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2 冒険者ギルド

朝起きて、睡眠というものを体験してみて、感動した。


「なんだこれ、非常に気分がいいぞ。こんなの初めてだ。

ん、お腹がすいたな......え、お腹がすいた...?」


自分の口から勝手にこんな言葉が出てきたことに驚いた。

人間という種族がこんなにも大変だということを自分の身をもって経験した。

大変だが、その分得られる幸福が多いと思う。まだ1日しか経ってないけどね。

まぁとりあえず、部屋を出て食事処に向かった。


「あ!おはようございまーす。ウェルさん。」

「ん、おはようカリナちゃん。」

「ご飯できてるよー。」


そう言われて案内されたとこには出来立てと思われる香ばしい匂いのする茶色い物体に、プリッとした黄身と白身がある物が置いてあった。


「今日の朝食は、トーストと目玉焼きです!。」


席に座り、熱々のトーストというものを食べてみると、昨日の食事とは違った美味しさを感じることが出来た。目玉焼きとやらも食べてみるとプリプリの白身ととろっとろの黄身が口の中で混ざり、新しい食感を生み出していた。

朝から感動ばかりしている僕だが、この後の生活ではどのようなことが待っているのかと思うと思わずぞくそくして、ニヤニヤしてしまった。

美味しい朝食を済ませ、宿を出て街の中にあるとされている冒険者が集まる場所を探そうと、そこら辺を歩いていた。

名前を聞くのを忘れてしまっていたが、カリナちゃんのお父さんが街に問題がある、とか言っていたが、今のところどこにも問題を思わせるような感じは無い。

しばらく歩き、なんだかそれっぽいとこにたどり着いた。

大きな木製のドアを開けて入ってみると、やや寂れた、薄暗い受付とボロボロの家具が散乱していた。

受付と思われるところには今にも倒れそうな目をした女性が立っており、入り口の横にはアルコール臭い鼻をつんと刺激するような臭いが漂っており、そこにうつ伏せになっていびきをかいていた男女達が寝ていた。

唖然としてしばらく入り口で立っていたら、受付嬢さんがこちらに歩いてきて、


「よ、ようこそ...うっぷ、モルエア冒険者ギル......ですぅ。」


ふらふら歩きながら言ってくれた。

どうやらここが冒険者たちが集まる冒険者ギルドという場所らしいがなんか変わった場所だなと感じた。


「あのぉ、冒険者になりたくて来たのですがぁ。」

「あぁ、はいぃぃ。では...こちらへどうぞぉ。」


と言って案内された受付では一枚の紙と針が置かれていた。


「ではぁ...この規約を読んでぇ...うっぷ、サ、サインをしてくださぁいぃ。」


ひとまず言われたとおりに紙に書かれているえらく長い文章に目を通した。

しかし、どうやってこの紙にサインするのだろう。

悩んでいると受付嬢さんが


「サインはこの針でぇ、指をちくっと刺して血でサインしてくださぁい。」


さて、どうしようか。

どうしようというのは、普通に血を出して名前を書けばいいというのは分かったのだが、この体には血が無い。創ったときにめんどうだからいいやってなって血は模倣しなかったんだけどこんなところで裏目に出るとは。


「ちなみにこれってただのサインですよね?」

「いえぇ、この血を使って魔力保持量とぉ大体の冒険者ランクを推定していきますのでぇ、結構重要なものですねぇ。」

「今、とある事情で血を出すことが出来ないのですが駄目ですかねぇ?」

「事情...ですかぁ、............まぁ、分かりましたぁ。ではこちらのほうにペンでサインしてくださいぃ。」


セーーーフ!

なんか免れたし、良かったぁ。


「ありがとうございますぅ。」

「???、はいぃ。」


ささっと名前を書いて渡した。


「ではぁ、血以外のサインということでぇ、とりあえずライセンスを発行しますので、そちらの寝ている方々の方でお待ちくださぁい。」


なんでわざわざ場所指定したんだ、と思いながらぐっすりしている人達の方に行こうとしたら、突然微量な殺気を感知した。

受付嬢や寝ていた人達はその殺気に驚いたのか跳ね上がり、青い顔をしながら急にニコニコし始めた。

後ろを振り向いてみると、そこには小柄な女の子が大きな戦斧をしょっていた。


「私が出て行ってる間に何やってんだお・ま・え・ら???」


明らかに声に怒気がこもっている。

その言葉に寝ていた人達は慌て始めた。

倒れそうだった受付嬢さんも同様にあわあわし始めていた。


「やぁ、重そうな武器を持っているね、君も冒険者になりにきたの?」


僕のこの質問に周りの人達は驚いた表情をしていた。

何か変なことでも言ったかな、と思っていると、


「いやいや、私は違うよ。私はこの冒険者ギルドのマスター、メチルだ。よろしく若造。」

「ギルドマスターさんだったのかぁ、僕はウェルと言います。今ライセンス発行待ちです。」

「ふぅむ、にしても結構な殺気を出したのにも関わらずよく立っていられたな。」


あれが結構な殺気?

面白い冗談を言う人間だなぁぐらいしか思わなかった。


「まぁ、よい。おい、さっさとライセンス発行せんか。」

「は、はい!!」


受付嬢さんは机の下に隠れ、すぐに立ち上がった。

手には、小さな四角いカードがあった。


「ほれ、それが若造のライセンスだ。今回は私の顔に免じて発行量を無料にしといてやる。」

「ほんとですか?ありがとうございます!」


受付嬢さんが震えた手でカードを渡してきた。

それを受け取ったら、


「若造、私はこれから特別緊急な用事ができた。その用事のためにも今日は悪いがギルドを出て行ってくれないか?」


額に青筋をたてながらニコニコしていってきた。

それを見た人達は泡を吹き、倒れたり、この世の終わりみたいな顔で絶望していたりする人がいた。

面白い人たちだなぁと思いながら、カードを懐にしまい、街を散策しようと冒険者ギルドを出た。

出た後、なんか大きな声が聞こえてきた気がしたが、意外と賑やかな街なんだなぁと思いつつ、一旦宿に戻った。


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