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3 雑な急展開

宿に戻ってきて、何か受付でもめているのを発見した。

見たところ、カリナちゃんのお父さんと、見たことのない白髪の小太りのおじさんが喋っていた。


「ふざけんなよ!何回も言っているがそんなことは受けいられない。娘を利用する計画は断念してもらうぞ。俺たちの大切な娘だ。」

「そう言われましてもなぁ、これはこの街の決まり事。それに帝国領に住む上で避けられない重要なことですしな。これはこの街に住む皆さんが通ってきた道です。今年はたまたまあなた達の娘さんがその対象だった。覚悟を決めてください。それではまた数日後にお迎えに行きます。」


途中からしか聞き取れなかったが、なんか大変なことでも起きているのかなぁと思いつつ宿屋の椅子に座っていると、小太りのおじさんが帰り際にこちらをちらりと見て、小さな舌打ちをしていった。


「はぁまったく、いい加減にしろよあのじじい。っと、帰ってきていたのか。帰ってきて早々こんなとこ見せちまって申し訳ない。」

「いえいえ、今日一日暇になってしまったので予定を立てようと戻ってきたところです。

暇のなので何かお手伝いでもしましょうか?」

「暇でできるようなことじゃ無いんだがな。しかもあんた、この街に来てからまだ3日も経ってないんじゃないのか。そんな奴に問題を投げ抱えさせるほど俺も鬼じゃない。」

「カリナちゃんがどうやらこうやら言っていましたが、どうかしたのですか?」

「.........そんなに気になるのなら、教えてやるからちょっと来い。」


仕方がないといったような顔つきで、受付の奥の部屋に案内された。

部屋に入って、椅子に座っていると、お茶を持った、カリナちゃんとお母さんが入ってきた。


「はい!これお茶です。熱いのでふーふーしてから飲んでくださいね!!」


にっこり笑顔で熱いお茶を渡された。

深く熟成された茶葉の匂いが鼻に入ってくる。

これは美味しいお茶に違いないだろう、と思っていたら、1対3という形で対面になるように3人が座った。


「来て早々の旅人?お客さん?に言うのも申し訳ないんだが、気になるんなら教えてやるよ。

この街が抱えてる問題をな。」


そういうとお父さんはより真剣な顔つきになって、話し始めた。


「このモルエアという街はだな、知っての通り帝国領だ。セグナル帝国、初代皇帝のロード・セグナルの逸話は知っている前提で話すが、帝国での祭りごと、【綺羅星祭】がこの街の厄介ごとだ。

失われた帝国からの怨念が近辺の村中を襲ったことで発生したという魔獣を鎮めるために、近辺の村、街を代表して、このモルエアが毎年、祭りが開かれていた1日前に特定の場所に生贄を捧げるんだ。

生贄は捧げた後、帰ってこない者もいるし、無事に帰って来たと思ったら、壊れたかのように暴れ始めたりと、最終的には息を引き取ったり、と散々な結末を迎えるんだ。

その生贄に今年、俺たちの娘、カリナが選ばれてしまった。この街には子供が多い。

それは生贄のためだ。酷な話だろう?俺たち大人が暮らしていくために大切な何かを犠牲にしていくんだ。」


そう言うと、お母さんは泣き出し、カリナちゃんはお母さんにしがみついて顔をそむけてしまった。


「でも魔獣というのなら、冒険者ギルドに依頼をすればいいのでは?」

「それはな、もうしたんだ。何年も、何十年も前から...。

何度も魔獣を倒した。だが、祭りの日になると何事もなかったかのように平然と復活しているんだ。」

「復活...。不死身の種族の魔獣ということですかね。」

「いや、討伐時の戦利品や部位など見てきたが、どれも全部毎回違うんだ。

おそらく怨念が、様々な魔獣に変身して襲っているのだと思うんだがな。」

「少し前に戻るのですが、ここに暮らすようになって何年ほど経ちましたか?」

「......38年だ。」


38年ということは少なくとも38人以上の子供たちは毎年犠牲になってきたと言うことか。

38年という数字は一瞬のことにしか感じなかったが、人間の寿命から考えると相当長い期間だったのだろう。


「あんたが何を考えているか、分かる。その間俺たちは仕方がないことだと思ってきた。

だがな、ここにきて俺たちの番となるとな、嫌だという気持ちの方が強くなってしまうんだ。」


突然部屋のドアが開き、後ろを振り返ってみると、さっきの小太りおじさんと見たことのない服装の衛兵達が立っていた。


「なっ!なぜおまえがここに!」

「言い忘れていたが、今日が最終警告の日だったんだ。家族おそろいでなにより、さぁカリナちゃんこの街のためにも、パパ、ママのためにも頑張ろうね?こっちに来なさい。」


3人は衛兵に囲まれ小太りおじさんは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。


「ふむ、おまえらがこいつに何を話していたのかよく聞こえなかったが大して役にも立たなさそうな奴に見えるな。おい、衛兵、娘をさっさと引きはがして、連れてこい。」

「.........これでも元冒険者だ。抵抗するぞ!」


槍を持った衛兵に対し。腰に刺さっていた小さな短剣でお父さんは衛兵に挑んだ。

槍のリーチを逆手に取りすばやく懐に入り込み、慣れた手さばきで衛兵1人を吹き飛ばした。

だが、他の衛兵に囲まれあっけなく押さえつけられてしまった。


「ついでに反逆者としてこいつとそいつも牢に入れておけ。」


ここで僕は気になっていたことを聞いてみた。


「あのぉ、僕はここで暮らしていけますかね?」

「は......?何言っているんだ。暮らせるわけないだろう。この宿と娘を差し押さえる。親2人は牢行きだから、お前は住む場所がなくなるんだ。ついでにお前も協力者という立場で罰を受けるか?」


まだ街に来てから1日が経ったぐらいの急展開だけどどうしようかな。

前いたところに比べるとここは穏やかで暮らしやすいと思って来たのに、これじゃ人間を堪能できないじゃないか。


「美味しいごはんを経験して、睡眠という快楽を体験させてもらった恩があるというのに、なんだか嫌な気持ちになるなぁ。」

「ごちゃごちゃ言ってないで、どっちなんだお前は!拘束されたいか!!」


人間は脆い存在というのは流石にしっているしなぁ、どのぐらいの力で制圧できるんだろ?

と思っていたら、


「無視するな!ええい、やってしまえ!」

「ぁ、ぁああ...ウェルお兄さん......。」


カリナちゃんが叫んだのを聞いて前を見てみると、僕の体に槍が突きささっていた。

それも3本ぐらい。


「や、やりすぎだ!殺せとは言っていないぞ!!」

「で、でもやれって...。」

「お、俺は知らないぞ...!」


刺した衛兵は大慌てだった。

一方僕はというと、別に何事もなかった。

ただ何も返さないというのは失礼かと思い、先ほど冒険者ギルドで受けた殺気を出してみようと思い、ちょっとだけ出してみた。


「ぁぁぁっぁああっ!」

「うぎぎっぎぎぎっぎぃ......。」

「ぐごぉぁぁああ。」


あれ、なんか思ったよりも強かったらしい。

泡吹いて倒れてる衛兵もいたり、吐血してる衛兵もいた。

それにカリナちゃん達も気絶してるみたいだし、どうしようかなと思っていたら、受付の方から声がした。


「何事だ!!生きているものはいるか!!」


冒険者ギルドマスターのメチルさんと、ギルドで寝てた冒険者達が武装して集まってきていた。

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