エピローグ 島の夜明け
半年後。 相島は、湊浜市の防波堤に立っていた。 あの日、立川と最後に会った場所だ。 手には缶ビールが二本。 一本を開け、海に注ぐ。
「……終わったぞ、立川」
郷田は実刑判決を受け、政界を引退した。土地取引は無効とされ、不動産会社は、違約金の支払いができずに破産した。 県知事も辞職し、県警担当部長も更迭された。 立川の死は、公務災害として認定され、遺族には補償が支払われた。
街は静かだった。 一時のバブル熱は去り、不動産屋たちは去っていった。 再びシャッター通りに戻った商店街。 だが、相島には、以前とは違う空気を感じていた。 「嘘の希望」が消え、厳しいけれど「本物の現実」に向き合おうとする、静かな覚悟のようなものが、街の人々の顔に戻りつつあった。
「もともとこの土地は巨大工場には不適格だったんだ。国策なんてなくても、俺たちは生きていけるさ。」
相島は残りのビールを飲み干した。 潮風が吹く。 雲の切れ間から、夕日が差し込み、海面を黄金色に染めていた。 それは、錆びついた金色ではなく、暖かく、力強い光だった。
相島は背を向け、歩き出した。 明日の朝刊のネタを探しに。 この街の、小さな真実を伝えるために。
(完)
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。




