4 異常
「全員武器を構えろ!先ほどの殺気、おそらく第4階級相当の魔獣と見た。引き締めろ!」
なんか誤解が先走っているように思ったので、部屋の中から出て、安全だということを伝えようと思った。
「みさなん、大丈夫ですよ。ちょっと倒れてる人がいるぐらいで何も、魔獣すらいませんよ。」
完全に体に槍が刺さってることを忘れたまま、皆の前に行ってしまった。
「......おまえは、ウェルと言ったか?」
「先ほどライセンスを発行していただいたウェル、ですけど。」
「体に刺さっているのはなんだ?」
「ん?......あっ。」
あれ、人間って槍が刺さったぐらいじゃ死なないよね?
血が出てないのが不自然だったかな?
「いろいろ言いたいことがあるが、お前、人間ではないな?見たところ槍が刺さり、出血していない。
それにギルドで手加減していたとはいえ私の殺気を浴びたにもかかわらず動揺が無かった。
さてはおまえ...元人間、いや魔人だな...?」
「魔人...って何ですか?」
知らない単語だったので思わず聞き返してしまった。
返答されると思っていなかったのかメチルさんは驚いた顔をしていた。
「自分の種族も知らないで生きているやつがどこにいる。
魔人は、魔族の上位互換で高い生命力と体に血ではなく魔素が巡っていることで有名なはずなんだが。いや待てよ...、魔素すら漏れていない?ではこいつはなんなんだ?」
なんだかより一層警戒が強まった気がするけど、どうしようかな。
普通に竜です、と言っても通じるかなぁ?
模倣して創ったこの体じゃ不便かもなぁ。また新しい体創るかなぁ。
とか考えていると、メチルさんが、
「ウェル、お前は危害をなす者か?」
「いやいや、自由がモットーの者です。」
「......ギルドマスター、メチルがお前を一時的に預かろう。お前ら中にいる者の救助を優先しろ。私はこいつの対処にあたる。ウェル、着いて来い。」
宿屋を出るときすれ違った冒険者に若干の恐怖を感じたが、僕は別に何もしていないんだけどなぁ。