悔い無き死なんて認めない
カイザ達が日本にたどり着いた日の午後17時頃
聖地での出来事。
かつて、【悪】の中でも強大な存在、悪の象徴として人々から恐れられ、世界を救うために生まれた主人公達ですらも力で散し、あろうことか同族である【悪】の者たちを喰らう事で力を付けるために同族からも恐怖の存在となった怪物……マリシャスの骸が眠る場所。
なぜそのような忌むべき存在の墓となる場所が聖地と呼ばれて居るかといえば理由はキチンと存在する。過去では、最強と呼ばれた怪物だが、もちろんそれを倒した英雄が存在する。
そのものは「神の人」と呼ばれる存在、世界で初めてフォースセクションにたどり着く事の出来たHEROであり、エデンの番人。
強大な悪意を持って楽園をも悪意で呑み込もうとしたマリシャスをその手に剣と盾を持って挑み、長き激戦の末にマリシャスを殺すことに成功した英雄がマリシャスの悪意が復活せぬように封印を施した地。
それがこの神殿ジブリールである。
神殿の周りを強力な聖なる力によって囲い悪の存在が入る事も出る事もできない場所。
☆★☆★☆
そんな場所も……現在は、炎に焼かれ神殿を護っていた多くの者たちは、身体から血と肉を奪われ骨と皮になり床に転がる。
床に転がった死体を踏みつけながらうきうき気分で神殿の内部へと進んでいく謎の少年。
「ついについに帰ってこれた」
「ここに……来たかったの?よかった、ね」
「うん、本当にありがとう。おねえちゃん、僕一人ではこの中には入れなかったんだ、おねえちゃんのおかげだよ」
神殿の中でクルクルと神殿を見渡すようにはしゃぐ少年の頭を撫でる痩せ細った腕、その腕の持ち主は笑みを浮かべては居るものの目に光は一切なく明確な意思すら感じられないほど疲れきっている柊の姿があった。
そして、柊の手を引きながら少年が神殿の中心に通路を進む…すると非常に明るく広い場所にたどり着く。そこは、天上に高く天上はガラス張りで太陽の光を室内に遠し非常に明るく神秘的にしていた。
その中心に太陽の光を受けて輝く菱形の巨大で、ひときわ目立ったクリスタルが地面に刺さっていた。
「くくく、やっとたどり着いた、ここに戻る事を決意し何十年待った事か……ハハハ」
「……よかったね」
クリスタルが目に入った瞬間に高笑いを始めた少年。喜んでいるようなのでとりあえず、搬送した柊だが……ふと糸の切れた人形のようにガクンと体中の力が抜け、地べたに真っすぐに倒れこむ。
その様子をゴミを見るような目で見下ろしていた少年。
「ふっ……ついに限界が来たみたいだな…もう必要ないから本格的に捕食うとするか……あん? なんでこの女、笑って気絶してんだ?」
少年が傍で常に生気を喰っていたせいで生気を無くし後はもう死ぬだけの柊の死顔が酷く澄んでいて満足げな事に少年は苛立ちを覚え脚で柊の体を転がし、顎に手を当てながら何かを思いついたかのように柊の顔に手をかざす。
「この俺様の殺す奴が救われて死んだんじゃ末代まで笑われちまうな…絶望し恐怖し血の涙を流しながら死んでもらわねぇとなケケケ、俺様の役に立てたご褒美だ。ぶっ壊れるまでこき使ってやるよ」
少年はそう言いながら中央のクリスタルに小さな手で触れる。
ボワーーと透明だったクリスタルの奥から紫と黒が混ざったような煙がクリスタルを覆い、クリスタル全体に広がると……今度はクリスタルから煙があふれ出す。
その煙を少年はその手で誘導するようにして夥しい【闇】で柊の体は包まれる。
「……ゴミはゴミのまま苦しんで惨めに生き続けろ」
死にかけの人を助けるという行為には酷く合わないセリフを吐きながら少年は恍惚の笑みで高らかに笑い声をあげる。
「はい、完成」
そして、闇が晴れると闇に包まれていた柊は、少年の前に生気の戻った柊が立っていた。
「もっとグロい怪物になるかと思ったらそうでもなかったな……お?」
「うぐぁああああああ!!!!!!!!!!はは、ははは」
闇から出た柊は己を見上げる少年の頭を鷲掴みにしクリスタルに叩きつけ……悪意を震える快感に恍惚の笑みを浮かべながら何度も顔をクリスタルに叩きつけて聞く。そうしていると少年が手を上に上げる。
すると柊は金縛りにかかったようにピタリと動かなくなる。
「俺様の【悪意】を分けるとこうなるのかよ、二度とやらねぇ……こんな狂戦士もう一匹は勘弁だ。……へぇ」
少年が目を細めると同時に動けないでいた柊の体から黒い煙が噴出し徐々に彼女を包み込む。
「いいね、完全復活するまでもう少し時間稼いでもらいたかったんだよ」
煙の間から覗く柊の瞳はドス黒く、瞳のからは血の涙が零れた。そして、全身が黒い煙に覆われた。
これは、終末の始まり。




