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着信

作者: らいらい

深夜のドライブイン


少し眠い目を擦りつつ、霧が少し出てきて見通しも少し悪くなったし休憩することにして

トイレ休憩のついでに顔でも洗って来ようと車を降りた

夏前のこの時期の霧は、少し体に纏わりついて来る様な気がする


トイレと洗顔をすまして自動販売機で温かいブラックコーヒーを買って車に戻り

ここで少し休憩でもしようかと欠伸をしながら考えてる

深く寝てしまわない様にシートを浅く倒し、煙草を吹かす


本当なら暖かい布団に包まれている筈だったのに・・・

そんな事を思いながら、就寝前の着信を思い出す


明日は特にやる事ないからゆっくり昼頃迄寝ていようか、なんて考えながらベッドに腰を掛けた時に着信があった

普段なら出ないような非通知の着信だったけれど、本当に偶然明日はお昼頃迄寝ようといつもの時間に鳴るアラームをセットしなおすところだった

「非通知」の文字は確認出来たけれど指はもうスマホに向かっていた

あっと思った時には受けていたし、こんな時間に一体誰よ・・・と思いつつも受けてしまったものはどうしようもない

あきらめて「もしもし」と言えば、少し間が空いてから「助けてください」と、どこかで聞いたような声が聞こえてきた

正直に言えば、助けるギリなんてものは無いのだけれど「何故私に?」尋ねてみれば知り合いは私しか居ないらしい

そうは言われてもあなたは一体どこのどなた様で?と聞きたかったが、聞いてはいけないような気がした


取り合えず説明された場所に向かっているのだが、これが正解かどうかも分からない

要領を得ない説明で思いついた場所は、私が子供の頃遊んでいた小さい山の上の公園だった

特に遊具があるでもなく、駐車場も車が5台とめられる位の小さい公園だ


何とか明け方までに来て欲しいと言われたが、実家から少し離れた場所で就職をしているので、休まなければ後1時間位なのだろうけど、さすがに4時間走り続ければ疲れるというものだ


それでも地元に来て欲しいと言うのなら、友人の少ない私よりも更に少ない同級生か後輩辺りかと思えば

行けば解る事だと、向かってはみたが

やはり遠いなと思いつつ、先ほど買ったブラックを飲み「あと1本吸ったら、行くか」と2本目の煙草に火を着ける

前は走行中でも吸っていたのだけど、灰が落ちるのを今の彼女が嫌うので止まってから火を着ける習慣がついてしまった


「さて、行くか」とさっきより霧が深くなった道路を走り出す

流石にこの時間は、あまりほかの車も走っていないのだなと走りやすさを感じながらしばらく走って

見覚えのある看板を見かけ、そろそろかと気合を入れる


一体誰なんだと思いながら、誰ともすれ違わない山道を車で登って行く

駐車場に着いてみれば、他に車もなく


あの時間から歩いてきていたのか?

それとも悪戯か?


理由なんてなければ地元になんか帰ってこないし今日と明日が休みなのだから、まぁいいか

車を降り、公園の中に向かって歩いて行く

辺りはまだ暗いけど、子供の頃から何度も訪れた場所だからか不思議と怖いとかいう感情は湧き上がってこない

一番手前のベンチに腰を降ろし「誰もいないのか?」と暗闇に声を掛けてみる

まぁ、いきなり「ここだよ」なんて言われても、それはそれで驚きそうなものだが


少し待って、返事もないしやっぱり悪戯だったのか?と思い車に戻ろうとベンチから腰を上げる

駐車場に向かおうとしたのだけど、すぐそこに見えるはずの駐車場が見えない

そして先程は暗いと言っても月明りが合ったのだが、今は空も区別が付かない位に暗闇に覆われている


いくら暗いと言っても、もう直ぐ夜も明けるしこんなに暗くなるものかと思っていると

嬉しそうな声で「来てくれたー」と聞こえてきた

普通は声が聞こえれば、後からとか横からとか方向が解るものだけど

なんて言うのか頭に直接響くように聞こえてきた

そう言えば、電話を受けた時もそんな感じだったかもと思い出しながら

「誰なんだい?」と暗闇に声を掛ける


「覚えていないか・・・」

少し沈んだ声の感覚が頭に響けば、そいつは姿を現した


なんて表現するんだろうか、木の枝と葉っぱで出来てるような人形?

なんか子供の頃、ここでこんな人形を作って遊んでいたような・・・


「思い出したっ!」って少し明るくなった感覚の声が頭に響いて「あの時の人形か?」と訊ねる

こいつの感情が直に私に伝わるようで、正解なのが解る


ならどうして私だったのか、一体何を助けて欲しいのかと順番に尋ねてみれば

どうやら、この公園が壊されて福祉施設が建設されるらしい

そうして声を掛けたのは、この公園で遊んだことのある子供達全てに声を届けていたようだが

反応したのは私だけだったらしい

その上で、どうすれば助けてあげらるのか尋ねてみれば「公園のまま」残してほしいと

そんな事は一般人である僕には無理だと告げると今にも倒れてしまいそうな感情が流れ込んでくる

どうにかしてあげたいが、移転するにもこのサイズの公園を私が一人で作れるはずもなく悩んでいると

「移転?」私の頭を覗いているのかな?場所を移動すればどうかなって提案だな


少し間が空いてから、それならと移転をお願いされた

どうすればいいのか確認すると、公園の土を少しと薄ら光る団栗の実を移転先に連れて行けば、こいつも一緒に移動できるらしい

それならと今から準備してくるから、明日帰る時に私が住んでいる街の公園に移転してあげると約束をして準備のために車に戻る事にした


先程迄の暗闇は、いつの間にか明るくなった空にかき消されていた

こういう事は余り深く考えちゃダメだと私は自分に言い聞かせて、さっそく準備の為に実家に帰る事にした


時間的にはまだ早いが、私の両親は農業をやっていることもあり朝は早い

いきなり帰った私に「どうした?」と最初聞かれたが「最後になる前に顔だけ見に来た」と言ってあげれば、苦笑いしながら「バカ垂れが」って頭を叩かれた

続いて「飯し食ってけ」に「当然!」と返して更に頭を叩かれた

まぁ、ただ飯にありつけるのだ頭の1回や2回は受け入れておこう


少し早い朝食を取り昼迄寝ることにし、「布団敷いてやる」って優しさは「ソファーでいいよ」って優しさで返してやった

何年仕舞っているのかいるのか分からない布団なんてかび臭いだろ

そんな感じで昼迄、柔らかいソファーの上を占領し、お昼丁度の鳩時計の音で起こされた


さて引っ越しの準備でもしてやろうかと、使ってなさそうなバケツを見つけ

使わない事を確認してからバケツを持って公園に向かった

子供が少なくなったからなのか、いないのか公園はガランとしていた

丁度良いやとバケツに程よい土を探して半分くらい入れて

光ってる団栗の実なんてあるのかと辺りを見渡せば、数個落ちている

こんなにあるのか?目についたものを拾ってみれば6個あった

こうゆう時は普通7個なんじゃない?ともう少し探してみようと思えば

どうやら1個は踏ん付けていたらしい・・・

「ゴメンゴメン」と呟きながら7個目を拾い上げバケツの土の上に置いてあげる

一応これで大丈夫かなと家に帰り、明日の朝帰れば明日中に近所の公園に連れて行ってあげられるなと、明日朝一で帰る事にする


その夜久し振りなんだからと、お寿司とカツ丼を出前でとり、すき焼き迄作ってくれている母に「そんなに食えねーよ」と、もう若くないんだよアピールをすれば「近所の岬さんと横田さんも呼んでるから大丈夫よー」なんて、流石田舎だと思いつつ、こういうのが嫌いじゃないけど苦手なんだと地元を離れた言い訳を自分にしながらも、せっかく来てくれたご近所さんを冷たくあしらうわけにもいかず、おとなしく皆でドンチャン騒ぎながら気が付けば翌日の10時を少し回った頃に、「あぁ寝過ごしたか・・・」とちょっとだけ痛い頭を押さえながら、バケツの確認に行った


団栗の実は光っていなかったが、少し疲れている感じがしたので水をかけてやると一瞬だけ薄っすらと光った気がした

さぁ、戻らないと遅くなると両親に「また来るからー」と声をかけて帰る事にする


帰りは順調には行かずに何度か渋滞に巻き込まれながらも、夜7時には帰る事が出来た

夕飯は後でもいいかと、まずはバケツをもって金城の公園に向かう

こんな時間にバケツを持って彷徨うのは不審者決定なので、手早くバケツの中の土をまき団栗の実を少し間隔を取りながら置いていく

そうして7個置き終わると、再び辺りが闇に包まれた

しばらくすると木の枝と葉っぱで出来た人形もどきが3体現れた

ちょっと緑が少ないとボヤいてはいるが、概ね好感は持てる場所らしい事は感情がこちらにも伝わるので大丈夫なのだろう事は理解できた

暇なときは遊びに来るよと人形もどき達に伝え、明日の為にご飯食べて寝るかと家に帰った


夕飯を食べ終え、お風呂にも入りさぁ寝ようかと思って

「あぁアラームセットし直さなきゃ」とスマホを持てば着信履歴が光っている

誰か掛けて来たのかと、履歴の確認をしていると伝言が1件入っていた


時間を見れば人形もどきの「助けてください」の頃だとわかったので伝言聞こえるのかなと再生してみると、そこには「助けてください」じゃなくて


とても低い唸り声の様な、人の声じゃない感じで


「後3日でお前は死ぬ」


私は全身に寒気を覚え慌てて公園に向かおうとしたが・・・

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