね。
自分のね。
「うーん・・・そういえばフラグがどうたらって夢を見た気が・・・」
夢じゃなかった。
というか目の前にいた。
天使。
また幻覚かぁ。
どんだけ病んでんだよ俺。病院行ったほうがいいんでないかい?
「うーん・・・むにゃむにゃ・・・だから幻覚じゃぁ・・・」
寝てやがる。
俺の布団を占領してるし。
なんなんだよもう・・・。
それとこいつ女だったのな。まあたしかにそれなりの美人ではあるけど。
今言いたいのはそういうことではない。
「うーん・・・はっ!!あ!お前は!」
起きたよう。
やっと起きてくれたか。といっても俺も今起きたばかりなのだけど。
さっきカレンダーを見てみたところ、日曜日だった。休日でよかった。
さて、と。さっそく精神科病院でも言ってくるかな。
「だから幻覚じゃないって言ってんだろぉぉぉぉ!!!何回言わせるきだよ貴様!!」
「え?まじ?俺すっかり幻覚だとばかり・・・てへぺろ」
「うわっ!キンモ!!さすがフラグが一切立たない男だわぁ」
ちょっと傷ついたぞ?
あとフラグは関係ないと思うぞ。
「ところで天使。なにがどうなってるのかさっぱりわからないんだけど状況を説明してくれると非常にありがたい。で。俺は昨日、あの後どうなったんだ?コンビニの前で倒れたはずなのだけど、なぜうちのベッドで寝てる?あとなんでお前も寝てる」
「ああ。そうだな。では2回説明してやるからしっかりと聞けよ」
2回も説明してくれるのか。
俺はたいていのことは1回で記憶するから2回も説明は必要ないんだぜ。
「ちなみに1回しか2回言わないから記憶しろよ?いいないくぞ」
なんかいろいろと意味がわからなかったけどとりあえずスルーした。
うん。わからないことは無意味につっこむことはやめよう。
「まず。昨日説明したようにお前は偉大なる神様のちょっとした手違いによって生み出されてしまった不良品。つまりまあありとあらゆるフラグが立たない人間としてこの汚い大人が徘徊している腐った日本
という世界に生まれてしまったんだよ」
フラグが立たないところが手違いだったのか、それとも腐った日本に生まれたことが手違いだったのか。
さて。
あるいはどっちもだろうか。
神様酷いなぁ。
「そして、それを哀れに可愛そうに思った神様が、フラグの一つも立てられないアホみたいなお前にある一つの能力、【他人のフラグを盗む能力】をプレゼントフォーユーしてやったというわけだよ。でもそれを手に入れるためにはある条件があったんだ。そう。このカプセルを飲むこと」
そういうと天使はポケットから昨日俺に飲ませたカプセルを一つつまみ取り出した。
よく見るとどくろマークがついている。おい。
「しかしね。このカプセルを飲むとなんと気絶しちゃうんだねぇ~。そしてそのことをまったく理解もせずにせっかちなお前はコンビニの前でこの私から無理やりカプセルを奪い取って飲んだというわけさ」
嘘だろ。
お前が無理やり飲ませたんじゃねえか!!
「まあ、そういうわけでさ。気絶したお前をこの優しい天使のような天使の私が担いで家まで送ってやったというわけさ」
「そりゃどうも」
「そんなわけだ。うん。あ、あとフラグの奪い方については説明した方がいいか?奪わないと今までどおりフラグたたないし」
「ああ。多分使うことはないと思うけどとりあえず教えてくれ」
使うことはこないだろうなぁ・・・。
本当に。
別に彼女ができるフラグを奪って彼女を作るとかいうのも酷い話だし。
他人の幸福のフラグを奪うのはなんというか気が引けるというか。
「おう。じゃあ教えてやるから私について来い」
そういうと天使は外へと俺を連れ出した。
外に出て、一つ、驚くことがあった。
「なん・・・だこれ・・・」
人から。視界に移る人間すべてからうっすらとオーラのようなものが出ている。
淡く、とても薄くて今にも消えそうなオーラもあれば、とても濃く、燃え上がりそうな炎のようなオーラ。
さまざまな種類があり、それぞれに色がついている。
「みえるか?これがフラグだ。すべての人間にはフラグがある。しかもそれは常に。たとえばそこの黄緑色をしたうっすらとオーラを放っているおっさんがいるだろう?そのおっさんは」
「石につまづいて転ぶフラグ!」
「そうだ」
・・・え?
なんでわかったんだ?
なんで石につまづいて転ぶフラグだということだとわかったんだ・・・?
「なぜわかったかという顔をしているね?ふふふ。それも一応能力の一部なんだよ。特に気にしなくてそれが何のフラグなのかがわかる。といってもものすごく細かくは読めないけどね。まあ、この能力をわかりやすく例えるなら、絶対音感のようなものだね」
ああ!すごくわかりやすい!
なるほど。
そのオーラをみただけで何のフラグなのかが一瞬で理解できるのか!
便利!
「そして、そのフラグを奪う方法だが・・・ちょっとお前、手を伸ばしてみろ」
「え?こう?」
「そう。そのままそこの【石につまづいて転ぶフラグ】のオーラに手を伸ばしてみろ」
言われるがままにおっさんのオーラへと手を伸ばす。
「それをつかんでみろ」
「いやいや。つかんでみろって。俺とおっさんは十メートルは離れてるぜ?今おっさんのところへいってオーラをとってこいってことか?」
「ふふふ。違う違う。オーラを掴むのに距離などいらない。見える範囲のオーラならば、掴もうと思えばつかめるんだよ。ほれ。やってみろクズ」
天使に言葉の暴力を受けつつもその言葉を信じて手を伸ばす。
オーラが・・・つかめた・・・!?
と同時に消えた。
おっさんからオーラが消えた。
変わりに俺の手の中にオーラ(フラグ)が。
「そうさ。そして普通の人間ならそのフラグをオーラとしてもっていなければならないが君は別だ。君はそのオーラを使いたいと思ったときに使うことができる。ほれ。つかってみろ」
「いやだよ!?」
何が悲しくて自分から石につまづくフラグを使わなければいかんのだ。
「ちなみに盗んだフラグが使えるのはそれを手に持っているときだけだ。あ、そうそう。フラグは他人へ譲渡することもできる。別の言い方をすれば押し付けることもできる。やり方は簡単だ。渡したい人へ向かって念を送る感じでその人を見るんだ。するとあら不思議!その人へオーラが移っているではありませんか!」
「へぇ・・・」
ためしにやってみた。
天使に。
「って!うわぁ!!なんで私にやるのよ!!その能力は協力で天使にも効果があるんだからやめろよ!!しかも天使の持つフラグ操作よりも協力なんだぞ!!ふざけるなぁ!!いやぁ!!転びたくない!」
そこまで転ぶのが嫌なのか。
というか天使よりもこの能力が強いことを知って急に怖くなってきたぞ?
てか。
「飛べば石につまづかなくね?」
「フラグは絶対なんだ!フラグクラッシャーとかあるけど、お前から渡されたフラグは絶対に折ることはできないんだよ!ふざけるなぁ!!死ね!!」
「そ、そうだったのか。それはすまん。とってやるよ。ほれ」
天使のフラグに手を伸ばし、掴み取る。
「ふぅ・・・本当、ふざけんなよ・・・」
「悪かったって。さて。このフラグ、どう始末しよう」
「消すことはできない。流石のお前でもな。それは神様でないとできないことだから。そんなにいらないんだったらもう一度おっさんに返してやればいいだろ」
「ん。それもそうだな」
そう思い、俺はおっさんにフラグを返した。
返した2秒後におっさんは石につまづいて転んだ。