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神前迷と帰り道 2




「真面目な話だよ。話さないでよね?」


「わかってるって。それに別に話す奴もいないし。」


「うん。信じてるけど。あの子なんか最近様子おかしいからさ…。」


「ふーん。てか迷って2年の時、天笠と同じクラスだったっけ?」


「同じクラスではなかったけど、二つ隣のクラスだったから知ってるよ。」


「いやそんな飼育係いっしょだったから知ってるよ。みたいなノリで言うなよ。」


そんな常識、俺には通用しない。二つ隣のクラスとか普通に生きてたら接点0だろ。ていうか同じクラスの奴でさえ全員の名前は覚えてないし。

・・・ん?いやそれは俺だけか。それが普通なのか?

現役高校生ながら高校生のことがよくわからない。

幼馴染との人脈の広さの違いをまざまざと自覚させられる。

マンションの入り口に入り、九条家のポストに郵便物が入っていないかを確認しながら奥へ進みエレベーターのボタンを押す。


「ところで迷のケータイのメモリーって何人登録してあんの?」


迷が幼馴染の質問に答えるべくケータイを弄っている間にエレベーターが一階に着いた。

チンッと音が鳴った後に重苦しい動作でドアが開いた。

少し大きな地震でも起きたら耐えるまもなく落ちてしまいそうなくらい年季の入った昇降機はギィーという戦隊もののやられ役みたいな間抜けな音を出しながら上ってゆく。


「536人だった。こないだ、もう会わないかもって人のは整理しちゃったんだけどね。」


そんな途方もない数字とバイバイを言い残して、チンッという音の後に開いたドアから幼馴染は出て行ってしまった。

・・・・・てかあいつ。まだ会うかもしれない奴が536人もいんのかよ。いつだよ。

なんとなく自分のメモリーを確認してみることにした。いや確認するまでもないのだが、一応確認してみようと思った。・・・もしかすると何かが変わっているかもしれない!そんな意味不明な期待が頭をよぎる。

メモリー数は32人そのうちの50%は親戚で構成されている。いとこが多いことに大分救われている。まぁ結論、何も変わってなどいなかった。

意味不明な期待は意味不明のまま不完全燃焼を遂げた。今年、機種変更を済ませたばかりの携帯も俺の元では実力の半分も出せてはいないようだ。


「ふふ。バカめ。潜在能力では迷の携帯なんぞの非ではないわ!」


そこら辺のところを妥協案としておこうと思った。それにこんな見るからに変質者の独り言を言えるのはこの監視カメラすらない武居マンションの古ぼけたエレベーターの中だけだ。それももうすぐ終わる。静かにしよう。

変質者は変質者でも小心者の変質者なのだ。

ケータイのメモリーに32人登録されているといっても実際使用しているのは精々8人ぐらいのもので妹の未来と迷、これまた幼馴染でとなりマンションに住んでいる団地仲間の神堂寺創しんどうじはじめ、高校の男友達の矢嶋要やじまかなめ吉原潤よしはらじゅん、我が武居マンションの大家さんである武居おばさん、バイト先の店長、それに担任の桜先生を除いたそれ以外の登録者は社交辞令でアドレス交換をしただけに過ぎないメンバーだった。

故にこの8人で九条文也の全コミュニティーが形成されていると言ってもリアルに過言ではない。

ブーブ―とバイブ音を鳴った、携帯を開いていたのですぐ迷からのメールであることに気がついた。



件名: さっきは言い忘れたけど。



<<<なにか困ったことがあったらすぐ言ってよ?

<<<<<未来ちゃんの面倒ぐらいいつでも見るからね

<<まぁ最近は未来ちゃんの方が私より大人な気もするけど(^_^;)


<<<<2人で暮らすってなった時はどうなることかと思ったけど

<<<<<もうフミ君は立派なお兄ちゃんだね(*^_^*)



………ホントこいつは底なしに良い奴だよなぁ。

俺はすぐにメールを返信した。



件名:ていうかもう十分お世話になってるつーの!



<<<<<<<おかげで最近はやっと生活も落ち着いて来たって感じだよ。

<<<<<迷と創にはホントに感謝してる。

<<<<<<<<ありがとな!

<<<<<<正直まだ立派な兄ちゃんかどうかはわかんないけど

<<<<<<<精一杯やってみるわ!



5階で降りたあと、廊下を右に進み一番奥の角部屋に向かう。




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