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(???視点)

 

「姫川さんは今回も……ちゃんと、動いてくれましたね」


 昼休みも終わり近づいた頃。


 みんなが教室に戻り出し、少し静かになり始める時間。


 私は人気のない階段で1人、つぶやきました。


 姫川さんは、私の助言通りにあの2人へ声をかけました。


『私もさ、一緒に食べてもいいかな?』


 タイミングも、距離も、言葉の選び方も問題ありませんでした。


 あの子は本当に優秀で、素直で……そして、とても扱いやすいです。


 これで――今度こそ本来の形に戻ることでしょう。


 ですが……藍沢陽太さんの隣をキープしているイリーガル……上原冬華さんが、普通に受け入れるとは思いませんでした。


 拒絶するでもなく、逃げるでもなく。


 怒るでもなく、場を乱すことなく。


 正面から姫川さんと渡り合うとは予想外でした。


「しかし、手強いですね……」


 おっと、また独り言が零れてしまいましたね。


 場の流れは、完全に姫川さんが作りました。自覚などは無いのでしょうが、さすが主人公と言ったところですね。


 藍沢さんの隣をしっかり確保していましたし。


 それなのに……藍沢さんの視線も、意識も、最後に落ち着く先は上原さんでした。


 これは異常事態です。


 上原さんは、本来シナリオに絡まないはずのただの『モブ』なのですが。


 藍沢さんの好感度が、主人公である姫川さんよりモブの上原さんの方が上回っているのでしょう。


 姫川さんの恋愛ステータスは、主人公に相応しい補正があるはずなのです。


 考えにくいことですが……姫川さんのステータスよりも、上原さんのステータスが上回っているとでもいうのでしょうか?


 そんなことは、ありえないと思いますが……


 ですが、上原さんは完全なシナリオブレイカーと思って間違いないでしょう。


 用心はしておいた方が良さそうですね。


 遊園地の件も、あることですし。


 私が渡したチケットで、シナリオにないイベントをねじ込むことに成功したのですが……


 上原さんを排除して、2人の距離を縮めるはずがなぜかうまくいかなかったようですし。


 遊園地と言えば『本来は起こらないはずのイベント』でしたが、整合性を保つにはこのくらいの介入は仕方ないでしょう。


 この世界にはあるべき姿というものがありますし。


 多少シナリオを捻じ曲げてでも、異常を収束させるのが、私の役割ですから。


 だから、この程度なら問題はないのです。


「しかし、本当に手強いですね……」


 ですが、姫川さんなら上原さんを排除してくれるでしょう。


 これ以上、予定を組み替えるほどではありません。


 修正は不要。さらなる介入も不要。


「もう少しだけ、様子を見ましょう」


 後は……雨の日に追い込めば良いでしょうし。


 予定表の端に、あの子の名前を書きかけて――やめました。  代わりに、小さな星の印だけを刻印します。


 不確定要素という印。


 私は手に持っていた手帳を、パタンと丁寧な動作で閉じました。

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