第四章 暴かれる青写真
小章① 檻の中の真実
留置場の中は冷たかった。 取り調べは苛烈を極めた。 「誰からデータをもらった?」「他に誰に渡した?」 国家特務指令室の刑事は、同じ質問を何百回も繰り返した。寝ることも許されず、精神を削り取られていく。
だが、相島は黙秘を貫いた。 立川の名は絶対に出さない。彼はもう死んでいるが、彼の家族を守らなければならない。 そして長谷川の名も。
三日後。 突然、釈放された。 弁護士が来たわけではない。ただ、「処分保留」として放り出されたのだ。 警察署の玄関を出ると、そこに長谷川が待っていた。 彼は満面の笑みで、一冊の雑誌を掲げていた。
「先輩! やりましたよ!」
『週刊真相ジャーナル』の最新号。 表紙には、巨大な見出しが踊っていた。
『スクープ! シリコン・アイランドの汚れた礎』 『郷田代議士と元秘書、50億円の土地転がし疑惑』 『告発した県職員、謎の死の真相』
相島は雑誌を受け取り、震える手でページをめくった。 そこには、USBのデータだけでなく、長谷川が独自に掴んだ「鬼頭から郷田の政治団体への資金移動」の証拠写真まで掲載されていた。 完勝だ。
「……よくやった」
相島は長谷川の肩を叩いた。
「先輩が囮になってくれたおかげです。……これで、郷田も終わりですね」
「ああ。……いや、まだだ」
相島は空を見上げた。 記事が出たからといって、権力者がすぐに裁かれるわけではない。 ここからが、本当の泥仕合だ。
小章② 崩壊
週刊誌の発売と同時に、世論は沸騰した。 テレビのワイドショーは連日このニュースを取り上げ、国会でも野党の激しい追及が始まった。 「国策の名の下に、私腹を肥やすとは何事か!」 「死んだ職員の無念を晴らせ!」
東都地検特捜部が動いた。 世論の風圧に押され、ついに郷田の事務所への家宅捜索が入ったのだ。 テレビカメラの前で、段ボール箱を抱えた係官たちが出てくる。 郷田剛造は、議員会館で記者会見を開いた。 「私は何も知らなかった」「秘書が勝手にやったことだ」 トカゲの尻尾切り。 だが、今回は通用しなかった。鬼頭洋二が、司法取引に応じて全てを自供したのだ。
一週間後。 郷田剛造、逮捕。 斡旋収賄および政治資金規正法違反。 シリコン・アイランド構想は白紙撤回され、湊浜市の土地は再び、ただの荒れ地へと戻ることになった。




