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兄妹の日常

最強の抜刀術を持つ妹

作者: 十奥海


 とあるスーパーでお買い物中の僕たち峰岸みねぎし兄妹。

 妹の「実々(みみ)」は威風堂々とした様子で通路を歩く。長く伸びた髪は後ろで縛りポニーテールにしてゆらゆらと揺らぐ様はかわいらしさを振りまいている。

 ん?別に普通に歩けばいいじゃないかって?そうじゃないんだ、彼女は立っているだけで凛とした雰囲気をかもし出していて、歩けば女の剣客と言った感じなのだ。

 ただ、剣客の雰囲気をかもし出しているポイントは一点。腰に帯びている木刀だ。

 帯刀していれば、どことなく剣客の雰囲気が出てしまってしょうがない。

 ちなみに、僕の名前は「赤継あかつぐ」兄貴としか呼称されないので以降文中には出てきません。

「兄貴、今日は湯豆腐がいいのじゃ」

「これまた、男気あふれる料理だねぇ。せめて、食べるものは女の子らしくていいんじゃない?って僕は数年ぐらい前からおもってるんだけど」

「うるさい!湯豆腐がいいのじゃ!すいーつは外道じゃ!」

 わがままをこねる様は子供っぽいのに言動、雰囲気はまさに剣客。そして、僕は女の子はスイーツを食べるべきなんて一言も言っていないわけで、彼女も女の子らしさが何たるぐらいは理解している。

 そんな彼女の悩みは

「あ、兄貴今本当は身長が小さいなら小さいらしくしろって思ったでしょ」

「んや、思ってないよ」

 棒読みで答える。

 実々の悩みとは、身長が小さく子供っぽく見られること。別に子供なんだからそれに甘んじればいいものを、それを毛嫌いするあまり女の子っぽい扱いされるのも嫌ってしまっている。

 棒読みしたのが気にさわったのか、さっきから腰に帯びていた木刀が僕の腰にヒットする。

 ああ、痛い。でも身長も小さく筋力もさほどない実々が抜刀したところでうまく扱えずコツンと骨に当たって微妙な痛さがじわじわと来るだけだ。

「参ったか!」

「参った参った。だからスーパーで木刀なんて振り回しちゃダメだよ」

「む・・・正論じゃな」

 ご理解いただけた様子。元を正せば木刀なんてスーパーに持ち込んではいけないんだけどね。廃刀令はもう100年以上前に法令されているのだから、別に気にする人などいないけどそういった法令があることを実々には弁えてもらいたい。

「じゃぁ、今日は昆布と豆腐だけ買えばいいんだね」

「・・・なんか味気ないから、お菓子も買って欲しいのじゃ」

「それ、結構女の子っぽくない?」

「現代の男気にはお菓子も含まれるのじゃ」

「・・・・・・」

 僕が沈黙の回答をしている間に、テチテチと歩いてお菓子売り場へと向かっていく。その様はまさに、女(の子)剣客!実にかわいらしくて飴玉を上げたくなる剣客だ。

 だからといって、知らない人からお菓子を貰ってはいけません。

「何をしておる、早く来るのじゃ兄貴!」

 ・・・・その喋り方なら、せめて兄者あにじゃにしてもらわないと、どこぞの賊に聞こえてしまうよ実々。



実々「これは!チョコボールの新味!」

赤継「へ~・・・納豆味?」

実々「おいしそうなのじゃ!これは買いじゃ!」

赤継「(味の嗜好は、本当に女の子っぽくないんだ・・・)」


 納豆味のチョコボール:一粒の納豆にチョコが包まっております。粘り気が欲しい方は一気に口に含みましょう♪お口の中がチョコでいっぱいになります。



 今日も実々は、お庭でお遊び中。

 といっても、彼女にとっては稽古中と思っているのだろうが。

「22,23,24,24!」

 数字を数えると共に、庭の土にボフンと音がしてまた木刀を振りかぶる実々。

 もともと、虚弱体質な実々は筋力もさほどなく、赤樫で作られた非常に使い勝手のいい軽い木刀でさえ振り下ろすと地面まで落ちてしまう。

 実々にとっては落ちても一回に換算しているようだが、素振りとは振り上げるときもさることながら、振り下ろした反動を受け止めるところで一番筋力を消費するのだ。その一番重要なポイントを知らずに今日も実々は素振りを続ける。

「実々ー、怪我しないようにしなさいねー」

 お母さんも全てを理解しているが、口出し無用。

 何を言っても子ども扱いされるのはいつもの事だからだ。せめて、怪我をしないようにとのご忠告の一言が飛ぶだけ。

「疲れたのじゃ、もう終わり」

「今日は結構長くできたほうじゃない?30回くらいは行ってたように見えたけど」

「えへへ、そうなのじゃ今日は最高記録達成じゃ!祝いのチョコボールを持てい!」

 誇らしげに祝いの品を要求するが、簡単に言えばお菓子が食べたくてしょうがない女の子の心情を隠しているだけだ。

 僕は、棚にしまっておいたチョコボールを取り出して、実々へと手渡す。

「はい、三時のおやつの時間だね~」

「違うのじゃ!これは、ご褒美だからおやつじゃないもん!・・・だから、また後でお菓子が食べたいのじゃ」

 最後の方の声がしおれていき、自分でお菓子を食べたいという子供っぽい事を言ってることを自覚している。

「だめ。お菓子は一日一個まで。お母さんに怒られるよ?」

「・・・はい」

 子供っぽい本性を、自らの自制心で押さえ込み頷く実々。なんとも言いがたい、感情が湧き出てきて頭を撫でる僕。

「実々はいい子だね~」

「へへ~、お兄ちゃんにもチョコボール上げるのじゃ」

 納豆味のチョコボール?いやいや、正直言っていらないよ僕は。遠慮しておきます。とも言いがたい雰囲気。

「ありがとう、じゃあ一個貰っておこうかな」

「はい」

 貰ってしまった。

 パクンと一口。

 ・・・企業側はなぜこれを商品化できると思ってしまったんだろう。世の中予想外を、周到にすればなんでも許されるってものじゃないんだよ。

 この後数分後の話ではあるが、口直しに水をジョッキで飲んだのは内緒だ。

「うん・・・なんともいえない味が口の中に広がって・・・」

「私も食べよ」

 あ~。食べてしまった。味に対して何の疑いのない実々は、笑顔で咀嚼し続ける。

 そんな実々から出た一言は「なんとも言えない味なのじゃ」と一言。

 その後、二粒だけ無くなったチョコボールの箱は納豆臭さを抑止するためにラップできちんと包んで台所の三角コーナーへ搬送されたとか。



実々「さっき道端で変なおじさんが、飴玉上げようかって近づいてきた!」

赤継「大丈夫だったの?」

実々「気持ち悪いから木刀で切りかかったら『おじさんの負けだよー』って言って満足そうな表情で帰って行ったよ。」

赤継「(それは、たぶん切りかかってなかったら本当に危ない所だったんじゃないか?)」



 ここで重大なお知らせをしよう。

 なんと、実々はこれでも僕の一つ下。高校一年生(16歳)なのだ!

 驚きました?まだ、小学生程度だと思っていましたよねそこのあなた。って僕は誰に話しかけるわけでもなく脳内で言ってみるんだが、誰かに伝わっている気がするのでよしとしよう。

 そんな訳で、僕と実々は同じ高校に通っていて登下校はいつも一緒。そして部活も同じ。

 さっきまで、木刀を振り回しているから剣道でもやっているのかと言われると、ええその通りなのです。かく言う僕も、剣道部の一員であって一応県大会出場ぐらいの実績はあげているのだ。

 学校ではもっぱら「年齢詐称いいかげんにせぇ」との言葉が飛び交っているが、その言葉を塞ぐ「かわいいから何だっていいだろ」との言葉がさらに飛び交っているので、学校で年齢について語るは愚なるが如し。

「さて、今日の練習メニューはこれだ!」

 剣道部の部長から皆に練習メニューなる一枚の紙が手渡されていく。当然の事ながら、実々にも練習メニューが手渡された。

 僕の隣で剣道着を着て正座をする実々は既に剣道部員の一員。甘やかされることなどあるはずがないのだ。あってはいけないのだ。

 僕の練習メニューをとりあえず一瞥くれてみる。


1、校庭2週(ウォーミングアップ)

2、素振り100回

3、筋トレ(各自自分の限界を求めよ)

4、足さばき

5、後は適当にやってくれたまえ


 いつもどおり適当すぎてもう、誰も突っ込みはしないし意義を突き立てる者も居ない。

「今日もまたこんな感じなのか~」

 僕もいつもどおりということで一言こぼしてしまう。

「ま、適当にがんばるのじゃな」

 一つ下とは言え、実々に励まされるとなんだか小学生に励まされたようで、普通の学生に励まされるより元気が出る。

「お前ずるいぞ!実々ちゃんに今励まされただろ!」

「悪いかよ。兄妹だから、普通だろ?それと実々を困らせるんじゃない」

 おどおどして、何かまずいことを言ってしまったのかと慌てる様子の実々。

 別に実々が悪いんじゃない。その容姿が全てを狂わせているんだ。

「み、皆もがんばるのじゃ!」

「うおっしゃーー!」

 剣道部員一同(男ども)は実々の一言で歓声らしきものを上げて喜んでいた。何故か、うちの剣道部は男が大量にあふれている。別に剣道で有名な学校というわけでもないというのに。女の子もボチボチいるがやはり男が7割と言った具合だ。

 そして、隣に居るので実々の練習メニューに目を移してみる。


1、トイレに行ってきたまえ(練習中にトイレに行きたくなったら大変だぞ)

2、部長のところに来なさい(お菓子をあげます)

3、筋トレ(腕立て5回、腹筋8回、スクワット10回)

4、箸さばき

5、暇だったら部員勧誘へGO


 5番目の項目でこの部員数かと納得がいく。

 2番目の項目は女子が部長を務めていなければ否めに行ってるところだ。

 そして、全てに対して突っ込みを入れたくなって、もう突っ込む気も失せた。簡潔に説明すると、大いに甘やかされているのだ。

「さ、練習をはじめるかー」

 伸びをして僕は校庭へと向かった。

 今日も清々しい晴天の空の下、僕は校庭を走り、実々はトイレへと駆け込む。



実々「てい、てい、ほい」

部長「もうちょっと、箸の根元部分を持ってみたらどうかな?」

実々「おお!なんかチョコボールが簡単に取れるようになったきがするのじゃ!」

一同「・・・・・(箸さばきを指導できる部長って一体)」

実々「しかし、これはなんの稽古なのじゃ?」

シリーズ中、一番自由に書いていったかもしれません

今作品は実々のロリっぷりによって保たれています。

幼女ポニテぐへへってなれるようになっていたら作者の思う壺です。

思う壺になりたくなければ、幼女好きを捨てるのじゃ!

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