独白
久々の一人称です。
「ふうん……」
そびえる門を前に小さく呟きがもれる。石造りの門は堂々たる姿でそこにある。その存在を知らしめるかのように。
口元に小さく笑みが浮かぶ。それを認識しながらも私はそれを殺さずにただ静かに門をくぐった。
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帝国内に進入、いや、ほぼ強引に入ったようなものだが。
私はようやく帝国に侵入していた。それは拍子抜けするほど簡単なことだったが、ある意味、難しかった。
「ネロ」
小さく名を呼び、ネロを呼び寄せる。私がネロに頼んだのは、残酷なお願い。それを伝えること。
「……あの二人は、なんだって?」
聞きたくて、でも聞きたくなくて。セレスティーナとカーセルの友人だった二人。本来ならば助力を請う予定でありながら、関われなかった。
「……ただ、泣いておられました」
一言、私を傷つけないように、という思いやりに溢れた言葉。しかし端的ながら真実を述べたその言葉は深く私の心に刺さる。
「そっか」
ありがとう、と囁くように言う。それが聞こえたのかどうかは私にはわからないが、ネロは優しく微笑み、姿を消した。一人になりたいと、そう思う私の気持ちを汲んでくれたのだろうか。
――私は、弱い。
リエラにあれだけ迷惑をかけ、優しい言葉をかけてもらいながらそれを断り。しかしそれを悔やむ。
これを弱さといわずになんという。
結局私は何も変わってないのだ。何も。
ただ、あの日私のために消えていった皆のためにと思いながらも、今を生きたいと願う。
私がフィンラではなくなったあの日、しかし私は変わっていない。
そんな弱い私がようやく踏み出した第一歩。それが、今ここ。
帝国内部。
完全なる敵の本拠地だ。皆を殺した、その国。
それを思うだけで煮えたぎるような憎悪が、そして悲しみが。私のなかに溢れる。
「簡単には、終わらせない……」
知らず知らず、手に力を入れて呟く。簡単に終わらせてなるものか。もう二度とこんなことを起こさないように、表も裏もすべて破壊してやる。
私がたとえ死んだとしても、次に私となる人が、私のような悲しい思いをしないように。私のように憎しみに駆られないように。
すべての根源を私が断つ。そのために私は今ここにいる。
「国立帝都マギリカ学院……またの名を、魔王討伐学院、ですか」
手に持った一枚の紙を見て私は嗤う。これが一つ目。瞳を冷たい色に染めて、私はゆっくりと歩き出す。石造りの立派な門は遠くからでもよく見える。
ふっと体を起こし、東を見る。
太陽が少しずつ顔を出し、周囲はほのかに明るくなってきている。
「そろそろ、時間ですか」
クスクスと笑い、私は言う。外への仮面を貼り付けて。
碧色の髪と瞳を持つ、長い髪を持つ少女。
私はようやく一歩を踏み出す。
長い復讐の道への一歩を。
「そこで待っていてくださいよ?……皇帝サン?」
っふw
短いのは仕様です。だって二章のプロローグだもの。
……言い訳です。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
一人称が書けなくなった……。序章のころはずっと一人称だったのになぁ……。
十二月八日 サブタイトル変更しました