6 自然の摂理
「うぅ...私の研究室がぁ......って、うわ!びっくりした。」
泣いたり、驚いたり忙しい人だなと思ったけど僕の今の状態を見たらだれでもそうなるか。
「そ、その状態で喋れるのかい!?初めて見たよ!!」
「えぇ、まぁそうですね。」
「にしても、まさか私の結界どころか、この研究室にまで.........。」
「......弁償はしませんよ?僕お金無いので。」
「いや、いいんだ。私の興味本位の結果だからな。
さてと、ウェル君と言ったかな?」
「はい。」
「君の種族は...、分からないな。まぁまぁ生きていたが分からないというのは初めてのことだ。
それに君、今ので半分も力を出していないとすると、全力を出したらここら辺が吹き飛びそうだね。」
「ハハハ...。」
「.........否定しないんだね。はぁ、まぁ敵意も無さそうだし、これあげるよ。」
そう言って渡してきたのは縁が金色に装飾された冒険者ライセンスだった。
「以前と言っても、さっき渡されたものでは君の力を示すことはできない。
そこでだ、特別ライセンスとでも言おうかな、このライセンスは各冒険者ギルドマスターのみが発行できる特殊なカードだ。」
「売ったら高いですか?」
「売るなバカ。このカードがあれば身分証にもなるし、この私が認めたという証もあるし、冒険者になりたてだから分からないと思うが、依頼や討伐時に並ばなくてもこのカードを受付に提示すれば優先的になるという恩恵付きの代物だ。無くすなよ?」
どうやら結構いいものらしい。大事にしよう。
あぁ、胴体を元に戻さなきゃ。
「ちょっと離れてください。」
「ん?あぁ分かった。何をするつもりだ?」
空気中に散らばっている魔素を集めてっと。
この魔素を圧縮して、そうだなぁ、もっと頑丈にしてみるか。それと血も必要か。
「な、なんだこれは...。」
メチルさんがなにか言っているけど一旦無視してこっちに集中しよう。
血...、液体かぁ、魔法で作るか。
「えぇと、〔赤くて、水っぽい、鉄の匂いのする液体〕。」
うん。血っぽい液体が出来たし、これを胴体に入れて、首のとこにこの頭を差し込んで...、出来た。
「...ぁ。ぁぁあぁあああああ。うん、完成だ。ん?そんな驚いた顔をしてどうかしました?」
「どうもこうも、何をしたんだい...、なんだ今の詠唱は、聞いたことがない。」
いつも使ってる、根源魔法だけど、何か変だったかな?
「ますます、君が何者なのか気になったけど、一旦おいておこう。そうしないと私が抑えられない。」
「大丈夫ですか。」
「大丈夫でないが、大丈夫だ。」
???、それは大丈夫では無いってこと?
「この話は一旦置いておこう。ところでだ、君、この街に起きている問題を知っているかい?」
「まぁ少し前に聞きました。」
「なら、君が不死身の魔獣ということかな?」
鋭い視線と真剣な顔つきで聞かれた。
一瞬だけ涼しくなったかのような気がした。
「違います。」
「そうか、ならいいんだ。突然すまなかったね。」
「その魔獣倒しましょうか?」
「は?」
気の抜けた戸惑いの声が返ってきた。
「不死身なんだぞ?倒すも何も防ぐしかないじゃないか。」
「僕なら倒せますけど?」
人間としていろいろ迷惑かけたし、生きるのって難しいんだな。
「何年、何十年として解決してこなかったこの問題を?ついこないだふらっと来た君が?」
「はい。」
「やめてくれ!!」
?、なんでだろ。問題が解決したらこの街は救われるし、平和になるんじゃないの?
「君は人間ではない。人間の責務は人間が全うするんだ。元はといえばこの問題だって...。」
いいことを思いついた。
自然なら関係ないだろう。
「なら、たまたまその魔獣に死が訪れてしまったら仕方がないってことですよね?」
「は?」
「僕は人間としては手を出さない。こういうことですよね?」
「何を言っているんだい?」
「ついでにここの領土の呪い?とやらも解決しに行きます。」
「は?は?はぁ?」
「簡単なことですよね。めちゃくちゃ短い間でしたけどお世話?になりました。
カリナちゃんとそのお父さん、お母さんに料理美味しかったと言っといてください。」
「この問題は私が何とかしないと全員死ぬんだ!何をしようとしているのか分からないが勝手なことはやめてくれ!」
呪いに問題に、大変だなこの街は、まぁ元々この街には立ち寄るつもりはなかったけど、何をしても自然の意思ということになるから便利だよね。
「大丈夫、大丈夫。メチルさんはこの街でお茶でも飲んでいるといいよ。
僕の意思は自然、星の導きだからね。」
最後まで頭に?を浮かべながらその場に立ちすくしていたメチルさんを置いて、魔法がかかっていた扉を開けて出て行った。
「なんなんだ、君は......。」




