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45/59

45.好きなひと


(どうすればいいの?)

 

 ヒロインが、攻略対象ではない人間を好きになった。

 完全に予想外だが、クライヴなら納得できてしまう。

 攻略対象と並び立つ美貌の持ち主で性格もいい。


 だからこそ、シャロンも最初彼を見て警戒心をもったのだった。

 真面目で、誠実でやさしく。

 廊下でヒロインが鞄を落としたとき、皆無視していたけれど、クライヴは拾って渡してあげていた。


(本当どうすればいいのかしら……)


 攻略対象以外とヒロインは結ばれ、ハッピーエンドとなる? 世界と、シャロンの命は救われる?


 悩みながら、教室に戻った。

 そこにはシャロンを待つクライヴの姿があった。

 今は彼を見れば頭痛がしてしまう。


「お話は終わりましたか」

「いつの間にか終わっていて、どうやってこの教室に来たかあやふやだわ……」

「何かあったのですか?」


 クライヴは眉を曇らせた。


「ゲームをハッピーエンドにするために、暗躍する、と意気込んでらっしゃいましたが……。やはり意地悪をするなんて、お嬢様には難しいことです」

「いえ、意地悪な言葉はかけてきたわ」

「頑張られたのですね」

「ええ……」


 ちゃんと頑張れたかわからない。驚いて最後あたりは呆然自失状態であった。


「? どうしたのですか?」

 

 彼に椅子に座るように言い、シャロンも椅子に腰を下ろした。

 辺りを見まわし、誰もいないのを確認してから口を切る。


「実は──ゲームのヒロイン、ドナさんはあなたに恋をしたの。攻略対象ではなく、あなたが好きみたいよ」

「何かの間違いでは。俺はゲームには登場していないらしいですし……」

「話を聞いてみると、本当にあなたに恋をしていて。好意をもっているということを、あなたに伝えてほしいとドナさんに言われたわ」

「俺は彼女の気持ちに応えられません」

「そこをなんとか付き合ってみてはもらえないかしら?」


 シャロンにはヒロインの恋を叶えるという使命がある。キューピッドとなり彼らを結びつけるしかない。

 クライヴはかぶりを振った。


「申し訳ありませんが、難しいです。彼女に興味がありません。お嬢様のおっしゃるゲームのヒロイン、という以外に、何の関心もありません」

「まだ知り合って二週間よ。彼女可愛いし、これから興味が出てくるかもしれない。結論を出すのは早いわ」


 ドナは天然だが、ゲームのヒロインなだけあって美少女なのである。


「俺の趣味じゃありません」


 今まで彼とこういった会話をしたこともなかったので、シャロンは少々気になって訊いてみた。


「あなたの趣味はどんななの?」

「恋自体に関心がありません。俺には不要なものですから」


 シャロンはぱちぱちと瞬いた。


「あら、それはどうかしらね。恋は人生を彩ってくれるし、良い事ばかりではないかもしれないけれど、一度くらい経験してもいいんじゃない」


 恋をしなくても生きてはいける。

 他に楽しく熱中できることはたくさんあるけれど、恋のない人生は単色で、味気ない気もする。


「心を豊かにし、きっと人間の幅を広げるわ。だからドナさんとの恋を考えてみてはくれないかしら? 彼女可愛いし、まっすぐでいい子よ」


 シャロンは食い下がり、彼の説得を試みた。


「申し訳ありませんが、考えられません」


 彼は頑固であった。

 ゲームで彼女は攻略対象全員をメロメロにしたのだ。

 クライヴもヒロインと過ごせば、きっと好きになるのではと思うのだが。

 クライヴは目を伏せる。


「俺はほかに好きなひとがいますので」


 シャロンはまじまじと彼を見た。


「クライヴ、好きなひとがいるの?」

「はい」


 初めて聞いた。

 九歳のときに知り合ったけれど、今までそんなこと耳にしたことも、それらしきひとを見たこともなかった。


「わたくしの知っているひと?」


 彼に好きなひとがいるのなら、その恋を引き裂き、ヒロインと強引に結びつけるのは問題が出てくる。


「ええ」 

 

 彼は視線をおとしたままで認めた。


「誰?」


 屋敷のメイドか、学校の生徒だろうか。

 入学してまだ二週間だが。


(ヒロインの例があるし、わからないわ)


 いったい誰なのかと好奇心いっぱいで訊いてみれば、彼は視線をあげ、シャロンを見つめた。


「あなたです」


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