表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/37

11

「陽太。帰ろ」


「お、おう」


 放課後になり、いつもの様に冬華が笑顔で話しかけてくる。


 もう4月も終わりそうになっている。


 あと数日でゴールデンウィークだ。


 入学したばかりだと思っていたけど、そろそろ一ヶ月経つらしい。


「どうしたの陽太? 今日は静かだね。具合でも悪い?」


「あ、いや……なんでもない。ちょっと考え事してて」


「そう? 悩んでるなら相談のるから、遠慮しないで言ってね」


「おお、ありがとう……」


 何のことはない。


 俺は……姫川さんに付き合ってるか聞かれて、冬華を意識してしまっているだけだ。


 『2人って、もしかして付き合ってるの?』


 姫川さんの言葉が、山彦みたいにリフレインしてしまう。


 その度に冬華のことを直視できない自分がいる。


 全然具合なんて悪くないんだ。ただ心臓が言うことを聞かないだけで。


 少し歩いたところで、俺は心を決めて冬華に話を切り出した。


 ◆

 

(冬華視点)

 

「なあ、冬華……」


 いつもの様に並んで歩いていると、陽太が神妙な雰囲気で話を切り出してきた。


「ん、なに?」


「ゴールデンウィーク……予定あるか?」


「え?」


 もしかして、私を誘ってる?

 

 突然の話に、思わず足が止まってしまう。


「ゴールデンウィーク……?」


 最近、陽太の考えが全然読めない。ゲームとループの知識が通じない。


 今回の陽太は、今までのループで見てきたどんな陽太とも違う。


 こんな時にセーブ能力が使えないなんて……


 以前のように攻めて攻めるやり方は、やり直し能力ありきの捨て身の作戦なわけで……


 能力が使えなくなったと分かってからの私は、少し慎重に動くか悩んでいたのだけど。


「ああ。連休になるわけだし……せっかくだから、どこか行かないかって」


 ちょっとまって……


 これって……デートの誘いじゃない!?


 この時期にデートなんて、ゲームイベントにも無いんだけど……でもチャンスなのは間違いない。


 もしかして、私がシナリオ全無視して本気で動いた影響?


 ゲーム自体のシナリオが変わってきているのかも。


「陽太……本当?」


「もちろん。嫌じゃなければだけど」


「……嫌なわけないよ」


 だってこれは、好感度を稼げるチャンスだから。


 こうやって好感度を積み上げていけば、12月の告白イベントは今度こそ成功するはず。


「それで……どこにいく予定なの?」


「遊園地とか、どうかなって思うんだけど」


「遊園地……いい! 楽しそう。行ってみたい」


 陽太が誘ってくれた初めてのデート。しかも遊園地なんてデート場所として完璧だ。

 

 高鳴るテンションに、声が思ったより弾んでいた。


「そっか、実はさ」


「うん、なあに?」


「姫川さんが……3人で出かけたいって言ってて」


「……えっと、姫川さん? 3人……?」


 うそっ——2人じゃないの?

 

「ああ。今日姫川さんと話してたらさ――」


 陽太の話が、頭に入ってこない。


 せっかく順調だと思っていたのに、今になって姫川が——主人公が、攻めてきたってこと?


 原作には、どういうルートを辿ってもこんなイベントなんてなかった。


 主人公がモブを倒しにくるって、どういうこと?


 こんなの聞いてない。世界が強制的に軌道修正をかけてきた?


 それとも、他に何か要因が?

 

「――それでさ。姫川さんが『チケット3枚もらったから、みんなで行かない?』って誘ってくれたんだ」


「……そう、なんだ」


「あれ、どうした冬華? もし無理なら、この話は断るけど」


「…………」


 私が断れば陽太は……姫川と2人で出かけてしまうんじゃないだろうか?


 チケットは既にあるわけだし、あの姫川ならそのくらい平気でやってのけそうだ。


 ――だめだ、絶対に断れない。


 陽太と姫川を2人きりにさせたら……また陽太を取られてしまう。


 今、すごく良い感じなのに。


 このタイミングで陽太を取られるわけにはいかない。


「ううん……大丈夫。3人でもいいよ。みんなで一緒に行こう」



 やっぱり、全力で陽太を攻略しないと……


 ◆


 空は澄みきっていて、気持ちがいい。こういうのを行楽日和っていうんだろうな。


「今日は楽しくなりそうだな」


 ウキウキした気持ちで待ち合わせ場所まで行くと、既に2人が待っていた。


「藍沢く〜ん、こっちこっち!」


 嘘だろ……まだ集合15分前なんだけど。


「おはよ、陽太」


「藍沢くん、今日はよろしくね!」


「ああ、おはよう。ていうより、2人とも早くない?」

 

 それに2人とも学校で見るのと雰囲気が違う。


 冬華は淡いラベンダー色のブラウスとフレアスカートという組合せで、髪も緩く巻いてある。何というか……すごく大人っぽい。


 雑誌のモデルです、と言われたら普通に信じてしまいそうだ。


 姫川さんは逆に、年相応の健康的な感じを全開に押し出している感じだ。


 ショートパンツに少し大きめのパーカーとスニーカー。動きやすそうな格好だが、スラリと伸びた足が眩しい。


 しかし、2人の対比がすごいな。クールビューティーな冬華と、元気系美少女の姫川さん。系統はまったく違うけど、どちらもめちゃくちゃかわいい。


  この2人が――クラスのツートップが並ぶと絵面のパワーが強くて嫌でも目立つ。


 さっきから、道を通る人たちの視線が自然と集まってしまっているくらいだ。


「遊園地、楽しみだね!」


「ああ、姫川さんは張り切ってるな」


「ほらほら藍沢くん。私たちの服についてどう思うか言わなきゃ!」


「……えっと、2人とも、いつもと雰囲気が違うな」


 姫川さんとその横で無言の圧をかけてくる冬華に圧倒されて、辿々しく情けない言葉しか出ない。


 すると、姫川さんが不満げに頬を膨らませる。


「むー、違うでしょ藍沢くん。そこは『今日の服、可愛いね』って言うところでしょ?」


「えっ…ああ、ごめん。その、2人ともすごく良いんじゃないかな?」


「えへへ、ありがと。藍沢くんに褒められると、なんか嬉しいな!」


 なんとも抽象的な褒め方だったけど、姫川さんは、ぱあ〜っと明るい笑顔で喜んでくれた。


 美少女の素直な反応に思わずドキッとしてしまうが、隣の冬華はと言うと、ジト目を俺に向けていた。


「……陽太」


「ん、どうした冬華?」


「褒めようとする姿勢は評価してあげるけど……残念だけど0点!」


「れ、0点……!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ