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翌週の月曜日。
教室で普通に過ごしていた時だ。
「なあ、藍沢。ずっと聞きたかったんだけど。お前さ、上原さんと付き合ってるのか?」
「え? ああ。付き合ってるけど?」
普通に答えただけなのに、教室が一瞬シーンとなった。
「えっっっっ!!?」
「マジ!?」
「藍沢くんが上原さんと!?」
「やっぱそうなんだ!」
教室中が妙にざわついた。
えっと……どうした?
「よ、陽太っ!? 何言ってるの!?」
冬華が顔を真赤にして俺のところに来た。
「え? 別に隠すことじゃなくないか?」
「そうじゃなくて……!」
「冬華が俺の彼女だってこと、分かってもらったほうが俺も安心するし」
「安心する……?」
「おう、冬華が他の奴に狙われる心配しなくていいだろ?」
「はぅぅん……」
なんだろう。周りの視線が一斉にこちらに集まったような。
「おい藍沢ー! いつからだよ! お前いつから上原さんと?」
「あー、先週くらいから?」
「マジかよ、上原さんってすげー美人だもんな~羨ましいぜ!」
「美人? 俺はかわいいって思ってるけどな」
「「「おおーっ!!!」」」
「ちょっっ……陽太ぁぁーっ!!」
なぜか大声で叫ぶ冬華。
急にどうした? 発作か?
聞かれたから答えただけなんだけど……もしかしてマズったか?
「ちょっと……陽太ぁ~、恥ずかしいよ……」
「え? なんで?」
「まーまー。みんな落ちついてって。私は前から知ってたよ」
あ、姫川さんが割り込んできた。
「そこんとこ詳しく教えてくれ、姫川さん!」
「はっは~。知りたければ、私に焼き肉を奢りなさい」
「奢るっ、奢るから、今度俺と一緒に行こう!」
「バカか? 俺も行くぞ」
「はあ? 俺も同行させてもらうが?」
いつの間にか、姫川さんにクラスの男子が群がっていて、めちゃくちゃ盛り上がっていた。
◆
(冬華視点)
ああもう……
なに普通にみんなの前で『かわいいって思ってる』とか言ってるのよ。
空気を読んで控えめだけど優しい『私の陽太』はどこへ行ったのよ。
今思い出しても恥ずかしいよ……
「それでね、こんど焼き肉に行くことになったんだ~」
姫川は「しかも贅沢コースだよ?」と得意げに笑っている。
うん……姫川に関しては、私たちのことを話すと言うより、単純に肉が食べたいだけだと思うから心配ないだろう。
昼休みのピロティの空気は、不思議と以前と変わらなかった。
「でもよかったね〜、上原さん。藍沢くんとお似合いだってみんな言ってたよ」
「そう? その……ありがとう、姫川さん」
「ま、私は最初から藍沢くんには興味なかったし!」
「えっ。バリバリあったんじゃ……」
「なかったの……そう! なかったことにしたの!」
「……そっか。ありがとね」
意外だったことだけど、姫川は私と陽太の仲を応援してくれている。
ライバルから友達になったのだ。そのことが心地よかった。
「はい、その話おわり〜! それよりもさ、また3人で遊ぼうよ!」
強引に話題を変える姫川に、私も陽太もつられて笑ってしまう。
3人の関係は、変わったけど……壊れてはいない。
むしろ、前よりも自然になった気がする。
私は昼食の弁当を広げながら、こっそりと陽太を横目で見た。
シーチキンおにぎりを口に運んでいるところだ。
前髪が少しだけ目にかかっている。
なんだろう……ただおにぎり食べてるだけなのに、かっこいいな。好きだな〜。
私の彼氏として、こうして隣にいるのが、たまらなく嬉しい。
「……上原さん」
「ひゃいっ!?」
「さっきからずっと藍沢くんのこと見てるけど~。ていうか、見すぎですけど~」
「ご、ごめんね姫川さん。さあ陽太、男らしくビンタされて!」
「え!? あれマジの話だったの?」
「あはは。しないよ、あんなの冗談だし。でも……ほんと、ごちそうさまです」
「っ……!」
姫川が「にひひ」と笑い、陽太が「助かった」という顔をしている。
なんか……幸せかも。
ただ、幸せなだけなのに。
妙に不安に感じるのは……きっと今までの人生で、こんな幸せを経験したことがないからなんだろうか?
◆
(冬華目線)
翌週の金曜日。
「なあ冬華、明日なんだけどさ。よかったら冬華の家行ってもいいか?」
「……えっ」
いつもの放課後の帰り道。
陽太からの突然の申し出に、私の脳みそが一瞬フリーズした。
「い、いいよっ! うん! 全然いいよ! えっと……何しに来るの?」
「え? 遊びに……だけど?」
「あっ……あ、遊びに。うん。遊びにね。うん。そうだよね」
……ヤバい。
意味不明なくらい、ぎこちない返事をしてしまった。
前回は『ずぶ濡れの陽太を乾かす』という目的があった。そう、大義名分があったのだ。
でも今回は違う。
私の彼氏として、彼女の家に遊びに来るシチュエーション。
……ど、ど、ど、どうすればいいのー!
そもそも恋人同士って、家で何をして遊ぶの?
テレビ? ゲーム? 映画?
それとも……
えっ、もしかして……陽太……!?
そ、そういうことーっ!?
私たち、もうそんな関係になっちゃうの?
ちょっと……は、早くない?
こ、心の準備がまだ……
「あ……あわわ……」
「ん、なに? なんか言ったか?」
「えっ……うん。うん、なんでもない! 気にしないで!」
どうしよう……
帰宅してから、急いで陽太を迎え入れる準備を開始した。
まずは掃除だ。
部屋を片付け、掃除機をかけていく。
もともと綺麗にしている方だけど、それでも彼氏が来るとなると、気になる箇所が……。
洗面台の水垢。カーテンの皺。冷蔵庫の中のストック。ティッシュの残量。
そしてクローゼットの中には、いつ陽太と『そういうこと』になっても大丈夫なように『コンドーム』を準備しておく。
……完璧。
あとは……行為の最中、天井のシミを数えてればいいのよね。
天井は……何個かシミがあるみたいだし、コレなら大丈夫。




