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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

カスとクズとザコとヘラ

作者: ドクエナガ
掲載日:2026/04/08

四月中にデビューしたかったけどプロット作りが間に合わなそうなので練習がてら短編を投稿。

貞操逆転が好きなのでそっちバージョンも後日投稿します。(鋼の意志)

通常→貞操逆転の順で読むと倍楽しめると思います。

(通常=本編 貞操逆転=DLC含む完全版)

面白かったら評価とかお願いします。




【住宅街】




 その日はいつも通り、コンビニから彼女の家に向かって歩いていた時の事だった。




「……裏切者」


「え?」


 ――ドスッ




 突然背後から女に刺され、気が付くと白い空間にいた。


 目の前には、後光が眩しすぎる美女。




(絶対面倒くさいやつじゃん、これ)




【世界の狭間】




「あなたは死にました。なので、異世界に転移してもらいます」


「え~? 確かに流行ってるけど~」


「もちろん、チート能力(スキル)をあげますよ」


「う~ん」


「戦争でいっぱい減ったので、男が少ないですよ」


「うん?」


「ハーレムは合法です」


「むむ! そこまで言われては仕方がない!」


「ありがとうございます。では、チート能力をお選びください」




 そう言って、女神が紙の束を渡してきたので一枚ずつチェックする。




 ――ペラペラ、ペラペラペラ




「……この聖属性魔法のリザレクションって、自分にも使えるんですか?」


「使えますよ」


「じゃあこれで」


「分かりました」




 その後、聖属性魔法が使える人間は数が少ないとか、最初は冒険者ギルドに登録するのがおすすめとか、色々言われてから転移した。




【聖属性魔法】


 回復(ヒール) 怪我や病気を治す


 浄化(ピュリフィケーション) 汚れや不浄を消滅させる


 蘇生(リザレクション) 死者を蘇らせる




【トライリー王国】




 視界が切り替わると木造の家やでこぼこの道、走る馬車といった異世界ファンタジー定番の光景が目に飛び込んできた。


 「お~」と感嘆の声を出しながら少し眺めた後、女神に言われた通りの道を進み冒険者ギルドにお邪魔する。


 女神の加護(パワー)で文字は読める様になっているので、酒場や掲示板らしき物に興味を惹かれながら受付と書かれている所へ行き、美人の職員に話しかける。




【冒険者ギルド】




「あの、登録したいんですけど」


「分かりました。では、こちらの書類に必要事項をお書きください。代筆は必要ですか?」


「お願いします」




 彼女からの質問に答え、実際に魔法を見せ完成した書類を小さなコピー機みたいな道具に読み込ませると、TCGみたいなサイズの金属の板が出てきてそれを丁寧に手渡される。




「こちらが、ハジメさんの冒険者カードになります」




【冒険者カード】


 ハジメ 男


 ランク C


 スキル 聖属性魔法




 随分とシンプルな作りである。




「ハジメさんは貴重な聖属性魔法の使い手ですので、Cランクからのスタートとなります。また、ヒーラーなので戦闘試験もありません。ということで、登録完了です。これから頑張ってください」


「ありがとうございました」


「冒険者の活動について詳しく知りたい場合は、こちらの冊子をお読みください。ただし、ギルドから出る前にきちんと返却してくださいね」


「分かりました」




 彼女が差し出した冊子を受け取り、酒場の適当な椅子に座って中身を読む。




【冒険者ブック】


 冒険者ランクはGランクから始まり最高はAランクとなる


 冒険者はパーティーを組むのが基本である


 パーティーの場合ランクはメンバーの平均となる


 冒険者の主な仕事は魔物退治又は討伐である


 事前に掲示板から依頼書を取り受付で受理しなければ報酬は貰えない


 常設依頼は依頼書を取らなくても報酬が貰える


 依頼は自分のランクの一つ下から上までしか受ける事は出来ない


 依頼に失敗した場合罰金を支払わなければならない


 緊急クエストへの参加を断る事は出来ない




 等々、基本的な事が書いてあったので、とりあえず全て覚えて受付に返しに行く。




「読み終わったので返します。あと、一人で活動している高ランク冒険者の情報を教えて欲しいんですけど」


「ありがとうございます。そうですね、今一人で活動しているのは、王宮から追い出された魔法使いと、刃傷沙汰を起こした剣士の二人ですね。二人ともAランクですよ」


「……もう少しマシなのはいないんですか?」


「高ランクにも拘らず一人で活動しているということは、パーティーを組めなかったということなので」


「う~ん」


「……はぁ」




 さてどうするかと悩んでいると、受付の奥から落ち込んだ様子の中学生くらいの少女がこちらへやって来た。


 その少女は茶色の髪を腰まで伸ばし、初期装備みたいな布の服を着た村人Aみたいな少女だった。




「あの、登録お願いします」


「はい、こちらがソラさんの冒険者カードになります。大変だと思いますが、これから頑張ってくださいね」


「……はい」


「ねぇ、君一人?」


「はい……え?」


「俺も一人なんだよね。というわけで、パーティー組まない?」


「え?……ええええええっ!?」




 めちゃくちゃ驚かれた。




「あ、あの! わたし弱いですよ!? 試験に落ちてGランクになった雑魚ですよ!?」


「でも、剣持ってるって事は剣士でしょ? 正直前衛なら誰でも良いんだよね、俺の場合」


「え? え? でも……」


「とりあえずお試しで今日だけパーティー組もうよ、ね?」


「そ、そうですね、それなら……あの、わたしソラっていいます。よろしくお願いします」


「俺はハジメ、よろしくね、ソラちゃん」




 そう言ってお互いに自己紹介を済ませると、今日の宿代を稼ぐ為掲示板を見て依頼を選ぶ。




「最初はやっぱり、薬草採取が良いと思うんだけど、どうかな?」


「良いと思います。わたしじゃ魔物を倒すのは難しいですし、低ランクの仕事では宿代も稼げませんから」


「じゃあこれで決まり、常設依頼だから手続きも要らないし早速行こうか」


「はい!」




【トライリーフォレスト】




 その後、街を出て、冒険者ブックに書いてあった薬草の群生地がある森でのんびり採取していると




「シャァァァァァァ!」




 突然、額に角を生やした兎が草むらから現れた。




「ひゃっ!? あっ! ホーンラビットです! ど、どうしましょう!?」


「戦うに決まってるでしょ……ソラちゃんが」


「そっ、そうですよね……えい!」


 スカッ


「えい! えい!」


 スカッスカッ




 ソラちゃんは何度も剣を振るが全て躱され、ついにはカウンターで首を貫かれる。


 倒れて動かなくなったソラちゃんを見て、死んだと確信したのかターゲットがこちらに変わる。


 しかし




「まだ、終わってないよ?」




 そう言った瞬間、背後でカサリと音が鳴ったホーンラビットは慌てて振り向く。


 そこには、不思議そうな顔で体を起こしたソラちゃんがいた。




「あれ? ここは……」




ーーーー




 目を覚ました私は、体を起こし周りを見渡した。


 すると、笑顔のハジメさんと、驚いた顔のホーンラビットがこちらを見つめていた。




「え~と?」


「ソラちゃんは首を貫かれたんだよ。そして、俺が治した」


「あっ! そうだ、わたし、ホーンラビットと戦って、それで」


「ほらほら、ぼーっとしてる暇は無いよ?」


「え? きゃあ!」




 ハジメさんに指を指されホーンラビットの方を見ると、いきなり突撃されたが体を転がしてギリギリで回避に成功する。




「どんな怪我をしても治してあげるから、思う存分戦ってね」


「誰でも良いってそういう事ですか!?」


「シャァァァァァァ!」


「ほら、頑張れ頑張れ」


「う、うおりゃああああ!」




 それからたくさんの(実際は短かったかもしれない)時間を掛けて、わたしはホーンラビットに勝利した。




「はぁ……はぁ……つ、疲れました」


「あれ? 体力も回復する筈なんだけど」


「……精神的な話です」


「まっ、何はともあれお疲れ様。よく頑張ったね、ソラちゃん」


 パチパチパチパチ


「……ありがとうございます」


「怒ってる?」


「いえ……別に?」


「そう? ならいいけど……それで、どうする?」


「え?」


「パーティーだよ。俺はソラちゃんと、もっと一緒に居たいけど」




 そう言われて、思わず顔が熱くなる。


 だって、村にいた頃はどちらかといえば役立たず側で、誰かに必要とされた事は無かった。


 それにハジメさん、性格はアレだけど、顔は凄くかっこいいし。




「えと……わたしも、ハジメさんの事は、嫌いじゃないです。それに、どうせ他のパーティーには、入れてもらえませんから。あの、よろしくお願いします」




 そう答え、ぺこりと頭を下げると、ハジメさんは安堵したように「ほっ」と息を吐いた。




「よかった。それじゃあこれからもよろしくね、ソラちゃん」


「はい!」




 こうして、わたし達は正式にパーティーを組んだ。


 その後、ハジメさんはぐちゃぐちゃになったホーンラビットの死体を回復魔法で綺麗に直し浄化魔法で汚れを落とした後、薬草を入れてる袋に仕舞いわたしたちは街に帰った。


 肉屋にホーンラビットを売りギルドで薬草を納品すると、状態が良かったので両方とも高く買い取ってもらう事ができた。


 最低限のお金は稼げたので、ハジメさんが受付のお姉さんにおすすめの宿を聞いてそこに泊まることにした。




【宿屋】




「節約したいし、部屋は一緒でいいよね」


「そうですね。パーティーは同じ部屋に泊まるものらしいですし」




 そうして宿に着くと、お湯代を節約する為ハジメさんが浄化魔法で汚れや匂いを落としてくれたので、装備を外して一緒にご飯を食べてベッドに入る。すると




「お邪魔しま~す」


「へ?」




 自分用のベッドがあるにも関わらず、何故かハジメさんはわたしのベッドに入ってきた。




「あ、あの?」


「ちょっと、寂しくて……ダメ?」


「い、いえ……大丈夫です」


「ありがとう、ソラちゃん」




 一人用に二人は入れないので横を向いてスペースを確保すると、ハジメさんは嬉しそうに入ってくる。


 当然、ハジメさんも横を……こちらを向いているのでお互い見つめ合う形になり、どんどん顔が熱くなってしまう。




「ねぇ、ソラちゃん、大事な話があるんだけど」


「な、何でしょう?」


「俺と、付き合ってくれないかな」


「……え!?」




 一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。


 ……理解した後も、何で自分なのか理解出来なかった。




「な、何で、わたし何ですか?」


「顔が好みだったから。一目惚れだったんだよね、実は」


「う、うそ」


「ほんとほんと。でも今は、性格も含めて全部好きだよ。他の男に渡したく無いから、ちょっと焦っちゃった。ごめんね? いきなりこんな事言われても、迷惑だよね」


「い、いえ、大丈夫です。確かに、ビックリしましたけど……嫌では、無かったので」


「本当? ……じゃあ、触るよ? ソラちゃん」


「……はい」




 そう言って、ハジメさんはわたしの頬に優しく手を添え、ゆっくりと顔を近づけてくる。




(うわ、うわ……し、しちゃうんだ、本当に、きっと、最後まで。ど、どうしよう、わたしも、何かした方がいいのかな?)




 こんな事初めてで、どうすればいいのか分からなかったわたしは……とりあえず目を閉じた。




「……んっ」




ーーーー




【トライリーフォレスト】




 あれから、何日も経った。


 今日もわたし達は、薬草を採取しながらたまに乱入して来る魔物を(時間を掛けて)倒す、そんないつも通りの日々を過ごしていた。




「ブモォォォォォォ!!」




 しかし、この日乱入して来たのはこの森でも上位の強さを持つ、巨大なイノシシみたいな魔物グランドボア。


 わたし達では逆立ちしても絶対に勝てない、圧倒的な強者がこちらを睨み付けていた。




「ヤバっ、ヤバいですよハジメさん! どうしましょう!?」


「お~、どうしても無理?」


「そもそも攻撃が通じません!」


「じゃっ、逃げるか……リザレクション」




 その瞬間、視界が白く染まり何も見えなくなる。さらに




「ひゃあ!?」




 何かに――恐らくハジメさんに持ち上げられ、風を切るような感覚に襲われる。




「何!? 何が起きてるんですか!?」


「しー、静かに。音で気づかれる」


「もが……」




 何が起きたか分からず焦って大声を出すと、ハジメさんに手で口を塞がれる。


 体を枝や葉で傷つけられながら運ばれ、目が見えるようになった時には既に森の外だった。


 ハジメさんは体勢を整えると、わたしを優しく地面におろす。




「あ、ありがとうございます。えと、あの時何が?」


「あの時は……まず魔法っていうのは魔力を注げば注ぐ程威力が上がって演出も豪華になる訳ねだから大量に魔力を注いで光の演出を豪華にしたリザレクションを目の前で発動することで目潰して遠くに小石を投げて気を取られた所でソラちゃんを担いで反対方向に逃げて体臭とかの痕跡をピュリフィケーションで消してヒールを掛け続ける事で疲れない体にしてひたすら――って感じかな」


「……ヘー」




 何を言っているのか半分くらい分からなかったけど、取り敢えず分かった振りをする。




「流石に今回はヤバかったし、仲間を増やそうと思うんだけど」


「そうですね。わたしも賛成です」




ーーーー




【冒険者ギルド】




 次の日、ソラちゃんと一緒に冒険者ギルドに行くと、朝から酒場で飲んでるお手本の様な魔女服を着て、長い青髪を床まで垂らしたAランク冒険者のリィンが居たので早速話しかける。




「初めまして、俺はハジメ。こっちはパーティーメンバーのソラ、Aランク冒険者のリィンさんですよね。俺たちの仲間になってくれませんか?」




 そう言うと、「何を言ってるんだこいつ、正気か?」みたいな目を向けられる。




「あ~? ……ここの酒~、全部奢ってくれるなら~、考えてやらん事もな~い」


「遠回しに断られたような気がする」


「……実際に断られたと思いますよ」


「じゃあしょうがない――ヒール」


「んぁ? ちょっと、何すんのよ。人が気持ち良く飲んでると……待って、今ヒールって言った?」


「さあ? 言ったかも?」




 そう答えると、彼女は顎に手を当て考える様な素振りを見せる。




「……良いわ。聖属性魔法を研究させてくれるなら、あなた達のパーティーに入ってあげる」


「はい決定、これからよろしくね。リィンさん」


「よろしくお願いします」


「よろしく……言っとくけど、足を引っ張ったら殺すから」


「だってさ、ソラちゃん」


「せ、精一杯頑張るので、命だけは」


「……冗談よ、冗談」




 軽いアイスブレイクを済ませた後、パーティーに誘った経緯を説明すると彼女はドヤ顔で「余裕」と言った。




「で、イノシシ退治するとして、依頼は受けるの?」


「受けるよ。宿代くらいは稼いでおきたいからね」


「そんなにお金無いの? ……何なら家に来る? 部屋も余ってるし、その方が効率良いでしょ」


「ありがとう。夜うるさくしたらごめんね? ソラちゃんが」


「やっぱ無し」


「残念」




 そんなこんなで、グランドボアを討伐する為に三人で森へ向かう。


 その間ずっと、ソラちゃんは両手で赤い顔を覆い隠していた。




「可哀想に、一体誰がこんな酷い事を」


「いや、あんたでしょ」




【トライリーフォレスト】




「サンダーランス」


 ――ズガドオオオオオオン!




 彼女がそう言いながら杖を振ると雷の槍が空から落ちてきて、グランドボアの胴体を消し飛ばした。


 支えを失った顔と後ろ足がどちゃりと地面に落下し、赤い水たまりを作っていく。




「えっ強、一撃じゃん」


「……わたし達の苦労は一体」


「あのねぇ、言っとくけど私、王宮魔術師の一番弟子だから。……元だけど」


「え? 何か言った?」


「何でもな~い。で? あんたは何を見せてくれるのかしら?」


「別に、唯のヒールだよ……ヒール」




 魔法を発動すると、グランドボアの残った部分の傷口――断面が光に包まれ、その光が徐々にお互いに向かって移動すると、光が無くなった部分に消し飛んだ筈の胴体が現れる。


 そのまま光は進んで行き、途中で止まる。




「……ねぇ、何か止まったけど」


「上半身と下半身の距離が遠すぎてくっつけないみたいだね。だからこうやって」




 地面に落ちてるグランドボアの頭を掴み、上半身と下半身の断面をくっつけると傷が塞がり光も消える。


 ピュリフィケーションで血を消滅させると、そこに残っていたのはとても死んでるとは思えない、綺麗すぎるグランドボアの死体だった。




「あんた、マジに何者なのよ。こんな事出来るの、聖女様くらいでしょ」


「え?」


「へ~、そうなんだ」


「……まさかとは思うけど、リザレクションまで使えるとか言わないわよね。あれを使えるのは、世界で聖女様ただ一人なんだけど?」


「あわ、あわわ、あわわわわ!?」


「さあ~? ……大丈夫だよ~ソラちゃん、俺は生まれも育ちも一般だから、実はお貴族様とかそんなオチは無いから」


「ホッ、ホントですか!? 信じますよ!? 信じますからね!?」


「……ほとんど確定じゃない」




 最後になんやかんやあったが、無事に復讐――もとい討伐が終わったので、死体をリィンの魔法で異空間に収納し街に帰った。


 グランドボアの死体はそれはそれは高く売れたので、少し良い宿に変えたり二人で服や装備を購入した。




「ソラちゃん可愛い~、お姫様みた~い」


「え~? それは言い過ぎですよ~。えへ、えへへ」




ーーーー




【冒険者ギルド】




「ランクアップおめでとうございます。ハジメさん、ソラさん、これからも頑張ってくださいね」


「は~い」


「ふわ~……見て下さいハジメさん! Fランクですよ! Fランク!」


「おめでとうソラちゃん。よーしよしよしよしよしよし」


「えへへへへ~」


「何やってんのかしら、こいつらは」


「ふふっ、実は混ざりたかったり?」


「そんな訳無いでしょ」




 Aランク冒険者のリィンが仲間になった事で魔物討伐系のクエストが受けられる様になり、収入が増え、ランクもアップしギルドで少しずつ噂される様になってきたある日。


 いつも通りギルドに行くと、知らない女が甘ったるい声で話しかけてきた。


 そこに居たのは長い紫の髪を左右で結び、黒いドレスの様な装備を身に着けた地雷系みたいな見た目の女だった。




「あの~、ハジメさんですか~?」


「そうだよ、俺に何か用かな?」


「やっぱり~、かっこいいって聞いてたから~、すぐに分かりました~」


「ありがとう、君みたいな可愛い子にそう言ってもらえると凄く嬉しいよ」


「……あの~、ハジメさんに~、お願いがあるんですけど~」


「何かな?」


「ユアと~、お付き合いしてほしいなぁ~、って」


「ごめんね、僕もうお付き合いしてる子がいるから。ソラちゃんが良いって言ったらね」


「えっ!? ここでわたしに振るんですか!?」


「そりゃそうでしょ、彼女なんだから」


「ソラちゃ~ん、おねが~い」




 そう言って、ユアはソラちゃんに抱きついた。色仕掛けしてんのかってくらい激しく抱きついた。


 豊満な胸の中にソラちゃんの顔が沈み込む。




「もが、もがが」


「ソラちゃんって~、剣士でしょ~? 私も剣士だから~、色々教えてあげられるよ~?」


「もが」


「三番目でも良いから~、こんなに好きになったの初めてなの~、お願~い」


「ねぇ、その二番目って私じゃ――」


「も、もが、もががももがもが」


「ありがとう~、ソラちゃん大好き~。ぎゅ~」


「もがー!?」


「おい無視すんな」




 平和的な交渉の結果、取り敢えず今日だけパーティーを組む事になった。


 リィンさんは凄く嫌そうな顔をしていたが、結局何も言わなかったので無問題(モーマンタイ)という事だろう。


 その後、いつもの森に行き、二人の修行を少し下から眺めながらリィンさんと薬草を採取して皆で帰る。




【トライリー王国】




「ソラちゃん偉~い、これならすぐ強くなれるよ~」


「はい! これからもよろしくお願いします、師匠!」


「仲良くなったみたいだし、正式に採用かな?」


「本気? あの子が何をしたか、知らない訳じゃないでしょう?」


「浮気した彼氏を斬ろうとした事? ……ま、自業自得でしょ。本人は一番じゃなくても良いみたいだし、大丈夫じゃない? 多分」


「それはそうかもだけど……私を巻き込まないでよ」


「はいはい」


「師匠みたいな可愛い恋人が居るのに浮気するなんて、最低ですね。プンプン」


「ソラちゃん好き~。ぎゅ~」


「もが」




ーーーー




【宿屋】




 その後、ギルドで解散した俺達は三人で宿に帰ってきた。




「あの~、ユアも、同じ部屋に泊まって良いの~?」


「……そういえばハジメさん、まだ返事してませんでしたね」


「確かに……俺も、ユアの事好きだよ。恋人としてこれからよろしくね」


「うん!……ふふっ、これからは~、ず~っと一緒だからねぇ? ダ~リ~ン」




 昼間の告白を受け入れ、ユアと恋人同士になった瞬間ベッドに押し倒される。


 ユアは首元に顔を埋めると匂いを嗅ぎながら、その豊満な胸だけでなく全身を擦り付けて勝手に気持ち良くなる。




「はぁ……はぁ……ダ~リ~ン。ユア、もう我慢出来ない~」


「我慢する必要なんて無いよ。俺は、どんなユアも受け入れるから」


「ダ~リ~ン。好き~、大好き~」




 ユアからのキスの雨を受け止めながら、チラリとソラちゃんの方を見るとコソコソと何かを企んでいた。




「ソラちゃん? 何をしてるのかな?」


「え!? 別に、ハジメさんに勝つチャンスかも何て思ってませんよ!?」


「何も言ってないけど?」


「ソラちゃん可愛い~。ユアが~、いっぱい教えてあげるね~?」


「はい! 師匠!」


「今までで一番良い返事」




ーーーー




【冒険者ギルド】




 あの女――ユアが仲間になった翌日、私はいつも通り昼頃にギルドにやって来た。


 しかし、今日はいつもと違い三人が居なかったので、暇潰しがてら受付のクララに話しかける。




「おはよう」


「おはようございます、リィンさん」


「三人は?」


「まだ来てないですよ?」


「ふーん、珍しい」


「……そういえばリィンさん、最近お酒飲まなくなりましたよね~。……おめでたですか?」


「違うわ! 家以外で飲むとあいつに治されんのよ……はぁ」


「大変そうですね~」


「……他人事だと思って」


「でも、最近のリィンさんは楽しそうですよ?」


「まあ、ね」


「ふふっ」


「……何笑ってんのよ」


「別に~?」


「うざ」




 そんな感じで時間を潰していると、漸く三人がやって来る。




「おはようー」


「おはよう、……何? その状況?」


「二人が歩けないって言うから、仕方なく」




 ハジメはいつも通り。だけど、ソラとユアの二人が両側からハジメの腕にしがみついていた。


 その足は、生まれたての子馬の様にプルプルと震えている。




「す、すみません、リィンさん。今日は……休みたいです」


「ダーリン、自分だけヒール使うの、ズル過ぎ」


「あーうん、別に良いけど」


(……あれ? もしかして、この中で経験無いの、私だけ?)




 二人を見れば、昨夜がお楽しみだったのは自明の理。対して私は一人で呑み潰れていただけ。


 昔、師匠が言っていた。帰ったら夫が居る生活はとても素晴らしいものだと。


 当時は全く興味を持てなかったが、最近は――こいつらとつるむ様になってからは一人の家が寂しいと感じる時も確かにあった。


 さらに、二十歳(結婚適齢期)を超えているのは自分だけという現実も合わさり、私は変な事を口走る。




「ねぇ、前に言ったじゃない? 家に泊まらないかって……あれ、どう?」




 言ってから後悔する。


 こんなの誘ってる様なものじゃないかと、断られたらどうするんだと、しかし




「へぇ……じゃあ、お言葉に甘えようかな?」


「え、ええ、そうしなさい?」




 今更、吐いた唾を呑む事はプライドが許さない。


 私は覚悟を決めるしかなかった。それに……




(受け入れるって事は、少なくとも嫌では無いって事よね? まさかこいつ、私の事好きなんじゃ。は~全く、それならそうと早く言いなさいよね馬鹿、変に緊張しちゃったじゃない、全く。これだから子供(ガキ)は困るわ~ほんと、まあ? 私って美人だし、それに――)




 と、私が一人まんざらでもなく覚悟の準備をしている裏で、恐ろしい話が進んでいた。




「あの~、ダーリン? ユア達には~、ちょ~っと荷が重いかなぁ~って」


「そ、そうですよ。これ以上は死んじゃいます」


「あっ、そうだったね。はい、ヒール」


「……最初から~、こうして欲しかったな~」


「朝はダメって言ってたのに」


「言質取ったから、もういいかなって」


「……はあ!? あんた、私の事嵌めたわね!?」


「まだハメてないよ」


「うっさいわ!」


「じゃあユア達は買い物行くから~、ごゆっくり~」


「ご、ごゆっくりー!」


「ちょっと!?」




 それだけ言うと、二人はダッシュでギルドを出ていった。




「じゃあ、帰ろうか。俺達の家に」


「……お、お手柔らかに」




 次の日も、私達は仕事を休んだ。




ーーーー




 その後、王女に求婚されたり、エルフに信仰されたり、聖女と共に多くの命を救ったりしたが




 それはまた、別のお話。




 ―完―




初投稿→ハジメ

純粋→ソラ

鈴の音→リィン

夢→ユア

(受付)嬢→キャバ→クララ

リトライ→トライリー

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