狙撃なんて認めない
第二話、ようやく仕上がりました。
感想などをもらえればうれしい限りです。
ではどうぞ
朝10時。
とある、格安のビジネスホテルの非常階段から一番近いシングルベッドとトイレとシャワールームのついたワンルームの中で、昇った朝日の日光が窓からカーテンの隙間を抜けてベッドの中で怒りや憎しみ、恐怖、絶望、何もかも忘れて幸せな夢の中に居る柊の顔にかかる…
「……うぅん……トオル……桜……ごめんね。……ん? 朝……」
柊は、寝ぼけた意識を覚醒させようと首を激しく左右に振ることで、覚醒させ起き上がり自分がベッドで眠っていた事に違和感を感じ首をかしげる。
(私は、昨日は確か、机で武器の手入れをしていたはず……それでそのまま眠って……ってまさか!?)
柊はある一つの答えにたどり着いてすぐに部屋中を探したが、ソイツはそこにおらず、恐る恐るドアの鍵を外し、ドアの外を覗こうとすると、背後のベランダの窓がガララと開き、そこからカイザは現れる。
「僕なら此処ですよ、柊さん♪ お目覚めのキスならすぐにでも」
「そうか」
「ごふっ……相変わらず綺麗な足と体重の乗った完璧な蹴り、で……す」
柊の寝起き一番の手加減なしの回し蹴りを顎に貰ったカイザは両膝を震わせながら相手の一撃の感想を短く簡潔に述べ、柊に向かって最高のスマイルと拳を作り親指を立て両膝を地面について顔面から床に飛び込みお目覚めのキスを床にして気絶。
そんな、馬鹿でお馬鹿で大馬鹿なヒーローを踏みつけ、極当たり前の事のようにシャワー室に入って行った柊、彼女にとってはもう慣れた行動なのである。
むしろ、いきなりベランダから侵入してきた変態相手にとっさに拳銃を抜かなかった事を褒めてほしいくらいだと柊は、シャワーの温かい湯をその瑞々しい肌に受け、髪を優しく撫でるように洗いながら考えた。
(まぁ、机で眠っていた私が今風邪を引いていないのは、おそらくアイツが勝手に侵入してから、私をベッドに運んでくれたんだろうか……変態のくせに眠っていた無防備の私には手を出さない。よくわからん奴だな)
そしてシャワーを止め、目の前にある曇った鏡を手の平で結露を拭き取り、花がんに映った自分を眺める。
そこには、元々鮮やかだった黒髪が紫色に変色し、人間でないことを明確に位置づける頭の左右には小さい2本の角が確かにあり、去年までは日向に出過ぎるとすぐ赤くなるほど白かった肌は、褐色の肌に変色していて、以前の姿とは似ても似つかない化け物がそこには映っている。
(ふっ。またいつものように夢だと思い込んで、一体何度……淡い希望を抱いては……いつもいつも、現実に打ちのめされて、また、泣いてしまうんだろう……そんな事なら希望なんか信じなければいいのに。くそっ……くそぅ……)
ドンと浴室の壁のタイルに八つ当たりして今度は水のシャワーを頭に被りながら人知れず声も出さずに涙を流し続けたのであった。
長いシャワーを終えてからバスルームを出ようとすると、ある事に気が付いく。
(やば、バスタオルと着替え忘れた……アイツまだ気絶してるのかな?)
まだ、15歳の思春期の少女にとって変態の居る場所に裸でタオルを取りに行くのは、ある意味最大の試練である。あの男の性格ならば飛びつかれるのは必須な為、色々と危機なのだ。しかし先ほど脱いだ服を着る、のもいいかもしれないが、やはりびしょ濡れの状態では着たくない。いや、もういっそのこと脱いだ服で拭いてしまうか。どうせ洗うし。
どうしたものかと首を捻りながら悩んでいるとバスルームのドアの向こう側からヤツの声が聞こえる。
「柊さん、バスタオルは洗面台の上です。着替えの方は異性に触られるのは何かと嫌でしょうから触っていません。僕はちょっと朝食買いに行きますからその間にどうぞ」
カイザは、そう言って部屋から出て外側から鍵を閉め何処かへ行ってしまった。
(いつも思うが変態のくせに気が効く馬鹿だよな……まぁありがたいが)
柊自身は、カイザを多少評価しつつ、素直に感謝し、バスタオルを使って体を拭いて着替えを終え、テレビを付け、ソファーでくつろぎながらカイザが戻ってくるのを一人で静かに大人しく待った。
「ターゲットを補足した。もう少し様子を見てから始末する。約束通り正午までには仕事は終わらせるよ。まぁ、のんびりゆったりまったり射殺が俺の流儀だ」
その姿を遥か遠くから監視し今にも命を狙っている人間が居ることにはこの時、誰も気が付かなかったいや気付ける筈がなかったのである。
10分ほど過ぎるとコンコンとノックがあり柊はドアの方向を振り向くとドアの向こうから
「柊さん、朝食買ってきました。両手塞がっちゃってるんでドアを開けてください」
「……わかった」
柊がヤレヤレと首を振りながら立ち上がりドアのカギをガチャと開けてドアのノブを回してドアをひくと、目の前に両手いっぱいにジャンクフードのチェーン店の紙袋を抱えたカイザが居るのだが、体制が可笑しかった。地面に仰向けに伏せているのだ。柊は可哀想なものを見る目でカイザを見てドアを閉めようとした時カイザが困った表情で……
「なんか、ドアが開いた瞬間に体が勝手に……」
非常に申し訳なさそうに言ったが、柊は一瞬で現状を理解し、カイザの隣へと同じように廊下へうつ伏せに飛び込むと、ガラスが割れる音と鈍くも風を切る何かの音が聞こえ、瞬きをするまでの僅かな瞬間に耳を覆いたくなるほどの物凄い音が発生。柊とカイザの居る廊下が土煙と瓦礫が散らばり土煙が舞う。
柊の体は小さな破片を浴びただけで怪我はしておらず、一方カイザはと言うと、
「ふぅ、危なかったぁ。汚れるところでした」
などと肩を撫で降ろしながらそう呟いただけであった。
柊は先ほど大きな音のあった場所を見る、すると廊下の壁が一点を中心にひび割れくずれていた。
その正体は、恐ろしく強力なライフル弾だと理解し、隣で立っている男、対戦車ライフルが発射されるよりも、先に回避行動に出て、壁に当った瞬間には破片や埃を全て交わして純白の衣服に一切の汚れを付けていないカイザを見て呆れながら。
(さすがだな。人にもやはり一つは取り得があるものだ)
そう、柊なりに賞賛していたのであった。
すると、またカイザが何の知らせも無くその廊下から姿を消していて廊下の角。
「柊さん! こっちです!!」
「チィッ!!」
カイザの呼ぶ声が聞こえ柊は、起き上って全力で走る。
その瞬間から、柊の居た場所に壁をぶち破る銃弾が飛んで来て柊が走った事が幸いして銃弾は柊の体には当たらず柊の後ろの壁を貫いただけだった。
それを確認して止ろうとした時、柊の目前の壁が瞬きする一瞬の瞬間にぶち破れ、柊の目の前に口紅ほどの小さくない銃弾が迫る。
(れ、連射だと!?)
柊の目に金色に輝く命を一瞬で刈り取る美しくも恐ろしい銃弾が映り、また先程と同じく、鈍い音が再び壁に当ったことで発生し柊の居た場所の壁は砕けたのだった。
その現状を見て命中したと確証したその手に大型のスナイパーライフルではなく、砲身が少し改造され電子標準機付きのスコープを装備したマシンガンタイプの銃を持った黒髪に紅い目を持つ、茶色のダウンジャケットを着た男は銃の構えを解く。
「これにて任務完了。正午までまだ、30分はあるな」
兜は、自分の腕時計で時間を確認して帰る支度をしようと思い、アタッシュケースを開けた瞬間、その男は後頭部に固い鉄の感触が触れた事に気付く。振り向こうとしたがぐいっと後頭部を押される。
「動くな」
いきなり非常に高く、まだまだ年端もいかない少女のような声でそう凄まれ、笑いそうになるのを必死に堪えながら、後ろで自分へ銃を構え、優位に立っていると勘違いしている先程殺したはずの「悪」の少女に対して尋ねた。
「あれれ?なんで生きているんだ?きっちりかっちり完璧に殺したはずなのに」
そう、黒鉄 兜、現在セカンドセクションの暗殺系、射撃タイプのヒーローである。カイザと同じ主人公であり現在後ろで銃を構えている悪(柊)の命を狩ろうとした柊の宿敵の男は尋ねたのである。
つづく
キャラ紹介
名前:黒金 兜
性別:男
年齢:23
悪or正:正
ジャンルor種族:能力持ち&悲しい運命の主人公
主人公補正or悪のスキル:???
補正内容:???
容姿:身長180前後、黒髪に紅い目を持つ、茶色のダウンジャケットを着た背の高い男
性格:マイペースで呑気な性格に見えるが以外にしっかりしている性格。
武装:砲身が少し改造され電子標準機付きのスコープを装備したマシンガンタイプの銃『デスザルージュ』と懐にしまってあるハンドガン1丁
【補足】
ヒーローには強さの目安となるクラスが存在する。
ヒーローの戦闘力は能力の相性や特性、感情で変化することも多い。
ほとんどのヒーロ-はその知名度による補正が強い。有名なヒーローほど強いし、強いヒーローこそ有名になり、さらに上がりまた強くなる。ただ知っている、というよりも、信仰されている方がより補正による力は大きくなる。
もちろん例外も存在する。修業で自らを鍛えたり、何かをきっかけにした覚醒、道具を使用する事で強くなる者がいる。
そして人々に望まれて力を得るヒーローは人々の支持を得て力を持つ者の方が圧倒的に強い場合が多い。思いの力である。
ヒーローはほぼ例外なく、プロローグ・ファースト・セカンド・サード・フォース・エピローグの6つに分かれている。
正式名称にはプロローグ・エピローグを除く全てのクラス名に「セクション」という章を意味する単語が入るのだが、長くなる為大体の人々は割愛する。
プロローグが物語の始まりという意味で、大体の主人公は最弱の状態である為、この名付けをされた。
それ以降は章を重ねることにより成長する様からクラス分けに適任されている。
そして物語の終盤では多くの主人公はその作品中、最も力を持っている状態が多いために最終章の意味を込めたエピローグの名を冠する。
プロローグは人間より少し強く、『並みの人間』が相手ならば苦戦しない実力はあるものの、戦闘機等の殺戮兵器と比べるといささか火力不足の面があり、後述のクラスと比べると最も弱い。もちろん一般人には充分脅威ではあるが。感覚的にはまだまだ一般人よりである。
ファーストは戦車や戦闘機と同等の戦力的価値を持つ。とは言ったものの所詮はその程度であり、万単位の軍隊すらも互角以上に戦えるセカンド以降と比べると、いかんせん力不足である。この時点だと、ある程度マシになったとはいえ、自覚の足りなさが否めいない。性格的にもまだまだ若輩者が多い。血気盛んな駆け出し連中ではあるが、『磨けば』光るのもいるのもまた事実なのである。
セカンドは先も言ったように数万規模の軍とも戦える程の戦闘力を持った連中。物語で言えば主人公達にとって驚異的な「敵」が出てくるのもこの辺りあり、作品全体の面白さもここから急上昇する為、脂の乗った人物達が多く、調子に乗り、若さゆえの過ちをやってしまう者もいる。認めて次の糧にする者と、認めない者がいる。この行動が次の章に大きく影響する。
サードは国家全戦力を持って戦わないと厳しく、数的に言えば100万以上は確実か。いわゆる中盤になり、強大な敵を倒す為の修行や、悲劇的な事件に加え、葛藤を抱える問題が起こり易く、何かしら主人公達の成長を促すイベントが多い章である。このクラスになると確固たる信念や思想があり、他者の精神に影響を与える者達が多い。この事も知名度による補正が大きいこの世界での実力をさらに向上させる小さくない要因となっている。
フォースは数々の苦難を乗り越え、悟りを開き、神話的英雄として神格化され、地方より語り継がれる存在で、言わば神である。その戦闘力は凄まじく、サード以下ではどうしようもない敵でも太刀打ちできる。下位のクラスと比べて圧倒的な力を持つ半面、前線から一歩引いたものが多く、活躍する場はあまり見かけない。とはいえ、いざ動くとそのカリスマ的強さから信仰してしまう者がかなりの数いるのもまた事実である。知名度による補正が最も大きいとされるクラス。
エピローグはフォースよりも更に上の力を持った究極の存在である。この頃になると、あとはもう最後の敵を倒し、後日談を開始するだけになる為、余計に戦闘を見る機会は無くなってしまう。しかも、主人公側が負けてしまう最後など見る者を楽しませる作品として合ってはならないので、恐らくありとあらゆる補正が働いている状態だと思われる。モノによっては力を必要ないと感じ手放したり、その力を自らが守った世界そのものに危険視され、日常生活もままならない状態になることもある。実質、このクラスはこのヒーロー達がごまんと存在するこの世界の原点であるとも言える。続編がある作品ではプロローグにまで逆戻り、という事さえあり得る。一応、このクラスで居続ける者達もいるが何か異変が起こっても、干渉せず、世捨て人な状態に近い。本当に自分達の実力に見合う相手、もしくは害になる連中としか戦わない傾向がある。
以上です。
今回は、敵キャラとして主人公(HERO)が登場しました…あれ?主人公が敵キャラって小説なんですけど…ややこしいぜw
第三話はいよいよ戦闘開始です。お楽しみに
出来れば出良いんで感想くれたら嬉しい限りです。