番外編 雷雨の夜(前編)
あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になり、ありがとうございました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします!
シャロンは連休、泊りがけで、母の実家のオーデン家を訪れた。
武術の鍛錬のためだ。
日中は稽古をし、夜は書庫で読書しようとしたのだが。
背の高い本棚から本を取ろうとして、シャロンは突然ふくらはぎに鋭い痛みを覚えた。
「っ!」
呻いて咄嗟にしゃがみこむと、書庫に共に来ていたクライヴがこちらに駆け寄ってきた。
「お嬢様、どうなさいました?」
「こむら返しを起こしちゃって……」
次の瞬間、シャロンはクライヴの腕に抱え上げられていた。
(え──!?)
シャロンは目を白黒させる。彼はシャロンを抱いて歩き出しながら言った。
「お部屋に戻り、応急処置をしましょう」
シャロンは首を横に振った。
「平気よ。すぐ治ると思うし、私、本を読もうかと……」
「雨が降ってきていますから、この間のように雷が鳴るかもしれませんよ」
「雷……!?」
そうなれば本を読むどころではなくなる。
先日も、ちょうどオーデン家を訪れているときに暴風雨となり、雷で怖い思いをしたのだった。
シャロンは読書を諦め、クライヴの腕の中で大人しくした。雷鳴となれば、読書はできないし、素直に送ってもらおう。
クライヴはシャロンが滞在している部屋まで行くと、寝台に座らせてくれた。
「お嬢様、少々お待ちください」
一旦退室した彼は、すぐにマグカップとタオルを持って戻ってきた。
「ホットミルクを口にすれば、雷が鳴っても落ち着けると思います。お嬢様の好みに合わせて、砂糖を入れておきました」
「ありがとう」
シャロンは彼からホットミルクの入ったマグカップを受け取る。
それを口にすると、まろやかなミルクのコクと優しい甘みを感じ、シャロンはほっと息をついた。
「美味しいわ」
ぽかぽかと身体が温まる。クライヴは唇に弧を描いた。
「よかったです。ではお嬢様、攣ったところを見せていただけますか」
シャロンは頷いてナイトドレスの裾を持ち上げた。
「右足のふくらはぎ」
クライヴは跪き、シャロンのふくらはぎに視線を落とした。
「けいれんは収まっていますね」
クライヴはシャロンの足首を取り、靴をそっと脱がした。
「足を少し伸ばしますね」
「ええ」
彼はシャロンの足をゆっくりと伸ばし、マッサージしてくれた。
「痛かったらおっしゃってください」
「痛くないわ。すごく気持ち良い」
彼は器用で、絶妙な力加減でマッサージしてくれ、筋肉が解れていくのを感じた。
ホットタオルをふくらはぎに当ててくれ、心地よくてうとうととする。
だが外で雷鳴が響き、シャロンは持っていたマグカップを取り落としてしまった。
クライヴが手で受け止めてくれたが、ミルクが僅かに零れて足にかかってしまう。
「ご、ごめんなさい」
「いえ、俺こそ申し訳ありません。うまく受け取れずに零れて、お嬢様を汚してしまいました……」
クライヴはシャロンのふくらはぎに顔を近づけて口づけた。
(え──?)
シャロンは驚き、しばし固まった。
彼はシャロンの足を唇で辿り、ミルクを吸う。
むずむずとなんともいえない甘ったるさと快さを覚える。今までにない感覚で、シャロンはかあっと肌が火照った。
「ク、クライヴ……」
(これ、何……?)
彼は足を舐め、斜めにシャロンを見つめる。色気のあるその眼差しにシャロンは背筋がぞくりと甘く震える。
こそばゆさと甘美な心地よさに、寝台のシーツを思わずきゅっと握りしめてしまう。クライヴは足の指に唇で触れている。ミルクを拭ってくれているのだろうけれど……。
お読みいただき、ありがとうございます。
シャロンとクライヴの番外編になります。
今、新作を連載中です!
乙女ゲームの謎を知りたい悪役令嬢が、破滅の回避に奮闘し、溺愛ルートに入ってしまって義兄や王太子など美形な攻略対象と三角関係(?)になる物語です。
新作もどうぞよろしくお願いいたします!
悪役令嬢の義兄VS王太子
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