陶器のサビちゃん
掲載日:2025/10/09
私はサトミ。27歳。経理事務。残業を終え帰宅した私は、軽く夕飯を食べ、お風呂に入った後、今リビングにいる。
イライラする。嫌みな上司、おしゃべりばかりのルーキー、合わない数字。うんざりする。
私は、テーブルに置いてある陶器で出来た猫のミニチュアを手に取った。この陶器の猫はあまり可愛い出来とはいえない。渋い茶器のような色あい。少しムスッとしたような表情。フリマで安売りされていたのも納得できる。
私はこの陶器の猫をサビちゃんと呼んでいる。
陶器のサビちゃんは、ひんやりとしていて私の心をクールダウンさせてくれる。少し落ち着いた私は、実家で飼っていた本物の猫のサビちゃんを思いだす。段ボールに捨てられていたサビ猫のサビちゃん。無愛想猫のサビちゃん。私の布団に潜り込むサビちゃん。サビちゃんを抱くと私はいつも幸福な気持ちで眠りにつくことができた。
思い出に浸っているうちに手の中の陶器のサビちゃんは、私の体温で温かくなっていた。私のくさくさした気持ちを吸い取ってくれたようだ。
時計は午前0時を指している。
私は、サビちゃんをテーブルに戻した。
「おやすみ、サビちゃん」




