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どうもです!
暑い。
暑すぎる。
夏は暑い。
セミが鳴いている。
うるさい。
あと暑い。
もう暑すぎてさっき買ったばかりのガリガリ君リッチコーンポタージュ味が溶けてしまっている。
なんか新発売だとかで買ってみたのだけど食べる前に溶けてしまった。
そりゃ、買ってから30分もくそ暑い外でガリガリ君を放置していた俺が悪いのだけど。
にしても暑い。
あと暑すぎて幻覚まで見えてきてしまった。
目の前に天使みたいな格好した変なおにゃのこがいる。
ああ~可愛いなぁ。でもあれだよね。こんな可愛い天使の幻覚が見え始めてるってことは俺もそろそろおかしくなってきたのかな。
実を言うと30分前から見えてるんだよね。
だからガリガリ君を食べるどころの話じゃなかったのさ。
そんでもってこの子、さっきからじっと俺のことを見ているのですが。
といっても幻覚だから気にすることないか。
この子飛んでるし。
「いや幻覚じゃねえよ」
なんか喋ったよ。
すげえ、声がリアル。
「だから幻覚じゃねえつってんだろ!」
むすっとした表情で怒ってるよこの天使みたいな子。
俺も本当末期だなぁ。
「・・・・しつけえよ!!なにお約束みたいなこと考えてんだよ一発なぐらねえとわかんねえのか!」
なんで一発殴られなきゃいけないんだろう。
あ、あれか。なぐれば実態があるってわかって幻覚じゃないとわからせるためか。
にしてもこの幻覚本当よくできてnブフゥグ!?
「はぁ・・・はぁ・・・」
マジで殴られた。
いってぇ。
ってことは・・・
「お前幻覚じゃねえな!?」
「いまさら気づいたのかお前は!!」
だってさ。
普通人間って飛ばなくね?
浮かなくね?
背中に羽生えてなくね?
これ常識人だったら絶対幻覚だって思うよね。
あいにく俺は幽霊とか天使とかそういう架空上のものは信じない主義でね。
「うん。ごめん私天使だから」
簡単に言われた。
あっさりすぎるだろう。
もうちょっとひねってもいいと思うぜ。
そんなにあっさりと自分が天使だって言ったら話し続かなくなっちゃうだろ。
「わかった。信じる」
「あっさりだなぁ・・・そういうのは信じない主義じゃなかったのかよ・・・」
「そういうのは信じない主義をやめた」
「ああ、そう」
実にどうでもよさそうな顔をされた。
不愉快だわぁ。
「ところであんた、今までフラグってものを立ててきたことがある?」
「フラグ?なんだそれ。あの恋愛フラグとか死亡フラグとかそういうやつか?」
「そう、それ」
そういえば俺は今までフラグと言うフラグを立ててきたことがなかった気がする。
というかねえよ。
「ないな」
「でしょうね」
「なんだよわかりきったように」
「わかりきってるんだよ」
ふふんとえらそうに鼻を鳴らしてなにやら手紙のようなものを取り出した。
「えーごほん。ここに書いてある通り、あんたはフラグが立たない人間なのよ」
書いてある通りも何もその手紙を見せてもらってないからわからん。
何言ってんだこの女。
「どういう意味」
「つまり、上、天界に住む神様が。なんかのミスであんたにはフラグが立たないようにしちまったのよ。そのせいであんたはどんなに頑張っても何のフラグも立たず、いたって平凡な、まさにキングオブザ平凡の称号がふさわしい人間になっちまったってわけ。お分かり?」
「なんとなくわかった」
要するに俺はフラグを一切立てることができない人間なのね。フラグクラッシャー以前の問題じゃねえか。
だからか。道端で不良に絡まれてる女の子を助けても女の子はいつの間にか逃げてて結局喧嘩して終わっただけだし。
朝遅刻しそうなときに急いで走ってたら1秒の違いで食パンくわえた転校生とギリギリぶつからずにすれ違ったり。
「そうそう、でもフラグが立たないっていいフラグが立たないこともあるけど、逆に言えば死亡フラグも立たないのよ」
そこはラッキーだな。
「まあ、そんなわけでさ。神様はあんたが生まれてから16年間ずっと見てらしたんだけど、あまりにもフラグが立たなすぎて可愛そうだという事で。あんたにこの、フラグを奪う権利を与えてくださったのよ。感謝しろよドブネズミ」
そういいながらこのクソ天使はカプセルのようなものを渡してきた。
「なにこれ」
「カプセル。それ飲め」
「いや、いきなりのめって言われても」
「はい」
無理やり口の中に放り込まれた。
頭がぼんやりする。
「う・・・うう・・・」
「ああ、そうそう、それ飲むと最初はちょっと気絶しちゃうけど、まあ気にすんな」
はぁ!?
そのまま確かにおれは気絶した。