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47.魔王1



 

※※※※※




 クライヴは寮までシャロンを送り、校舎へと引き返す。

 彼女に口づければよかった。

 シャロンのいう『ゲームのヒロイン』が自分のことを好きだというので、諦めてもらうため、キスをするフリをした。

 

 だがそれは言い訳だ。

 ただ、シャロンを抱き締めたかった。

 髪をくしゃりとかきあげ、クライヴは空き教室へと入った。

 落ち合うことになっていたルイスがそこにいた。


「ルイス、調べてほしいことがある」

「何をでしょう、クライヴ様」


 クライヴは両腕を組む。


「俺と同じクラスの、ドナ・イームズの経歴」

「かしこまりました」


 ルイスは頭を下げる。

 彼はクライヴの手下である。

 数年前、ガーディナー家の別荘のそばにある森でルイスと出会い、彼のほうから配下においてほしいと跪いてきた。

 以前シャロンたちと行った、あの廃屋だ。

 クライヴは一時、そこで暮らしていたのである。


 ──クライヴの父は魔族、母は人間。自分は半魔だ。

 シャロンのいう『魔王』は父のことである。

 彼女の話を聞き、その特徴から父がゲームに出てくる魔王とわかった。

 クライヴはそれを話していないし、彼女は何も知らない。

 

 ゲームでは父は生存していたらしい。

 実際は死亡しており、現在の魔王は父のあとを継いだクライヴである。

 自分は生まれてからしばらく、母の元で育てられた。

 

 当時、この国の王女だった母の出産は秘され、母は表向き療養するという形で離宮に移った。

 そこで自分は四歳まで過ごした。

 自分の存在は表に出せないものだった。

 

 クライヴは、母が病で亡くなったあとすぐ殺されかけた。

 自分が生かされていたのは、母が守ってくれていたからだったのだ。

 魔族の血を引く自分は、王家において存在していてはならないものだった。

 

 殺されそうなところを助けてくれたのは父だ。

 父はクライヴを攫った。

 育ててくれた父も、クライヴが十歳のとき亡くなった。

 世界を存続させるか否か、おまえが決めればいい、と父は最後言い残した。

 

 魔族以上に薄汚い、そんな人間を父は嫌っていた。

 人間の世界を滅ぼしたがっていた。だが昔、父は愛した母に止められ、思いとどまったのだ。

 そんな父も母ももういない。

 クライヴも人間が嫌いである。

 なにしろ殺されかけたのだ。


 ──世界を壊すか否か。

 

 父の死後、森の廃屋でこれからのことを考えていた。

 元々、母が所有していた別荘だ。

 父と母は森で出会って恋に落ちた。


 すでに捨て置かれており、別荘は廃墟となっていたが、クライヴの異質な魔力に気づいたルイスがやってきた。


「あなたのその魔力……! 素晴らしい……!」


 彼は魔族の力が見えるようだった。

 魔力に魅せられたルイスは、配下においてほしいとクライヴに頼み込んできた。

 面倒な願いだったが、ガーディナー家の跡取りであり、いつか何かの役に立つかもしれないと、取り敢えず彼の望みを叶えることにした。


 この国では男女関係なく、第一子が王位に就く。

 現国王は、クライヴの叔父だ。

 次期国王は、いとこであるライオネル。

 本来ならクライヴが国王である。

 世界をどうするか、現国王と王子らを見て、結論を出そう。

 

 クライヴは廃屋から出て、王宮内に侵入した。

 ちょうどそのとき、王太子の婚約者が王宮に来ていた。

 彼女は階段で足を踏み外し、王宮の一室に運ばれた。

 この婚約者のそばにいれば、情報を得られる。

 

 クライヴは四歳まで離宮に隔離されていたが、王宮に近づきすぎれば、気づかれる恐れがあった。

 ほどよく離れた、王太子の婚約者のそばはちょうど良かった。

 それで屋敷に帰る少女──シャロン・デインズの跡をつけた。

 

 彼女の乗った馬車が、賊に襲われており、チャンスだと感じた。

 公爵家に入り込むのに。そのためクライヴはシャロンを助けた。

 そのとき父から譲り受けた、魔王の証である魔石のブレスレットが外れた。

 核であり、本来外れるはずのないものだ。

 

 それがシャロンの手に渡った。

 一度触れられれば、取り返しても、すでに心臓を鷲掴みにされたようなものだ。

 魔石を触れることができた者には、壊すことも容易にできる。

 彼女は『聖』の魔力を秘めていたのだ。


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